第43話 古木の贈り物

 空を切って直進した枝がフレンズが隠れている木の上の茂みに突き刺さる。


 ぽとっと枝の間からジャパリまんが落下してきて、それと同時に何かが高速で木々の間を飛んで逃げていった。


 あまりに早くて姿がボヤけて見えたが、白いフレンズだった。


 おそらく、鳥のフレンズだとは思う。

 フレンズになるとあんな鋭角で曲がる飛行が可能になるのだろうか?

 何処と無く生物離れした動きだったように見えた。


 私の緑色のジャパリまんの無事を確認する。

 落下の衝撃で形は歪んでしまったが、食べられたような形跡はない。


 とりあえず、安心した。


 振り向くとオオウミガラスが白いフレンズが消えた先をじっと見詰めていた。


 どうしたのか聞いて見ると先程のフレンズが泣いていたような気がするとのこと……


 ……………謝りに行こう。

 威嚇のつもりで枝を投げたのだが、必要以上に相手を怖がらせてしまっていたようだ。


 ジャパリまんを無理矢理口に押し込み、私達は白いフレンズを追って山間の森の中へ足を踏み入れた。


 この山は人力飛行機があった岩だらけの山とは違い、木々が多く生えており、何処と無く神秘的な雰囲気を醸し出している。

 言うなれば、別世界に迷い混んだような……


 最も、サンドスターと言う物質とそれが引き起こす不可思議な現象があるこのジャパリパーク自体が、私にしてみれば別世界と言えなくもない。


 周囲に呼び掛けながら進んで行くが、件の白いフレンズは中々姿を現さない。

 声が届かないほど遠くへ行ってしまったのだろうか?


 しばらく進んで行くと私達の目の前に一際巨大な木が現れた。

 目測だが、木の幹は直径は約3メートル、天辺まで約20メートルと言ったところだろうか。

 その木の佇まいからは古くからジャパリパークを見守っていたであろう貫禄を感じる。


 ふと、視線を下に下ろした際にその木の根本に何か落ちているのを見付けた。


 虹色に輝く透明な結晶のような物。

 木漏れ日の光を受けてキラキラと輝いている。


 これもサンドスターなのだろうか?

 拾い上げて観察をしてみるが、何かと反応する気配はない。

 手触りとしてはプラスチックが近いだろうか?


 あっ……


 結晶を太陽に翳している時に偶然視線の先に件の白いフレンズが、太い木の枝に隠れて此方を伺っているのを見付けることができた。


 白いフレンズは私と目が合うと、それだけで瞳を潤ませてしまう。


 どうやら私は相当怖がられているようだ。


 オオウミガラスが怖くないよーと呼び掛けるとおずおずと言った様子で白いフレンズがこちらに近付いてきた。


 空を飛ぶのに頭に鳥のフレンズ特有の翼はない。

 そう言えば、コウモリのフレンズであるナミチスイコウモリも頭に翼は無かったが、彼女は背中の羽のようなマントで飛行していた。

 しかし、目の前の白いフレンズにはそれも存在していない。


 まぁ、そもそも空を飛べるフレンズが飛行のために翼を使っているのかは疑問ではあるが……


 白いフレンズの特徴としてヒレの付いた尻尾があるが、私の記憶ではそんな尻尾を持つ生物はいない。


 一体彼女は何のフレンズなのだろうか?

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