第17話 迷宮の主

 そもそも私達は失念していたのかもしれない。

 大型セルリアンは私達の背後からやってきて迷宮の中へ追い込んでいった。


 つまり、トンネルに続く出口は初めから2つ存在しており、入口と出口が繋がっている。

 セルリアンが迷宮の通路に沿って移動したいたのならば確実に何処かで対面していた筈なのだ。


 セルリアンの無機質な瞳が私を捉える。


 私は視線を感じて瞬時にオオウミガラスとセグロジャッカルの居ない方向へ走り出した。


 このトンネル内部は迷宮の中に比べてかなり広く、自由に動くことが出来る。

 それはセルリアンも同じことで、迷宮の中のような一方にしか進めないと言うこともなく私を狙って追い掛けてきた。


 草原のセルリアンより遅く、走って逃げられるくらいの速度ではあるが小回りがそこそこ利いて執拗に私を追ってくる。


 このままでは先に私の体力が尽きる。


 そう思った時にセルリアンが突然背後を振り返った。

 セルリアンの視線の先にはセグロジャッカルとオオウミガラスが二人でセルリアンの尻に付いている石を攻撃していた。

 しかし、体力切れ寸前なのが災いしてか、力が乗らずにセルリアンの石を砕けないでいた。


 このままでは不味い。

 何とか気を此方に引き戻せないかとポーチから色々な物を取り出して投げ付ける。

 しかし、どれもこれも反応を示さない。

 破れかぶれに手に持っていたペンライトを投げ付ける。


 すると、意外なことにセルリアンはペンライトの光を追うような仕草を見せた。

 セルリアンは強い光に惹かれるのか?


 一瞬の隙が出来たのが幸いだったのか、二人の最後の力を振り絞った一撃がセルリアンの石を破壊した。


 疲れた。

 いくつもの幸運が重なって今回はセルリアンを倒すことが出来たが、次に大型セルリアンと遭遇した場合はどうなるか分からない。


 ここに来てまだ一週間も経ってないのに2回も命の危機が訪れた。

 普段もセルリアンとはこんな頻度で出会うのだろうか?

 二人に質問をしてみるとそんなことは無いらしく、頻度としては二週間に一回小さなセルリアンと出会う程度らしい。

 そもそも大型セルリアンは発生することすら稀なようだ。


 私達は相当運が悪い。


 とりあえず、私達はここで休息を取る。

 少々危険があると分かってはいるが、疲労困憊で歩く気力がないのだ。

 ジャパリまんを食べて一息着いたところでまた新たな異変が始まった。


 トンネルの行き止まりからまるで何かを叩き付けるような妙な異音が聞こえてきたのだ。

 もう体力の尽きた二人は満足に歩くことも出来ないので、私が二人に肩を貸してトンネルの出口へ向かう。


 流石に二人分は厳しいが、それでも私は生き延びる為に前へ進む。

 しかし、無情にも私達が逃げ切る前にトンネルの行き止まりは崩れてしまった。


 ここまでか!


 しかし、そこから現れたのは私達の予想に反して、セルリアンではなくフレンズだった。


 直後、私は完全に気が抜けてセグロジャッカルとオオウミガラスを道連れに地面に倒れ込んだ。


 現れたフレンズはアメリカバイソン、コヨーテ、ブラックジャガー。

 彼女らはハンターのようで、草原に出現した大型セルリアンを退治しにやってきたらしい。


 だが、そのセルリアンは三日前に居なくなり、先程のトンネルの大型セルリアンも倒されたばかりだ。


 その事をハンター達に話すと素直に感心された。

 もう少し疑っても良さそうなものだがフレンズ達は他者を疑うと言うことを知らないらしい。


 そして、私をスカウトしようとするのはやめろ。

 私に体当たりで土壁を破壊するような力は無い。

 私を何だと思ってるんだ?

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