第169話 リスタート
またしても超巨大セルリアンが現れたのかと戦慄したが、私は直後に別の意味で戦慄することとなった。
セルリアンの色が黒ではなく、海と同じような深い青色だったのだ。
そもそも超巨大セルリアンは溶岩の性質を反映してか、水に弱いと言う弱点を抱えているので海で自由に行動なんて出来ない。
結論として、目の前の戦艦型のセルリアンは超巨大セルリアン級に成長した普通のセルリアンだったのだ。
アワワワワと情報を処理できずにいるラッキービーストに向かって命令する。
陸に向かえ!!
ハッとして再起動したラッキービーストは全速力で陸に向かって船を走らせる。
激しく揺れる船の上で必死に手摺に捕まりながら後方を見る。
僅ながらセルリアンの方が速度が上。
このままでは追い付かれてしまう。
その時、私は御守りの存在を思い出した。
これを使えば現状を打破出来るかもしれない。
……どう使えば良いのだろうか?
そう言えば詳しい使い方を教えてもらっていなかった事を思い出す。
私は半ばパニックになりながらもどうにか出来ないかと振り回す。
それが功をなしたのか偶然なのか、オオウミガラスが突如として力が湧いてきたと叫ぶ。
オオウミガラスは脅威に立ち向かう為に、戦艦型のセルリアンに向き直る。
………………どうした?
動きが止まったオオウミガラスに声をかける。
セルリアンが大ジャンプするのと同時にオオウミガラスは私の問いに答えを返した。
やっぱムリぃいいいいいいいい!!!!
私達の船の手前で着水した衝撃で私達は船から海へと投げ出される。
巨大なセルリアンが巻き起こした激しい水流の中で上下が分からずにもがいていると、誰かに右手を掴まれて引っ張りあげられる。
私の手を掴んだのはオオウミガラスだった。
オオウミガラスは御守りの力でパワーアップしているのか、普段から考えられない程の速度で陸地に向かって泳いでいく。
隣には必死の形相で虹色の粒子を撒き散らしながらラッキービーストを持ったセルナを抱えたクーちゃんが水上を滑るように並走している。
後方を確認すると私達の船を壊し損ねた戦艦型のセルリアンが止めを刺すかのように、その巨体で船にのし掛かった。
船は戦艦型のセルリアンの重量で中心から真っ二つに折れて海の底へと沈んでいく。
結果的に言えば私達は助かった。
戦艦型のセルリアンは船を沈めて満足したのかそのまま何処かへ去っていった。
オオウミガラスにあのセルリアン事を聞くが、オオウミガラスもあんなセルリアンは初めて見たと言う。
セルリアンは獣や物の性質をコピーする。
戦艦は敵国の船を沈めるのが目的であるので、侵入してきた船を沈めるために出てきたのかもしれない。
オオウミガラスも噂すら聞いてないようだし、人工物にのみ反応するセルリアンだったのだろうか。
陸に上がった私達は船の沈んだ方向を見ながら呆然としていた。
ジャパリまん……全部沈んじゃったね……
オオウミガラスがそう呟いたときに誰かのお腹の虫が鳴く。
……気を取り直して食料を探しに行こうか。
こうして、私達はまたゼロから旅を始めることとなる。
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