第20話 新しい武器でも駄女神だよ

「えー今回は、お前達に新しい加護を与えようと思う」


 いつもの教室。今回は新しい加護を与えてみよう。


「いいわね! 大将、女神っぽいのいっちょう頼むわ!」


「寿司屋か。真面目に何が欲しいか考えろ。世界に影響を与えるからな」


 ここで考えさせてみる。その間に魔力から加護を生成しておく。

 さてどんな案が出るかな。


「全世界が全裸になるというのは」


「能力ってか現象だろそれ」


「全世界がわたしにひれ伏す!」


「魔王か。んなもん悪用しかしないだろ。却下だ」


 嫌な予感がしてきた。やはり駄女神だ。ろくなもん思いつかない気がする。


「お茶漬けのもとが出ると嬉しいですわ」


「ふりかけから派生したか。もと単品だと食えないだろ」


「じゃあ流行ってるっぽいマカロンが出るってのはどう?」


「食べ物から離れろ」


 こいつら何食いたいかだけしか考えてないな。欲望に素直過ぎる。


「ではハムスターを希望します」


「なぜにハムスターだよ?」


「いいわね、可愛いじゃない」


「可愛さ関係ない!」


「ハムスターと同等の強さが手に入る加護ですわね」


「クソ弱いだろうが」


「どうしてよ?」


「所詮ハムスターだからだよ!」


 食べ物と生き物が不可となった。世話できないならペットを飼ってはいけません。


「わたしが超強くなるとかでいいんじゃない?」


「加護だぞ? 勇者に与えたりするわけだよ」


「与える……そうですわ、伝説の武器などいかがでしょう?」


「武器ですか。ですが、加護とは少し違うような気もします」


「ん、新しい発想だな。加護のある武器でもいいか」


 とりあえず意見を出させる。多少の無理は効く。俺に不可能はほぼ無い。


「聖剣とか定番じゃない? もと勇者なんでしょ? そういうの持ってないの?」


「そうだな。参考までに出してやる」


 メニュー画面からアイテムボックスを選択。

 異空間倉庫を開けて、適当に持っている武器を出してやる。


「エクスカリバー、デュランダル、蜻蛉切、妖刀村正、ゲイボルグ、方天画戟、青龍偃月刀、ヴァジュラ……と、まあこんなもんでいいだろう」


「また大量に出てきたわねえ」


「これでも一部だよ。昔コレクションしていた。今は埃被って倉庫の中さ」


「どれも不思議な力がありますね」


「ついでに勉強しよう。ステータスアップについてだ」


 こいつらはゲーム世界に慣れていないようだからな。

 ここで授業もしておく。一応授業の一環だし。


「えーわかりやすいのでいこう。ブリューナク。これは攻撃力がアホほど上がる。実際に持ってみろ」


「はーい! わたしやる!」


「よし、じゃあ持ってみろ」


 精巧に作られた、透き通るような水色の刃がついた銀の槍。

 結構重いはずだが、片手で持てるあたり、やはり人間とは別種の生き物だな。


「ん、なんか力が湧いてくるわ!」


「露骨にパワーが上がる。しかも、攻撃力と力のステータスが別だと両方上がる。これはえぐいぞ」


「別なのですか?」


「世界による。その辺が細かい世界だとむしろ有利なわけだな」


「いいわねこれ、振りやすいし。手に馴染むわ」


「教室で振るなや」


 机とかは片付けてあるからいいが、手が滑って他のやつに当たりそう。


「ん、やっぱり戦いは火力よ。圧倒的な攻撃力こそ至高なのよ!」


 なんか独自の美学があるらしい。

 実際に魔力は化け物クラスだからコメントに困る。


「投げると戻ってくる。しかも電撃とか光を纏って突っ込んでいく。教室でやらないように」


 言い終わる前に壁に突き刺さる槍。紙一重で間に合わなかったぜ。


「……凄い飛ぶわね」


「……外でやってくれ」


「……悪かったわ」


 なんだかんだ気に入ったようである。


「他の武器はどんな効果がありますの?」


「ん、続いてエクスカリバー。こいつは攻撃力と神聖魔法アップ。固有の魔法も使える便利な剣だ」


「持っているだけでですか?」


「だけでだ。使うコマンドとかあれば素人でも楽に出せる。超便利だぞ。回復もできる」


