第192話 落涙
パッカーン!
恐竜型セルリアンは突き刺されたセルナの槍と共にサンドスターへと還る。
しかし、消えたのは恐竜型セルリアンだけで、キツネのセルリアンは崩壊する恐竜型セルリアンのパーツに紛れてこの場から逃げ出そうとしていた。
逃がしてなるものか!!
……!?
走ってキツネのセルリアンを追い掛けようとしたが、まるで身体の芯から力が抜け落ちるように私は膝をついてしまった。
逃がしてなるものか……!!
気合いで立ち上がった私は気力のみで前へと進み出す。
ここであのキツネのセルリアンを逃がせば後々厄介なことになる。
だが、私の歩みはオオウミガラスによって止められてしまった。
セツナちゃん!!
無理は良くないよ!!
一昨日大怪我したばっかりなの、なんか忘れてない!?
……一言で言ってしまえば、私はスタミナ切れを起こしていた。
大怪我から回復したばかりで体力は完全に戻った訳ではない上に、御守りの使い過ぎで極限まで体力を使い果たしてしまったようだ。
鏡で確認すると顔色は青を超えて土気色になりかけてる。
オオウミガラスが止めたくなる訳だ。
追うのをやめた私はセルナの方に振り返る。
……セルナはあの暗闇の中で声を聞いたらしい。
声と言うよりは情報が直接流れ込んできたと言う感覚の方が近いらしいが、ここは敢えて声と表現する。
声はセルナ自身がセルリアンでもケモノでもない存在になっている事。
セルナには仲間と呼べる存在が居ない事。
どうしようもなく異質な存在である事。
聞いてもいないのに告げられる情報。
セルナが孤独を感じた始めた時に声は囁いた。
“かがやき”を捨てればセルリアンに戻れると……
私が掛ける言葉に迷っているとオオウミガラスがセルナに言葉を掛けた。
わたしも仲間が居ないんだ。
でもね……
寂しいって思ったことはないよ。
わたしには“友達”がいるからね。
だからセルナちゃんも寂しがる必要なんて無いんだよ。
だって、わたし達はもう“友達”だもん。
オオウミガラスとクーちゃんが優しく抱き締めると、セルナの目からは更に大量の涙が零れ落ちた。
だが、その涙の意味はきっと別物になっただろう。
その時、私は背後に気配を感じて振り返る。
私達から少し離れた場所にはビーストが地面に座ってこちらを見ていた。
どうやらビーストも無事セルリアンを倒せたようだ。
と言うか一人で倒してしまったのか……
やはり、このビーストは頭一つ抜けて戦闘能力が高いらしい。
しかし、ここで襲ってこられたら不味い。
もう、私は御守りを使ったり逃げたりする為の体力が残ってない。
……ならば、エサに食い付くだろうか?
私がジャパリまんを取り出すとビーストが露骨に反応を示す。
視線が私の右手に握られてるジャパリまんから離れない。
私は左足を高く上げて降ろした反動を利用し、一歩大股で踏み出したような体勢で右腕を千切れんばかりに全力で振ってジャパリまんを投げ飛ばした。
ビーストが驚きながらも声を上げて吹っ飛んでいくジャパリまんを追い掛けてジャングルの中へ消えていく。
もしかしてだけど、わたし達を助けに来てくれたのかな?
オオウミガラスはそう言うが私の見解はジャパリまんを奪いに来たのではないかと思ってる。
ともかく、戻ってこない内にこの場を離れるとしよう。
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