第81話

僕 「愛してくれてるの」

みわ「もちろんよ」

僕 「ありがとう。じゃあ、質問に答えてね」



僕がにべもない対応をすると、みわちゃんは怒った。

  


みわ「ひどいじゃない!」

僕 「何が?」

みわ「あたしのこと、散々コケにしたでしょ」

僕 「してないよ。質問しているだけ」

みわ「だって、あたしが困る質問ばっかりじゃない」



困る質問か。

これが、ほぼ答えだと思った。

やはり、人間は、問うに落ちず語るに落ちる。

質問の直後の答えではなく、その先の会話に、本質が出てくる。



僕 「困るんだ。じゃあ、やっぱり、財産なんだね」

みわ「財産だけじゃないって!」



みわちゃんは、さらに抵抗した。

ここで僕は質問を変えた。



僕 「じゃあ、僕が坂の上テレビの社長の家の出だってこと、

   なんで言ってくれなかったの?」

みわ「そ、それは、石井さんが当然知ってて、

   言わないだけだと思っていたから」

僕 「そうかな。だって、同棲するくらいなんだから、そんな大事な話、

   僕が隠している方がおかしいじゃん」

みわ「そんな、大事な話だったら、同棲していても隠すって」



みわちゃんがまた本音を言った。


同棲していても、みわちゃんは離婚歴があることはずっと黙っていた。

もちろん、なかなか言えなかったというのはあるだろう。


しかし、もし、僕が佳子さんと会わずに

みわちゃんとの間の流れを変えないままだったら、

みわちゃんはずっと黙っていたのではないかと思う。

ここも、僕とみわちゃんの感覚はズレている。



僕 「僕は、大事な話なら、するな。

   だから、みわちゃんと僕は、感覚がズレているんだと思う。

   確かに僕も、このズレをずっとそのままにして、放っておいたのは、

   よくなかった。僕も、悪かった。

   でも、こんなズレた感覚のままでは、

   僕はみわちゃんと一緒になれない」



そういうと、みわちゃんは、うなだれた。

そして、次の瞬間、顔を上げた。

みわちゃんは、何かに気づいた。

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