日記外その13 キツネと熊?
道の先には木彫りの熊が隊列を組んで並んでいた。
「ねぇねぇ、あれ何かな?」
「……木彫りの熊の群れ?とりあえず聞いてみよう」
謎のフレンズとオオウミガラスは木彫りの熊の群れに戸惑いながら、木彫りの熊の製作者と思わしきフレンズに話し掛けた。
「何?」
不機嫌そうに返事を返してきたのは赤茶色の毛を持ったキツネのフレンズ、アカギツネ。
「……こんなところで何をしているのか気になったんだ」
「修行よ」
「修行?」
謎のフレンズは首を捻りながら木彫りの熊を見詰めて何やら考えに更ける。
「何の修行なの?」
「見て分からない?」
見て分からない。
ボソッと聞こえないくらいの声量で謎のフレンズが呟くが、アカギツネの耳にはしっかり聞こえたようでムッとした表情を浮かべる。
「アタシは伝説の“ヒト”になるために修行をしているのよ!」
「……」
「ヒトならムガッ」
何か嫌な予感を察知した謎のフレンズは、咄嗟に余計なことを口走ろうとしているオオウミガラスの口を防いだ。
「見たところアンタはゴリラのフレンズとペンギンのフレンズみたいね」
「ご……そ、そうだ」
「……」
まさか、ゴリラと言われて怒らないなんてとオオウミガラスが驚きの眼差しを向けてる。
謎のフレンズもいい加減ゴリラと勘違いされるのに慣れてきた上に、今回ばかりは人とバレると面倒な事になりそうなので敢えて勘違いを放置することにしたようだ。
「アンタ達は知らないだろうけど、ヒトってすごいのよ。その昔パークとフレンズを守っていたのもヒトだし、何か困り事があったらぱぱって解決しちゃうし、さらにはフレンズをパワーアップさせることだってできちゃうんだから!」
「そうなのー?」
謎のフレンズの拘束を抜けてオオウミガラスは謎のフレンズにヒトとはそんなに凄いケモノなのかと問い掛ける。
だが、謎のフレンズは首を横に振ってそれを否定した。
「……人はそんなに凄い動物ではない」
「そんなこと無いわよ!パークの遺跡は全部ヒトが作ったのよ!」
「……と、ところでどうして木彫りの熊を作っているんだ?」
「猫よ」
少し機嫌が悪くなるのを察して話題を変えようとしたが、変えた先でも地雷を踏んでしまったようだ。
「す、済まない。……どうして木彫りの猫を作っているんだ?」
内心、どう見ても熊にしか見えないなとか思いながら謎のフレンズはアカギツネに問い掛ける。
「『げーじつ』を学んでいるのよ」
「……げーじつ……芸術?」
「かつてヒトは『げーじつ』を使って遺跡を作り上げたのよ。だから『げーじつ』を学ぶのはヒトに近付く第一歩なのよ!」
「「……」」
謎のフレンズはともかく、オオウミガラスですらそれでヒトには成れないだろうと考えているので、二人して思わず掛ける言葉を失ってしまった。
謎のフレンズは明後日の方向を向いて少し遠い目をしていたが、アカギツネの方に向き直って言葉を掛けた。
「……努力は決して無駄にはならない。が、頑張れ!」
「な、なんか上手いこと言えないけど、頑張って!」
「もちろん頑張るわよ。もう少しで何か掴めそうなのよね」
「……そ、そうか。それでは私達はここで失礼する」
アカギツネに別れを告げた謎のフレンズの表情は何処と無く何かを伝えるべきどうかを悩んでいるよだった。
「なんか、変わった子だったね」
「……ああ、変わった子だった」
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