第34話 サバゲーでも駄女神だよ

「はい、今回は市街地でサバゲーをします」


 どこぞの首都並に広い街を作り、そこで銃撃戦をやらせることになった。

 街は適当に空き地にコピペで作った。現実の改変くらいはできる。


「女神が銃火器とか使っていいの? 剣も魔法もあるのよ?」


「問題ない。世界によって違うからな」


「世界は広いのですね」


「そういうことだ。使うのは銃火器、ナイフ、格闘。戦車やヘリは奪ってよし。魔法は身体能力強化以外禁止」


 無論ヘリもガトリングを積んだやつだ。

 戦車はよく知らないので、それっぽいのをランダムに置いた。


「ケリュケイオンやブリューナクはどうしますの?」


「あんまり使ってほしくはないが……まあ普通の武器としては許可。ほどほどにな」


 ハンドガン、スナイパーライフル、ショットガンと手榴弾をアイテム欄に装備させた。もうメニュー画面は使いこなせているようで何よりだ。


「街中に存在するボス機を倒せ。自分がダメージくらいすぎると拠点に戻されるから注意な」


「ボス機というのは?」


「そのまんま強いやつ。赤いからすぐわかる。ロボットやゾンビとかクリーチャーも出るから、状況に応じて潰せ」


「拠点ってここ?」


 大きなビルの前。バリケードやタレットの張り巡らされた内側にいる。

 かっこよかったので、ゲームから転写した。


「そうだ。ここに戻る。通信機は渡しておくから、各自連携を意識するように。俺もちょっとだけ妨害するかもな」


「……クリアできますのそれ?」


「これは授業だ。お前らを痛めつけて遊ぶものじゃない。クリアできない試験など作らないさ」


 ここ大事。生徒を強くすることが目的です。ちょっと遊び心は入れるけどな。


「はいじゃあスタート! 頑張れよ」


 俺は離れた位置から見学。駄女神はまず銃火器の確認から始めるようだ。

 いいぞ。武装確認は大切だ。数発撃って射程や反動のチェックをしている。


「よくあるFPSみたいねこれ」


 なるほど、サファイアにそんな知能があるか疑問だったが、ゲーム感覚か。


「反動もなし。連射もきく。あとは弾数にだけ気を配りましょうか」


「それでは出発ですわ!」


 元気に走っていく駄女神。見かけは普通の街。だがそこにはびっくりトラップが仕掛けられている。


「敵ってどこから来るのかしら?」


「とりあえず壁伝いに歩きましょう。それで事故率は減るはずです」


「そうですわね。本当によくできた街ですわ。建物も、このショーウインドウの服も、本物ですわよ」


 こっちはコピーするだけだから、精巧にっていうより大雑把にやってるけど。

 さてショーウィンドウのトラップに気づくかな。


「マネキンまできっちり作っちゃって……ん?」


 マネキンの一体が緑色で血だらけなのに気付いたな。


「どうしました?」


「ちょ、これゾンビ……」


 豪快にガラスを突き破って飛び出してくるゾンビさん。


「うわっひゃああぁぁ!?」


 反射的にショットガンで滅多打ち。まあそうなるだろう。

 そしてゾンビさん爆発。


「きゃあああぁ!?」


「なんですかこれ!?」


 そこにヘリからの機銃掃射が襲う。

 突然のことに戸惑っているようだが、まだ被弾はしていないな。

 今回は意外とみんな運がいいようだ。


「もおおぉぉ! なんなのよおおおぉぉぉ!」


「建物に避難ですわ!」


 そして建物内の地雷により大爆発。


「にょわあああぁぁぁ!?」


 そんなこんながありまして、拠点へと強制送還である。


「あら? ここは?」


 きょろきょろしている駄女神一同。

 全員いるな。ひとりくらい生き残るかと思ったが、まだ厳しいか。


「ちょっと! なんでゾンビが爆発すんのよ!」


「背中に爆弾がくっついていたからさ」


「そんなもん初っ端から出すんじゃないわよ!」


 最近成長の兆しが見えていたから、難易度を上げてみたが……調整ミスったかな。


「なぜ建物が爆発しましたの?」


「普通の建物や、一般家庭には地雷があります」


「ないわよ!」


「何千円もするランチ食ったり、夫のものを捨てようとする妻とかいるだろ」


「そういう意味の地雷じゃないでしょ!」


