ど、どうか私に清き一票をっ!!!!
いつもの定番、『放課後の理科室』にいた。
なんか放課後の理科室ってちょっと恋愛チックだが生憎私は一人だ。
白馬の王子をもう馬じゃなくてロバでもいいから乗ってこい!!
って私は今日疲れているんだ。
うん、今日の出来事を振り返ろう。
まず本がなくなり焦る。
そして、勉強が全然わかんない。
特に漢字。あれこそ必要ない気がする。
もういっその事全部の国が英語でいいんじゃないかと思うんだが。
確かに英語に切り替える時の時代の人は『うわぁ〜。面倒くさっ』
『は?今更なんで?』と思うかもしれないが、自分の孫のことを考えてごらん。
その時には強制的と言われるほどに『英語を覚えろ!』と言われるだろう。
だったら最初から英語に統一したほうがよっぽど早い。
「どうか、私の案に清き一票をっ!!!」
………。理科室に私の声が虚しく響いて消えた。
と、思いきや。
「はいはーい!私一票入れまぁす!!」
え?
声のした方に振り返ると、ドアが開いていて顔見知りの女子三人がいた。
ロバの王子ではなかったようだ。
あ、ちなみに私の位置は窓側だからね。
「あ、もしかしてまた妄想中でしたか?」
な、なぜっバレたんだっ………!
「何その驚いた顔〜?あ、もしかして図星〜?」
「「「はははっ!」」」
女子三人は笑った。
「ってかさ、さっきの清き一票とか何?」
一番背が高くて、おしゃれそうな女子が言った。
まとめて、『おしゃ女子』とでも呼ぼう。
私は清き一票のことについて話した。
少しでもこの案を広めなければっ!!
彼女らは私の元へ来た。
「えっと、日本語とかフランス語とか、いろいろ国の言葉があるからさ、一つに英語にまとめたらいいなぁ〜なんて思って。ヘヘッ」
よしっ、私の気持ちよ、伝われれれえええっ!
「あ、ごめん聞いてなかったw」
真ん中くらいの背の子が言った。
その子のニックネームは『真ん中女子』にしよう。
その子もだいぶオシャレだ。
「ならもう一回……」
「もういいよ。それ以上聞いたら私の耳が壊れちゃうからぁ〜」
「そんな人に一票入れないほうがいいよ、『一番背が小さい子』ちゃん」
「確かにそうかもぉ。私、あなたに一票入れませぇーん!」
三人のコントが繰り広げられた。
「で、話変わるけどこの本何?」
『おしゃ女子』が手に持っていた本は、私のなくしていた本だ。
「あ……えっと………」
言葉がどうしても出てこない。
出したくても出なくて。
足が震えそうで震えていて。
「中見てもいいよね〜?」
え、だめっ。
私の声は出てこなかった。
だって出したくでも出せないんだもの。
彼女らはパラパラとページもめくって、何かを言っていたがついに私の耳は壊れちゃったのだろう。自分の脳内の声しか聞こえなかった。
そして、彼女らはにこやかに笑っていた。
もしかすると彼女らもこの本が好きなのかもしれない。
だって、この本最後にはこれが全て夢だったっていうオチでおかしいんだもの。
すると彼女らの一人、『おしゃれ女子』が」急に口を開いた。
「この本破いていいよね?」
すると、彼女らの一人、『一番背が小さい子ちゃん』が口を開いた。
「この絵の真似してぇ。そしたら写真撮ってあげるからぁ」
すると、彼女らの一人、『真ん中女子』が口を開いた。
「あ、そういえば君って、いつ死ぬんだっけ?」
本は破いちゃダメだし、挿絵の前もできない。あと、いつ死ぬかはわかっていないっす!!
「じゃあまず本捨てるねー!そのために破っちゃえー!!」
「なんか落書きもあるしね〜」
『おしゃれ女子』は本を破ろうとした。
その本は人気作家さんがサインしてくれて、お母さんが頑張ってサイン会場まで連れて行ってくれて、お母さんとお買い物をした大切な思い出でもあるのだっ。
やはり言葉は出なかったが、足は動いた。
目の前だったので一歩踏み出し、『おしゃれ女子』の手を叩いた。
そしたら、彼女は転び、その隙に本を奪い返した。
転んだ彼女は自分でおろした理科室の椅子に頭をぶつけ、うずくまっていた。
「『おしゃれ女子』ちゃん大丈夫!?」
「ちょっと何すんのっ!?」
『おしゃれ女子』をよく見ると、そこからうっすら赤い絵の具が塗られているのに気づいた。
私はどうしようもできなくなり、震える足を無理矢理でも動かし、理科室を出た。
明日ちゃんと謝らないと…………。
ー本当に今日は疲れたー
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