第39話
15畳の部屋の中に、なんと、布団が仲良く2つ並べられている。
しかもくっつけて。
僕は早速鼻血が出そうだった。
僕 「あのう、これは布団が近いんじゃないかなあ」
佳子「そう?ごく普通だと思うけど」
佳子さんは、にべもない。
僕 「あの、だって、これだけ近いと、手が触れちゃうかもしれないし」
僕は抵抗した。
佳子「手が触れると、何かまずいの?」
相変わらず、佳子さんは、にべもない。
僕 「まずいよ」
佳子「なんで?」
僕 「だって」
僕はそう言うと、さて、次にどんな言葉を言おうか、迷った。
もし、「手が触れると興奮しそうでまずいです」なんていうと、
また「エロワンコ」と言われて、佳子さんの清純さが失われてしまうし、
「つきあっている彼女がいます」というと、それもまずいし。
ん?
ここで僕は気づいた。
そういえば、僕に彼女が、しかも同棲している彼女がいるって、
佳子さんには言ってなかったな。
そろそろ、みわちゃんのこと、言わないといけないんじゃないかな。
それを言えば、ストッパーになるだろうし。
何のストッパーなんだかよくわからないけど。
でも、佳子さんにみわちゃんの話をしたくないのも事実だ。
佳子さん、みわちゃんの話なんて聞いたら悲しむかもしれないし。
それに、きょうはちょうど僕は佳子さんの彼氏役を任されていることもあるし。
そうか、きょうは言うのをやめよう。
僕はそんなことをグルグル考えていたため、
「だって」の次の言葉が出てこなかった。
すると佳子さんはすかさず「だって、何よ」と強気の発言をしてきた。
僕 「えっと、その」
僕は言うべきコメントがまとまっていなかった。
佳子「『えっと、その』では、回答になっていません。
ですので、ここは布団の距離は変えないことにします」
まずい、判定が出ちゃった。
また押し切られたよ。
僕はどうしていつも佳子さんに押し切られているんだ。
僕の中では、この押し切られるというのが、
おなじみの悩みになろうとしていた。
僕 「でも、まだ寝るの早いよね」
僕は少しでも抵抗しようとした。
すると佳子さんは別になんでもないという風な顔をして、言った。
佳子「そうね。じゃ、ちょっと飲もうか」
佳子さんはそう言って、部屋の隅にあるやや大きめの冷蔵庫を開けた。
僕はびっくりした。
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