 仕方がないので、街中に補給ボックスと防弾チョッキのようなアイテムを配置。

 これで難易度は下がるだろう。慣れたら使わずに進めばいい。


「これでやってみよう。近代兵器のめんどくささを知るがいい」


「もしかして今回……死に覚えゲーですの!?」


「少しだけな」


 拠点に戻るだけで死なないから、実際にはそこまで緊張感は出ない。

 それでも体験することは大事だ。


「質問があります」


「なんだ?」


「我々のステータスからして、地雷数発程度で体力切れになるとは思えません。なぜ戻されたのですか?」


「体力ゲージとお前らの身体能力は別だ。それだと防御力でゴリ押しできるだろ」


「さては味をしめましたね?」


「さ、行ってこい」


 だって楽なんだもの。ゲームっぽく体力ゲージつけりゃいいし。

 世界をちょこっと改変すりゃいいから乱用しちゃう。

 横着し過ぎは生徒に伝わるな。気をつけよう。反省して次に活かすぞ。


「あ、またマネキンに戻ってる」


「撃ち抜いておきましょうか」


「その後ヘリが来ますわね」


「そちらは私にお任せを」


 お、作戦練ってやがる。いいぞー工夫しろー。

 あれだな。作ったもんを楽しんでもらえると嬉しいな。

 クリエイターってこういう気持ちなのかしら。


「来たわよ!」


 ゾンビにヘッドショットかまして無力化。爆弾は回収しているな。

 ローズが着替えたのは……迷彩服? ベレー帽と全身迷彩の服だよなあれ。


「ターゲットロック。排除します」


 ヘリに向けてスナイパーライフルを一発撃った。


「すみません」


「なに? 外したの?」


「どうやらこちらに落ちてくるみたいです」


 ヘリがふらふらと落下していく。駄女神に向けて。


「早く言いなさいよおおぉぉぉ!!」


「退避! 退避ですわ!」


 猛ダッシュで入り組んだ建物の並ぶ市街へ。

 ヘリは途中でスーパーにぶつかって大爆発。粉々になった。

 街を守る必要が無いので、壁として使うのは正解だ。


「その服はなんなの?」


「軍人の着る服です。射撃のプロになりました」


「便利ですわね」


 あいつ汎用性高いなー。これは是非とも伸ばしてやろう。

 長所は伸ばす。教師として必須項目である。


「さあ、この調子でがんがんいくわよ!」


 そこから何度か拠点に戻されながらも順調に突破。

 中間地点までたどり着き、ゴールも見えてきた。


「敵よ!」


 今度は軍人の群れ。対人スキルも覚えて欲しいのさ。


「あれって人間よね?」


 壁に隠れて敵の銃撃をやり過ごしている。

 ちょい戸惑い気味かな。まあこれは説明しなかった俺が悪いか。


「安心しろ。人間じゃない。あくまでNPCだ。俺が作ったデータだから、殺しにはならんよ」


「ならば遠慮なく。お二人とも、援護お願いしますわ!」


 ナイフを構えて素早く走り出すカレン。

 こういうの得意分野だよなあ。半分くらい俺のせいだけど。


「ええいやったろうじゃない! わたしのFPS力を舐めるんじゃないわよ!」


 近場の兵士を倒し、アサルトライフルを強奪。正確に援護していくサファイア。

 野生の勘とゲームの知識で動く。本来人間には不可能な荒業だが、女神なら可能なのだろう。というかサファイアだからできるのかも。


「あの車をいただきましょう」


 装甲車のタイヤを撃ち抜き、電柱に突っ込ませている。

 車内から出てきた敵を処理し、中にある武装を吟味。


「サファイア。あなた好みの武器がありましたよ」


 そう言って投げ渡されるはロケットランチャー。

 ロマンがあるよな。こういうものの締めはロケランだろ。


「あらいいじゃない。やっぱロケランは必須よね!」


 両肩に担いで撃ちまくっている。最早どのへんが女神なのかわからない。


「ふはははは! 女神の力にひれ伏すがいいわ!」


「はあ……これは失敗でしたね。カレンに願いを託すとしましょう」


 実に活き活きとしているサファイアとは対象的に、ローズは呆れ気味だ。


「ちょろいですわ」


 軍人をひとり、またひとりと流れるような動きで仕留めていくカレン。

 そのナイフさばきは特筆すべきものだ。格闘戦に慣れているからこその動きだな。


