272 共通の話題と苦労性と小煩い男の話




 レオンに、馴染むの早いねーとシウが言ったら、

「そりゃそうだろ。養護施設育ちなんだからさ。周りと上手くやれなきゃ、生きづらい」

「なるほど」

「お前、まるっきり一人っ子っぽいもんな」

 しかも爺様に育てられた。山奥の誰もいないところでひっそりと。

 アガタ村にはたまにしか降りなかったから、同じ年頃の子と遊んだ記憶もない。

「自由に動きすぎ。やりたい放題やってるみたいだし」

「スサから聞いたんだっけ?」

「詳しく聞いたぞ。それがみんな嬉しそうに話すからな。あれはダメだ。人をダメにする。甘やかされてるな、シウ」

「う、うん、そうだよね」

「でも、いいんじゃないのか。カスパル様が許してくれてるんだから」

「えーと、そうだね」

「俺も、そのおかげで下宿させてもらってるわけだしな」

 レオンと話していたら、またプルウィアが邪魔しにきた。

「今日はシウ特製のご飯はないの?」

 みんな食堂のメニューを頼んでいるが、シウが提供するおかずも楽しみにしているのだ。レオンとの話に夢中で、そう言えば出していなかったと慌てて取り出す。

「魚介類の唐揚げと、里芋コロッケだよ。ホウレンソウのソースと、サラダには人参ドレッシングね」

 唐揚げ類は人気があるので、皆が取っていった。里芋は嫌いな子もいるようで、減りが遅い。レオンは取っていた。

「養護施設だと、それぞれにちゃんと分けてあるんだけど、どこか物足りなくてさ。余ったら皆で奪い合い。絶対残さないんだ」

「そうなんだ。なんだか楽しそうだね」

「まあ、今思うとな」

 当時はいろいろあったのだと、しみじみ語る。

 その横にプルウィアが座り、取り分けていた。彼女は青菜系が苦手なので、できれば避けたいらしい。

「プルウィア、ちゃんと食べないと」

「分かってるわよ。シウのは、美味しいから食べるわ。……食べるわ」

 じとっと見ていたせいか、二度も同じことを言い、もそもそとサラダを食べていた。シウに声を掛けたことを後悔しているような雰囲気だ。

「あ、レオン。彼女はプルウィアで、隣にいるのがレウィスだよ。レウィス、久しぶりだね~」

 プルウィアのパートナー、小型希少獣のレウィスとは時間がなくてまだちゃんと挨拶していなかった。プルウィアはいつも忙しそうだし、なかなかゆっくり話せないのだ。

 だから嬉しくて挨拶していたのだが、プルウィアから変な目で見られた。

「わたしよりレウィスに『久しぶり』ですって。相変わらずね、シウ」

「あ、ごめんね? 久しぶり、プルウィア」

「そうよ、久しぶりなの。それなのに、先輩方が卒業したって聞いても『あ、そうなんですか』で済ませちゃって」

「シウはそういうところあるな」

「あるわね」

 レオンとプルウィアは初対面っぽいのに、意気投合していた。主にシウのことで。

「こいつ、ふんわりして誰とでも仲良くなるわりには、人との付き合いが淡泊だからな」

「あ、それ分かるわ。深く付き合いたくないのかな、って思わせるの」

「やっぱりな。友達にさ、そういうの気にしてたヤツもいて」

「そうなの? その人、大丈夫なのかしら」

「まあ、そいつ単純だし、すぐにケロッとしてたけど。だからこいつとずっと友達やれてるんだと思う」

「そうなんだ。シウとの友人付き合いって案外気楽に考えてる方がいいのかもね」

「そうだな」

 シウが口を挟む余地がなく、黙って聞いてしまった。

 もしかして今日は、シウにとってあまり良い日ではなかったのだろうか。

 でも、友人同士が仲良くなっていくのは気分がいい。

 良かったなあと微笑んで見ていたら、何故か二人に白い目で見られてしまった。


 昼休みが終わる頃、クレールから話があった。

「同郷人会?」

「今年もやろうという話があってね。というか年に数回はあるんだけど、シウはあちこち行ってるから」

 苦笑して、クレールが続けた。

「エドヴァルドが主催でやるから、来てほしいそうだよ。カスパルに声を掛けてくれるかい。あ、レオン君ももちろん来てくれると嬉しい」

「分かった。言っておく。招待状はレオンも僕もブラード家だから」

「伝えておくよ。ええと、それとね――」

 より小声になったので、これからが本題だろう。

「王女殿下にも送って良いものだろうか?」

「いいと思うよ。なんだったら、僕から先に聞いておこうか?」

