第十七話【私、にんにん】
「女神さま、ちと相談があるですじゃ」
ある日の朝、プルーム村長に呼び止められた。
「なにかしら?」
「実は猟師連中と話し合ったんですじゃが、ダーク様のおかげで大分腕も上がったので、ぜひ村の守りは任せてダーク様のするべき狩りをして欲しいですじゃ」
そういえば、最近のダークは大忙しだったわね。
「鉄の武器もいただいたですじゃと、猟師らも喜んどりますじゃ」
「そうか、装備も大分充実したわよね」
もともと彼らは毛皮の服だったが、現在はオレンジの作った究極の毛皮の服だ。
あ、私の革の服とは違って毛がしっかり残った物よ。
さらに青銅のナイフなども配布しているので、今までと段違いの効率で狩りが出来るようだ。獣の解体に大活躍しているらしい。
私は見てないけどね。
また、ダークの特訓で何度か組織的に村人だけでゴブリンの小団体も倒しているらしい。
私の守りはブルーがいるだけで鉄壁だけど、村人全員となると、タイミングによっては怪しいだろう。
だが、かれらが自立心を持つことは良いことだ。
「ありがとう。じゃあそうさせてもらうわね。食料は充分あるから、猟師さんたちに無茶させちゃだめよ?」
「わかっとりますじゃ」
もともと彼らたちだけでやってたのだから、大丈夫だろう。
私はダークを呼び出す。
「……」
「ねえダーク。しばらく魔核集めに専念して欲しいんだけど大丈夫?」
無言で頷くダーク。
「……一週間」
「えっと、一週間戻れないって事で良いのよね?」
再び頷くダーク。
……もう少し社交性を持たせた方が良かったかしら?
「わかったわ。じゃあお願いするわね」
三度頷くとスルリとジャングルへと消えるダーク。
彼女なら任せておけば安心ね。
そうそう。
野生動物みたいに生態バランスを考える必要は無いわ。
ダークの手助けが無くなっても、猟師さんたちは、しっかり獲物を仕留めてきたわ。
前よりも効率が上がったようで何よりね。
◆
「それでは今から新たなメイド人形を生み出します」
自宅である神殿に移転された万能魔方陣。
それ専用の部屋があるのだけれど、今はそこにいる。
「いい? プラッツ君とレイムさんはよく見ておいてね。術式を教えることは出来ないけど、勉強になるからね」
「お、おう」
「よろしくお願いしますミレーヌ様」
「じゃあ始めるわ」
まずは獣の肉を変質させて素体を作る。
その時点で二人は身を乗り出すほど驚いてた。
「じゃあ、よく見ててね。……
ぴかーっと魔力光をまき散らすと、魔方陣の上に、黒曜石のような艶のある黒髪の……ロリっ娘が姿を表した。
全裸で。
「おおぅ……」
「……あー、プラッツ君。前言撤回するわね。回れ右」
「え……ああぅお!? みっ! 見てないからな! 見ろって言ったアンタが悪いんだぞ!?」
「プラッツ……」
まぁそうよね。ちょっと悪かったわ。でもダメな物はダメよ。
「ブルー、服を着せてあげて」
「了解しました」
「さて、名前だけど……ブラックだとダークと被っちゃうわね。そうね……シノブにしましょう。東の言葉で隠れるとかいう意味があるらしいわ。今日からあなたはシノブよ」
「了解でござる! にんにん!」
シノブが子供特有の声で可愛く答えた。
いざという時、敵を油断させるために子供型なのだ。
濃紺に染められた革のビキニに、毛皮のマントを着ると、横に置かれた2本の黒い短刀を腰に差す。
「もう良いわよ、プラッツ君」
「お、おう」
「可愛いですね」
「そうでしょ。私の作るものは常に美しくなきゃね!」
「照れるでござるよにんにん」
……狩猟型のダークよりおしゃべりな偵察密偵型ってのも凄いわよね。
ダークが無口すぎるだけかしら?
「じゃあブルーに現在の情報を良く聞いてね。明日にでも偵察に出てもらうから」
「了解でござる! にんにん!」
「なんか変なしゃべり方だな」
「よく知らないんだけど、お呪いよ。凄い密偵のしゃべり方なんだって聞いた事があるわ」
「ふーん? なんか逆に目立ちそうだけど」
珍しくプラッツ君が正しい意見を言っているわね。
でも、今までなぜかこれで大丈夫だったのよね。不思議だわ。
「でもこれでまたヴォルヴォッドの魔核が無くなっちゃったわね」
「本当は少し手持ちで持っておきたかったのですが」
「都の情報も大切よね?」
「はい。悩ましい所です」
小さい魔核ならまだ数があるから、大丈夫でしょう。
魔物が少ないに越したことは無いしね。
地脈のむき出しているところがあれば、魔物も沢山湧くんだけど。大抵は火山とか環境が悪い場所なのよねー。
「まあいいわ。村の人たちにもシノブを紹介しましょう」
「良いのですか?」
「良いのよ」
みんなで村に行って、シノブを紹介して回る。
戦争してるんじゃないもの。シノブにも幸せになって欲しいわ。
ふと、作物を収穫したグリーンが戻って来たのだが、気になることがあった。
「ねぇ、グリーンの分の革の服はまだ出来ないの?」
「いえ、完成してはいるのですが……」
「? グリーン! 服が完成しているらしいわよ!?」
「あーミレーヌ様ー。いいんですー。私これ気に入ってますからー」
「え?
「はいー。なんか落ち着くんですー」
「そ……そう。あなたがそれがいいならそれでいいわ」
「はいー」
そう言って持ち場に戻るグリーン。
葉っぱのビキニで。
うん。ファッションは自由よね。
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