第200話 最も輝いていた場所

 オオウミガラスは感嘆の声をあげた。

 近付くに連れて分かる観覧車の大きさ。

 オオウミガラスは大きなアトラクションが動いていることに感動を覚えてる。


 あの大きさの観覧車ならばセントラルエリアを一望出来そうだ。

 だが、乗るにはお金が掛かるようだ。

 職員からもお金を取るのか……


 お金と聞いてオオウミガラスは首を傾げる。

 そう言えば、オオウミガラスに通貨について話したことはなかったか。

 まぁ、使う場面などなかったから仕方無い。


 オオウミガラスにはジャパリまんのようなものと簡単に説明をしておいた。


 私とオオウミガラスの会話を聞いていたピューマがジャパリまんと言う言葉に反応した。

 やはり、時代は変わってもフレンズはフレンズ。

 食欲旺盛である。


 どうやらこの時代にはまだジャパリまんは無いらしい。

 ジャパリまんは人が食べても非常に美味しいが、その正体はフレンズの健康を維持する為の栄養機能食品だ。

 この時代のフレンズは人と同じような食べ物を食べているのだろう。


 オオウミガラスが自分のジャパリまんをピューマに分け与える。

 ピューマは超美味しいと良いながら、私も食べたいと喚く若い祖母の前で瞬く間に全部食べてしまった。


 ……悪いことを思い付いた。


 私は崩れ落ちる祖母の前にジャパリまんを無言で差し出す。

 祖母はジャパリまんを目の前でピューマに食い尽くされたせいかゆっくり味わうことなく平らげてしまった。


 食べてしまったか……


 私は内心で悪い顔をしながら若い祖母の前で態とらしくジャパリまんが貴重であることを語る。

 そして、表情が固まったのを見計らって祖母に向けて言う。


 観覧車に乗りたい、と……


 作戦は上手く行った。

 祖母は仕方無く観覧車に乗るためのお金をくれた。


 ここは全員ではなく、祖母とピューマ、私とオオウミガラスに別れて乗る。

 少々祖母に聞かれては不味い内容があるからだ。


 観覧車に乗った私は双眼鏡で周囲を見渡す。


 地方の地形は私の時代と変わってない。

 だが、森林にあった筈の研究施設はまだ建築途中のようでクレーンが動いているのを確認した。

 モノレールも私が知っているより線路が短い。


 これは夢ではなく本当に過去のジャパリパークで確定と見るべきか。

 しかし、パークセントラルは私が思っていた姿と大分違う。

 研究施設が建ち並んでいるかと思っていたが、その中身はただの遊園地と動物園が合体したテーマパークだ。

 いや、もしかしたら建物がファンシー過ぎて分からないだけなのかもしれない……


 観覧車から降りたオオウミガラスは興奮しながら、ピューマと感想を言い合ってる。

 そのままオオウミガラスとピューマは次はあれに乗りたいと祖母に催促をし始めた。


 祖母もこれ以上お金は払いたくないのかもしれない。

 だが、祖母はフレンズ達から発せられるキラキラした眼差しを真正面から見てしまった。


 ああ、やはり私は祖母の血を引いてしまっていたのだろう。


 キラキラした眼差しに負けた祖母は泣く泣く財布の紐を緩めたのだった。

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