第59話
予備校のパンフレットに、高校生役で出ていた時と同じ
白いハイネックのセーターに、赤いスカートだったからだ。
僕は思わず言ってしまった。
僕 「あの、これ、代々木の予備校の」
佳子「そう、パンフの、ですっ」
「さすがワンコちゃん、よく覚えているね」
僕 「うん。大事に持ってたからね」
佳子「あら、そうなの。うれしい」
僕は佳子さんの出ているパンフレットを、宝物のように持っていた。
もう、予備校なんて関係ないのに、佳子さんが出ていた4年分は、
全部集めて持っている。
その、パンフに出ていた佳子さんが、パンフから飛び出してきた。
僕はますますうれしかった。
僕 「いや、なんだか、すごく、信じられなくて、うれしい。
だって、パンフの中の衣装そのままだから」
佳子「へへ」
僕 「これも、狙ってやってるんでしょ」
佳子「ううん」
佳子さんは、ちょっと意外な答えをした。
佳子「これは、さっきタンスを開けてたら、ほんとに偶然見つかったの」
僕 「へえ、じゃあ偶然だ」
佳子「そう。偶然と必然とが組み合わさって、
この物語は進んでおりますっ」
物語。
僕がゆうべ思っていたこの言葉が、
佳子さんの口からも出てくれて、うれしかった。
佳子「じゃあ、ご飯食べに行こうか」
僕 「うん」
僕と佳子さんは、廊下に出て、
まるでパンフレットに載る先生と生徒のように、並んで歩いた。
もちろん、風貌からすれば、僕が先生で佳子さんが生徒だけれど、
実際は、佳子さんが先生で僕が生徒だ。
そのギャップも面白いと思いながら、僕は朝食会場に向かった。
きのうの夕食と同じ、広間に着いた。
また、ふすまがすごいタイミングですごい勢いで開いた。
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