「遅い! 先生に比べてなんと遅い……それに力もない。まとめて吹き飛ばしますわ!」


 敵の中央に、ゾンビ軍から回収した爆弾を投げ込んだ。


「ローズ!」


「お任せを」


 見事爆弾に命中した一発は、敵全てを吹き飛ばす程度、容易な火力だった。


「まあざっとこんなものよ!」


「よくやった。これよりボスキャラとの戦闘を始める」


 五メートルほどの人型二足歩行兵器。

 真っ赤な機体にツノがあり、武装展開により背中の放熱板から魔力が溢れ出す。

 そこに俺が乗り込んで準備は完了。


「これがボスキャラ……十分の一スケール、ネオホープ弐号だ!」


「弐号?」


「一号は昔、美由希と乗ったんだ。それをモデルにした」


「っていうか先生が乗ったら勝てないでしょうが!!」


「安心しろ。人間でも武装すりゃ勝てる。これは授業だ」


 ちゃんと勝てるよ。超遅く動くし。行動パターンを単純にして少なくした。


「不意打ちロケランボンバー!!」


 やっぱり不意打ちしてきたな。

 衝撃で機体がグラつくも、装甲にほぼダメージはなし。


「正面突破は難しいぜ?」


「ならば関節部を撃ち抜くまで」


 心なしか正確さに磨きがかかっている気がする銃撃が飛んでくる。


「いい発想だ。今回は微妙なダメージだが、その発想は忘れるな。結構重要な戦い方だぞ」


「了解です」


「んじゃこっちもいくぜ」


 手のひらからビームを発射。両手で撃てば、それだけで制圧も可能な威力である。


「あんなのどうしろってのよ!」


「接近戦でもしてみますか? 動き自体は単調なようです」


「悪くないな。だが」


 腕に取り付けた超振動ブレードが唸りをあげる。

 驚くほど抵抗なく切り裂かれる建築物。ちょっと威力上げすぎたかも。


「近接武器もあるぜ。そして、足は歩くためにある」


 ゆっくりと駄女神に迫る。わざとらしく背中から魔力を放出して。


「どうせどこかに弱点があるわ。そういうときはね……とにかく乱射して全身に撃ち込むのよ!」


 これもゲームの知識だろうな。だがいい判断だ。

 撃ちながら逃げ回るのも忘れていない。これも素晴らしいぞ。


「装甲は削れている……単純に威力が足りない? サファイア、ロケランは?」


「使い切っちゃった」


「ご利用は計画的にな」


 背後から銃弾の雨が降る。放熱板に撃ち込まれた弾丸は、並の威力ではなく、軽い爆発を起こす。


「おぉ? これは……」


 横を装甲車が走り抜けた。どうやらカレンが運転しているらしい。


「乗って下さいまし!」


「ナイスカレン!」


「面白い。相手をしてやろう」


 装甲車は背後の扉が空いており、そこから様々な火器で応戦するローズ。

 そして屋根に取り付けられた巨大なガトリングにより、機体へダメージが通る。


「弱点は背中の放熱板ですわ!」


「オッケー回り込んで!」


「頭部にダメージを与えると、少しの間だけ動きが止まるようです」


 ほう、気付いたか。もうちょっとでクリアだぞ。頑張れ駄女神。


「うりゃりゃりゃりゃりゃ!」


「学習しました。関節は、より内側に、より脆い場所へ攻撃するものだと」


 よし、サービスだ。気づかれないよう、そっと車内にロケランを設置してやった。


「敵の動きが止まったわ!」


「二人とも、これを!」


「これで……終わりですわ!!」


 三人揃ってロケランをぶっ放し、見事ロボを破壊する。

 大爆発したロボの中心から俺、登場。


「おめでとう! よくやったぞ!」


「ふっ、私ならできると信じていました」


「今回もなんとかなりましたわね」


「よーおおおぉぉぉっし! 流石わたし! やればできる子なのよ!」


「よしよし、ちゃんと連携できているな。役割分担も自然にできているし、弱点を探るくだりはいい感じだったぞ」


 ちゃんと反省会をして、褒めたり拙い点を指摘したりする。

 こうして着実にレベルアップさせていこう。


「よーし帰るぞー今日のことを忘れないように」


 明日は休みだ。授業プランでも練りつつ外出でもしようかな。

 どうでもいいことを考えながら、俺たちは無事帰還した。

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