第31話
佳子「ねえねえ、男性からしても、今のは失礼だよね」
僕 「あ、いえ、はい、そうですね」
佳子「でしょー、おじさま、うちの彼氏様に失礼なのよ」
じじ「はは」
佳子「彼に聞くことってほかにあるでしょ」
じじ「おお、そういえば、石井君は、どんなお仕事じゃったかな」
急に仕事の話を振られた。
僕 「はい。坂の上テレビで天気予報の仕事をしています」
じじ「天気予報。予報官かの」
僕 「いえ、あのう、予報官ではなくて予報士です」
じじ「予報士」
僕 「はい」
じじ「この箱根は天気が変わりやすくてなあ。天気予報は大事でな」
僕 「はい」
じじ「明日はどうかな」
僕 「はい。はじめ雲が広がりやすいと思いますが、そのうち晴れてくると思います」
じじ「おう、それはよかった」
そういって、おじさんはコップ酒をがぶりと飲んだ。
じじ「あんた方の人生も、そうであると、いいな」
おじさんは、なんだか意味深なことを言った。
おじさんは、何が言いたいのだろう。
僕にはわからなかった。
すると、佳子さんがまた話題を変えた。
佳子「そうね。ああ、彼、テレビで仕事しているから番組にも詳しいのよ」
佳子さんが少し勝手なことを言った。
あの、僕、天気予報をやるために坂の上にいるだけで、番組には詳しくありません。
番組のことは編成の人じゃないとわからないので。
僕はそう言おうとした。すると、おじさんが先に口を開いた。
じじ「そうか。そういえば去年の紅白のことじゃが」
あの、それ、他局なんですけど。
でも、他局でありながら僕が唯一詳しい番組も紅白なので、黙って話を聞くことにした。
じじ「なんであんなに、歌が始まる前にいろいろ説明するのかのう。
歌にたどり着くまでが長いぞ」
僕 「あ、それは、今の時代が、説明しないといけない時代だからだと思います」
じじ「なんでそんなふうになったんじゃろうな」
僕 「昔だったら、説明しなくても、みんな知っている歌というのがたくさんありました。
でも、今は若い人しか知らない、年寄りの人しか知らない歌が多くなっています。
それに、意味とか背景とかが複雑になってきているから、
説明しないとわからないし、説明する責任ということも言われています。
だから、説明するんじゃないかと思います」
じじ「面倒くさい世の中じゃのお」
僕 「はい」
じじ「そもそも説明しなくてもすごくはやる歌がありゃいいんじゃないか。
ワシが若かったころは説明しなくても、
イントロ聞いただけでみんなわーっとなる歌がいっぱいあったぞ。
なんでそういう歌がないんじゃ」
僕 「そうですね。おそらくですが」
僕は普段思っていることを話し始めた。
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