312 鉱山へ行こう




 キアヒたちはしばらくルシエラで遊んで過ごすというので――ニーバリ領の件でかなりの報奨金を得たらしい――特に急いで彼等と会う予定を入れなくてもよさそうだ。シウは普段通りの生活を続けることにする。

 実はかねてからロトスと約束していた、シアン国での鉱石探しに行くのだ。

「マジ!? やったー!!」

 ロトスの喜びようは大きく、こんなことならもっと早くに行けば良かったと思うほどだった。


 火の日は授業があるので、水の日の生産を休むことにして出掛けた。

 アントレーネは興味がないと言うし、ククールスも平日はのんびりしたいだろうから置いていく。

 レオンはもちろん授業なので、シウとロトス、フェレスたちで転移した。


 まずはタール街の北にある、プルプァという鉱山の麓に転移する。

 シアン国の王都シシリアーナが近いけれど、そちらへ寄る予定はない。

 まずは麓の町の近くに《転移》して、《感覚転移》で様子を確認する。町の出入りは自由のようだった。

 そのため、シウたちは冒険者の格好で町へ入る。

 プルプァには鉱山が幾つも存在し、一般人でも入山料を払うと採掘できる場所もある。先に登録する必要があるとククールスに聞いていたので町に来てみたのだ。それに、町で売られている宝石を確認しておきたかった。

 この町では原石のやり取りが多いものの、カット済みの商品を売る店もあった。

 幾つか並ぶうちの一つに足を止める。頑丈な結界の張られたガラス越しに、シウたちは宝石を眺めた。

 すると、フェレスたちが窓に張り付いて見始める。

「……ロトス、涎が出てるよ」

「えっ、マジかよ! マジだわ!」

 子供みたいにガラスへへばりつくので中にいた店員が苦笑いだ。

 騎獣を連れた、冒険者としても良いものを着ているシウである。店員は躊躇うことなく中へ入れてくれた。一緒に入ろうとしたフェレスとブランカには待てをする。二頭とも大変ショックを受けた顔になっていた。でも仕方ない。彼等は大きいのだ。しょんぼりする二頭には後でご褒美をあげよう。


 シウは店員と話をしながら、小粒で良さそうなものを幾つか購入した。

「あの子たちにあげようと思うので、石だけというのは有難いです」

「ほほう。それで、こちらに。確かに王都やタール街ですと、台座に取り付けているものがほとんどですからな」

「原石でも欲しいので、入山しようと思ってるんです」

「いや、あまり良いものは出ませんぞ?」

 廃鉱扱いの鉱山を一般用に開いているようだ。けれども、こちらには魔法がある。

 勝手に採掘するのは気が引けていたので、入山料を払ってできるというのは魅力的だった。

「これも記念なので。せっかく来ましたし」

「そうですか。ああ、しかし、北側へは入らないように。入山の際にも注意事項として説明がありますが、あちらは現在稼動中の中でも特に規模が大きいのではと期待されている場所です。試掘を始めていますが、予想と違ってまだ出てこないのでピリピリしてますよ。ははは。あ、入って良いのは黄色いロープを張った、東側の土地ですからね」

