第21話 船旅?

 料理を堪能した私達は次の目的地へ向かうべく荷物を整理する。


 最も整理するほど荷物を持っているのは私だけだが……


 ここから食べ物を持っていければ良いのだが、長期間持ち歩くことを考えると保存性と美味しさを兼ね備えたジャパリまんに負けてしまう。

 こうして考えるとジャパリまんの食品としての優秀さが際立つ。

 材料に何を使っているのだろうか?


 コイちゃんに別れを告げて湿原の中を進む。


 この湿原を越えると海に出ることになり、海岸線に沿って行けば晴れて港に辿り着く。

 このままのペースだと湿原を抜けるのは日が暮れるころになりそうだ。

 また、野宿をすることになるのかと思うと少しだけ憂鬱である。


 順調に進むかと思われた旅だが、ついにトラブルが訪れてしまった。


 無いのである。


 遊歩道が途中で滅茶苦茶に壊れている。

 それも何年も放置した末に壊れたものではなく、明らかに巨大な何かによって破壊されたような形跡が見受けられる。


 セグロジャッカルは残骸の上をジャンプして渡り、オオウミガラスはこれまで通り泳いで進む。


 私は泳げなくはないが決して得意とは言えない。

 それに食料が水浸しになるのは何としても避けたい。


 どうしたものかと思案しているとオオウミガラスが己の背中をポンポンと叩く。


 乗せてくよ!


 行けるのだろうか?

 人一人乗せて泳ぐとなると二人とも沈む未来しか見えないのだが……

 信用してないわけではないがやっぱり不安は付き纏うので一度荷物を外した状態で行いたい。


 結果から言うと特に問題は無さそうだった。


 少し足や腰が濡れるのは仕方ないと諦めて、濡れてはならない荷物を頭の上に乗せていざ出航。

 個人船大海烏丸は私を乗せて大湿原を行く。


 その横を相変わらずぴょんぴょんと器用に残骸の上を渡り歩くセグロジャッカル。

 しかし、調子が良かったのも最初だけ。

 段々と飛び移れる残骸が減っていき、無理をしてジャンプをしたところ苔で滑り湿原の中へ落下した。


 水深は約1メートルと言ったところか?


 胸の下くらいまで水に使ったセグロジャッカルは再び残骸の上に上がろうとする。


 た、助けてー!!


 どうやら着地の衝撃で足が泥に嵌まってしまったようだ。

 足を抜こうにもどちらかに体重を掛けると更に沈んでしまうと言う悪循環が発生し、抜け出すことが出来なくなってしまう。


 これこそが私の恐れていた事態だ。


 自力で脱出するには何か手で捕まれるものが必要なのだが、セグロジャッカルの回りには捕まれるものがない。


 ここは私が残骸の上からロープを投げて引っ張りあげるか、オオウミガラスに捕まって引っ張ってもらうか。

 ともかく、一人ではなく皆で来たのは正解だった。


 今回は私が一度降りてオオウミガラスに引っ張ってもらう案を採用した。


 その時、上から二人が四苦八苦している様子を眺めていた私はセグロジャッカルの背後の水面が波打っていることに気が付いた。

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