 回復可能。攻撃力高い。固有魔法は邪悪なものに効果絶大。

 俺がまだ世界を破壊できず、宇宙を潰せないほど弱い頃、旅の相棒だった一本である。


「確かに、尋常ならざる魔力を感じます」


「まあ思い出の一品だよ」


「倉庫に入れてたのに?」


「しょうがねえだろ。俺の拳が一番硬くて強いんだから」


 剣なんて無理して使えば折れる。殴ったほうが早い。

 拳に頼るのは、自然の摂理といえよう。


「この刀は古風で綺麗ですね。刀身が薄く紫なのもバイオレンスです」


「村正は攻撃力と魔力と魅力アップ。妖気と霊力っていう、魔力とは微妙に違う能力が身につく。しかも強い」


「これは……美しい。人を引き込む危険な妖刀だったりします?」


「昔はな。その辺の危険な要素は全部消しておいた。単純に凄く切れて危ない刀だよ」


「ふむ、軽いですね。なのに切れぬものはない。そんな底知れぬ何かを感じます」


 試し振りというよりは剣舞といった方が正しいだろう。

 刀を振るローズの動きには、一切の淀みがない。


「お前刀とか使えるのか」


「たしなむ程度ですが。二刀流もできます」


「面白い。デュランダルも貸してやるから、使いこなしてみな」


 デュランダルは結構な豪華さであり、西洋・東洋の二刀流ってかっこいいんじゃないかと思ったので採用。細い剣なので、ローズ向きだと思ったよ。


「これはまた業物ですね」


「いいだろ。しばらく貸してやる。取り扱いには気をつけろ」


「じゃあわたしも借りとくわ!」


「好きにしろ。ついでにカレンにもやる」


「わたくしもですの?」


 どうせなら三人とも武器の扱いに慣れてもらおう。

 使えて損はないし、戦闘スタイルを変えてみると、新たな発見があるかもしれない。


「ケリュケイオンだ。カレンは接近戦主体だろ? 魔法も使えたほうがいい」


 杖に翼と蛇の飾りがついたもの。多分魔法の杖としちゃ便利で初心者向け。


「魔力が超上がるし、魔法のレパートリーが足りない時に増やせるから便利だぞ」


「素晴らしいですわ。ありがとうございます!」


「三人で模擬戦やる場合に備えて剣も渡す。小振りなやつがいいよな」


 魔剣グラムを進呈。ちょっと刃を短くした改造品だ。


「刀身が薄く金色に光るだろ。魔力を込めれば光の密度が上がって、切れ味も上がる」


「ん……難しいですわね」


 切れかけの蛍光灯のように、ついたり消えたりを繰り返している。

 カレンは魔力の入れ替えに近いことが起きた。なので馴染ませる修行だ。


「それをちゃんと使えるようになれば、魔力のコントロールは完璧だ。無効化能力と平行して鍛えろ」


「はい! がんばりますわ!」


 カレンは素直でいいやね。本当に俺の補佐がカレンで助かった。

 これが女王神だったら胃が壊れている。


「よし、お前らに武器スキルレベル1をやる。修練を積めば積むほど上がる。しかも下がらない。とりあえずこれを上げろ。はじめは効率のいいやり方もわからないだろうから、自分のスタイルを見つけるようにな」


 三人に加護を与える。武器戦闘は、肉弾戦や魔力の撃ち合いとはまた違う。

 ここで慣れさせるのもいいだろう。


「わたしの才能が今、花開く時が来たのよ!」


「面白そうですね」


「わたくし、誠心誠意レベル上げいたしますわ!」


 レベル制の強みは、成果が数字として出るところにある。

 そして自分のステータスを上げてくれたり、より細分化したり、必殺技のヒントになったりもするわけで、やりこみ要素多数である。

 こういうゲーム感覚で成長が見られる方が、こいつらには向いているだろう。


「駄女神でも、鍛えたら成長する。軽く外で振ってみるといい。グラウンドなら物が壊れないだろう」


「やった! 女神ダーッシュ!!」


 元気に駆けていく駄女神。やる気とは無理矢理出させるものではない。

 生徒が自分で引き出すものだ。

 俺はそのお手伝い。先生とはそういうもんな気がした。

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