第82話
みわ「ひょっとして、その、教えてくれた人って、田中先生?」
田中、というと誰だっけという感じだが、
佳子さんの踊りの名字であることは、僕はすぐに思い出した。
僕は一瞬考えた後、言った。
僕 「違います」
僕はここで、全体像を教えてくれた佳子さんの許可を得ずに
佳子さんから聞いた、とは言えなかった。
仮に、佳子さんから聞いたと言ってしまうと、
みわちゃんの怒りは佳子さんに向かうだろう。
そうすると、佳子さんに申し訳ないし、
みわちゃんが、佳子さんに何をするか、わからない。
僕は、情報源はなんとしても守ろうと思い、やむなく嘘をついた。
みわ「じゃあ、誰」
僕 「誰でも、いいじゃん」
みわ「よくないわよ!だって私の予定、めちゃくちゃじゃない」
みわちゃん、私の予定って、自分のことばかり考えすぎじゃないか。
僕は、静かに怒り心頭に発した。
僕 「みわちゃん、自分のことばかり考えすぎだよ」
みわ「そんなことない。あたしは、パパのことを思って」
僕 「そんな、財産目当てに結婚して、本当にいいのか?」
みわ「だってパパだって、財産があればまた商売が出来るから
なんとしても、石井君に来てもらおうっていっていたのよ」
僕 「そしたら、僕じゃなくても、カネづるがあればいいんじゃないか」
みわ「でも、石井さんには愛情が」
この期に及んで愛情という。
みわちゃんの愛情とは一体何なのか。
僕 「みわちゃんへの愛情は、僕はもうなくなりました」
僕は、決定的なことを言ってしまった。
でも、仕方がなかった。
みわちゃんは、激高した。
みわ「石井さん、そんな冷たい人だとは、思わなかった!」
「人がこんなに大変な思いをしているのに、なんて仕打ちなの!」
「もう、坂の上にいられないようにしてやる!」
「明日、秘書室と役員室で、あることないこと、言って回るからね!」
みわちゃんは、エスカレートした。何なんだろう、この豹変振りは。
僕は驚くばかりだった。
すると突然、インターホンが鳴った。
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