 店員は他にも「赤ならば、より真っ赤に輝くものが人気がある」と教えてくれた。

 色合いを描いたものだけでなく、現物も並べて見せてくれる。

「見本用の石で小粒ですがね。お客さんにお見せするのに用意してるんですよ」

 グラデーションになって綺麗だ。

 シウはピンクでも可愛いと思うが、店員によれば赤なら赤とはっきりした色合いが好まれるそうだ。また、紫は、より濃いものが価値があるらしい。

 原石の見方も教えてくれ大変勉強になった。

 もし見付けてカットしたいというのなら持ち込みも可能とのことだった。

 とはいえ、シウは生産魔法持ちだ。カットの仕方をそれとなく聞いたことだし、自分でやろうと思っている。


 外に出ると、フェレスとブランカがじゃっかん拗ねていた。

 クロだけ中に入ったので、彼は悪いと思ったのか二頭に踊って誤魔化していたのが可愛かった。

 とりあえず二頭には買ったばかりの石を見せる。

「ほら、これをふたりに買ってきたんだよ」

「にゃっ!!」

「ぎゃぅ!!」

 途端に機嫌が治った。

「単純だな、お前ら」

 などと言って大人ぶるロトスの眼の前に、小粒の石を見せる。

「……くっ、俺としたことが」

 石に視線を持っていかれてロトスは呻いていたけれど、シウがはいと渡すと素直に受け取っていた。クロにも渡すと「きゅぃきゅぃ」鳴いて喜んでいる。

 彼等希少獣には抗いがたい魅力が、宝石にはあるのだった。



 宝石屋の店員が教えてくれた鉱山ギルドへ行き、入山料を払って山へ入る。

 雪が積もっているものの、採掘は国の一大事業だけあって、道路は常に雪かきがされていた。

 魔石を使った魔道具もあちこちにあり、馬車もよく通っている。

 シウたちは騎獣があるので乗らなかったが一般人用の馬車も時折走っていた。

 今は真冬でシーズンではないからか、一般人の採掘参加者は少ないようだった。


 一般に割り当てられた黄色いロープのところへ到着すると、早速潜ってみた。

 鉱山ギルドで注意は受けているので、問題はない。入り口に兵士が立ってチェックしているのみだ。

 地図も買ってきたので、鉱山がどこまで続いているのかも分かる。

「なあ、シウ。闇雲に探すの?」

「まさか。《探知》するよ」

「おお」

「ちゃんと、北側じゃないところを探索してるから」

「持つべきものは心の友よ!」

「はいはい」

 時折、一般の採掘者と出会う。冬の今、こんなところにいるのは暇な冒険者か一攫千金を狙って止めるに止められない人らしい。

 前者は挨拶をするが、後者は一心不乱だ。

「ギャンブルみたいなもんかね。こわいこわい」

「お店でのロトスの目つきも怖かったけどね」

「しょーがねーだろー!! 本能なんだもん!!」

 無駄口を叩きながらも、目的地は分かっているので速度は早い。走るように進むので――というよりも走っていた方が多かったため――あっという間に突き当りへ到着した。

「これ、端?」

「そうそう。東の一番端」

「この先?」

「うん。この先、二十キロメートル」

「……待て。待てよ、おい」

「東側はセーフだって」

「おっ前なぁ!」

 突っ込んでくるけれど、ロトスの顔はにやけている。いや、どんどん締りが悪くなってきた。

「でへへ」

「言質は取った」

「おぬしも悪よのう」

「まあね。一応、大きい鉱床だから発見したという報告は入れとくよ。だったら、少しぐらい良いよね」

「鉱床発見したら権利者になるもんな。って、権利者にはならないのか?」

「嫌だよ。第一、ここまで来たことがバレる」

「あ、そっか。そうだな」

「報告の時は認識阻害かけるか、ロトスに頼もうかな」

「うっしゃ。任せとけ。俺の阻害が火を噴くぜ」

「……噴いたら困るんじゃないかな?」

「ちっ。このネタはまだ教えてなかったか。まあいいの。そういうものなの」

 いつもの冗談らしい。シウは適当に流して、穴を掘り始めた。

 もちろん魔法である。

 岩石魔法でサクサクと掘り進み、落盤しないよう《固定》していく。掘った石そのものは面倒なので空間庫に入れていった。いつか何かに使えるだろうから、綺麗に《成形》して切り取っていく。

 ただ、穴自体は自然に掘ったように細工した。まさか四角く掘るなどしたら、何事かと思われてしまう。

 どこまで採掘路を把握しているかは分からないが、せめて最低限の工作はしておくつもりだ。











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「魔法使いで引きこもり?」の四巻発売が決定しました。

詳細はまだですが、分かり次第順次近況ノートに発表していきます。

これも皆様のおかげです。ありがとうございます。


なお、三巻絶賛発売中です。(自分で絶賛と書く勇気)

よろしくお願いします!


「魔法使いで引きこもり?3 ~モフモフと飛び立つ異世界の空~」

出版社: KADOKAWA (2018/10/30)

ISBN-13: 978-4047353664

イラスト: 戸部淑先生


辺境伯領での出来事、フェレスの飛行訓練、学祭の一コマと少年たちの楽しい合宿風景がてんこ盛りです。

キリク視点の番外編もございます。ちょっぴり、とある人のことも描かれていますので次巻につながるエピソードの前フリとして楽しんでいただけるのではないかと愚行する次第です。






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