「……君、やっぱり王女殿下とお知り合いなんだね」

「うん」

 そんな噂があるのだと、彼は言った。

「全く君って人は……。でも、じゃあ、そちらはお願いするよ。あとはドルフガレン侯爵のところの二番目か。そちらはエドヴァルドからにしてもらうとしよう」

 クレールは相変わらず、面倒臭い役どころをやっている。彼みたいな人は生徒会にピッタリだと思うが、入っていないようだ。

 何故なのか聞いてみたら、もう懲り懲りらしい。

 それに授業で一緒のプルウィアから愚痴を零され、何故かその元凶の生徒会に誘われ、嫌になったそうだ。

「難儀だねえ」

「まあね」

 そんなわけで、同郷人会の事務的なことはやるが、それ以外は勉学に励むとのことだった。

 カスパルのように、スッパリ断れないのも、彼らしいなと思う。

 カスパルは、クレールのことをなんでも引き受けてしまう物好きだと言っているし、クレールからすればカスパルは飄々としていて実態のない何かのような感じでいるらしい。

「じゃあ、日程を詰めて、また連絡する。王女殿下にはくれぐれもよろしく頼むよ」

「了解です」

 クレールはその足で、また別の生徒へ声を掛けに向かった。

 彼はたぶん、ずっとそういう性格なのだろう。



 午後、図書館でまた時間を過ごした。

 二年度生以上の生徒がチラホラ見えるが、やっぱり初年度生は来ていない。

 中央の天窓下も、シウの貸し切り状態だ。

 雨や雪が降っていても、やはり天窓からの自然の光は明るく美しい。

 今日も雪が降っていたが、柔らかい光をテーブルや床に落としている。

 ここで本を読むのが、幸せだなあと思う。

 やがて、静かな世界に入り込む。

 すうっと息を吐いたら、時間が経っていた。

 集中したなと思って顔を上げたら、全方位探索に引っかかった。カルロッテが来たようだ。

 見ていると、受付を済ませてから歩き出し、中央の席にいるシウに気付いたようだった。手を振ると、彼女もまた小さく手を振った。


 時間割を絞り込んでいるというカルロッテにアドバイスしながら、同郷人会の話をした。

 アビスとマリエッタにも相談してみたが、どちらも了承だ。本人も「本当にわたくしが行ってもいいのですか?」と嬉しそうだったので、エドヴァルドに伝えておくと請け負った。

「庶民も来るので、本格的なパーティーじゃないですよ? こちらこそ、いいですか?」

「ええ。わたくしもその方が気楽です。……実は本格的なパーティーは苦手なんです」

「そうなんですか?」

「王族なのに変だと思うでしょう? でも、あまり楽しいと思ったことがなくて」

 豪華過ぎたり、上辺を飾った言葉の応酬が疲れるのだそうだ。

 シウも分かるので、頷いた。

「馬車は回してくれるはずです。去年も確か、そうしていたはずだから」

「そうなのですか」

「ドレスも本格的な夜会用じゃなくていいみたいです。もし心配なら聞いておきますが」

「いえ、女性宛の招待状には服装の決まりごとはしっかりと書かれているはずよ。ありがとう」

 その後は、講義の進み方や気を付けるべきことなどを話して時間は過ぎた。

 また、アルゲオとも同じクラスらしいので、彼を頼るのも良いと勧めておいた。

 アルゲオは紳士だし、マナーも確かだ。

 アビスは心配そうだったが、アルゲオに限って下心などないと、シウは断言しておいた。

 彼なら、従者など十分に用意して二人っきりにならないような配慮をするだろうし、決してカルロッテが困ることはしない。

 シウに、大変厳しくマナーを教え込んだ男である。

 間違いなんて起こしようがないのだ。





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6月30日に拙作、

「魔法使いで引きこもり?」二巻が発売されました。

どうぞ、書籍の方もよろしくお願い申し上げます。


以下、本屋さんでのご注文に際して必要な情報です。

「魔法使いで引きこもり?2 ~モフモフと学ぶ魔法学校生活~」

出版社: KADOKAWA

ISBN-13: 978-4047352254


宣伝続けてますが、もう少しだけお付き合いください。うざたんだなーと思われたら「**********」マーク見えたらそっ閉じでお願いします。

お手数かけます。





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