222 温泉騒動とツノ猫鞄の出来




 お風呂はやっぱり時間のある食後と決まり、お酒は禁止となった。

 皆が気になるのか、食事は大変な勢いで始まり、終わった。

「さあ、行くぞ!」

 と、ぞろぞろ集まって進むが、そんなに一度に入れない。

 何組かに分けて入ることを提案し、残った者たちは風呂場の近くで魔法の勉強をやることになった。

 その為、風呂場の建物から続く休憩場所を広げることにした。

 魔法でちゃっちゃと整地、固めてから土台を作り上げ、空間庫にある木々を取り出して加工し、立ててしまった。壁はないが、屋根付きの休憩場所だ。

 ちゃんとテーブルや椅子も木で作った。

「……ていうか、シウ、やることすごすぎね?」

「あ、急いでたから、つい。隠すの忘れてた」

「チートめ」

「まあまあ。あ、こっちどうぞ」

 唖然としていた竜人族たちも、ロトスが「あれ別格だから。あれ普通と思ったらダメだから。気にしないで」と謎のフォローをしてくれたので、気を取り直していた。


 お風呂は最初はおっかなびっくりだった人たちも、やがて温かい湯が気持ちいいとはしゃぎ始めた。

 女性陣はアントレーネの指導で入っているが、壁の向こうから楽しげな声が聞こえてくるだけで騒いでいないようだ。

 洗い粉も持ってきているので「あわあわだー」という高い声が聞こえてくるのみ。

 振り返ってみると、男性陣は泳いだり飛び込んだりと、なかなかに激しい。

 湯あたりだけはしないようにと注意して、シウはそうそうに風呂から上がった。

 家族風呂の方ではアエスタースとアプリーリスが子供を入れてくれていた。ひょいと顔を出して、シウを見るや手招きされた。

「この子たち、拭いてあげてー」

「はあ」

「あ、一緒に入る?」

「もう入ったから……」

 というより、シウも立派に成人男性なのだが。

 割としっかり見えているのに、二人は気にしていない様子で子供二人を押し付けてきた。

 いいのかなあと思いつつ、受け取って、その場で拭いてあげた。

「アウルは、自分でもできそうだね」

「うん」

 というので髪の毛は自分で拭いてもらう。魔法での乾燥は便利なのだが、頼りすぎると後で困るだろうから今は布で拭く。

「ソノールスも綺麗になったね」

「きれい!」

「お風呂、気持ち良かった?」

「ぽかぽかなの」

「そっかあ。良かったね」

「アウルもー」

「アウルもお姉さんたちに綺麗にしてもらって良かったね」

 よしよしと撫でていると、女性用の風呂場から呼ばれた。

「シウー。ごめん、赤ちゃんたちを頼めないかなあ。レーネが頭を洗ってくれるっていうから」

「はいはい」

「入ってきてー」

 えー。それはアリなのかなあ。

 でもまあ、シウのことを男として意識していないってことだろうから、文句を言うのは止めた。


 女性の方も、男性に劣らずやりたい放題だった。

 何とは言わないが。

 シウは目を半分に閉じて、赤子三人を受け取るやすぐさま外に出てきた。それが賢い男の選択だ。

 赤子たちはお風呂に入ってちょっぴりおとなしくなっていた。

 眠いのもあるだろうし静かだ。

 歩かせるのも可哀想だが、持てるのは二人までだったので、比較的元気なカティフェスに歩いてもらった。

 休憩所まで頑張ってくれて、そこで座り込んでしまったが。

「お疲れ様ー。はい、体を拭いてから横になろうね」

「あうー」

「よしよし」

 パジャマも着せてしまうと、後は絨毯の上に転がした。次はマルガリタだ。ちゃっちゃと仕上げて寝転がし、ガリファロはもうスースーと寝息まで出ていたのでそろっと拭いて着替えさせると子供用ごろ寝クッションを取り出して寝かせる。他の子もウトウトしてき始めたから次々に取り出して、置いていった。

 結局アウレアも保たずにダウンしたので寝かせたところで、ロトスが出てきた。

 狙っていたのかと思うタイミングだった。


 ちなみにロトスが出てきた理由はこれだ。

「女子風呂から、シウの声が聞こえてさあ。えー、それはダメだろってリングアが言い出して、偵察行って来いって言われたの」

「素直に聞いて出てきたんだ?」

「うんにゃ。みんな長風呂過ぎて付き合いきれないから、逃げてきた」

 これ幸いと逃げ出したようだ。

「大体、俺、ムキムキの人はタイプじゃねーもん」

「ふうん」

「あと、年上ばっかだしー」

「年上女性もいいって、前に言ってたのに」

「……好みの場合はね!」

 とにかく、竜人族の女性は好みから外れているということらしい。

「まあ、いいけど。あ、風呂上がりのコーヒー牛乳飲む?」

「マジ? 飲む飲む」

 子供二人にも水分を与えたが、赤子三人は寝てしまったので飲ませていない。後で借り家に戻った時でも飲ませないとなーと考えながら、他の人のために飲み物サーバーを用意して置いた。

「俺、お風呂屋さん行って風呂上がりに飲むのは断然コーヒー牛乳派」

「他に何かあるの?」

「フルーツ牛乳派とか。イチゴ・オレ派もいたな。邪道バージョンとして、アイスな」

「アイスかあ」

「あ、シウは邪道派かよ!」

「僕はシンプルに牛乳だったけど」

「わーお。これだから、爺ちゃんは!」

 なんでだよ、と笑っていたらようやくチラホラと風呂場から出てきた。

 飲み物あるよと行ったら、男性も女性も老いも若きも喜んで群がっている。

 なかなかに楽しい、温泉騒動だった。


 翌日、風呂場には「長湯禁止」「走らない」「暴れない」との注意書きが貼られていた。




 金の日は、午前中はアウレアの鞄を仕上げるのに費やした。

 遊びに行っていいよと言っているのに、見ていたいと残って、それから一緒になって何か作り始めた。針は危ないので、粘土を渡すと一生懸命なにやら捏ねている。

 完成したのは同時で、何を作ったのと聞いたら、クロだった。

「クロなんだ。すごいねえ」

 どう見てもバナナにしか見えないのだが、クロらしい。言わなくて良かった。

「はい、鞄。どうかな」

「わああ!! すごい!! シウ、すごいね!! かわいい、とってもかわいいの!!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねて、アウレアらしくもない、はしゃぎようだった。

 可愛いと抱き締めて、それからまた離しては鞄を見つめる。それだけ喜んでくれたら、こちらも嬉しい。

「ちょっと背負ってみてね。大丈夫かな。どこか痛くない?」

「いたくないよ」

「大丈夫そう、かな。よし」

 角のある猫が描かれた鞄は、まあそれなりに、目立ちはするがまだマシだなと思う。

 アウレアは背負った鞄を見るように何度も振り返って、身を捩る。

「えへー。えへへ」

「可愛いね」

 と褒めたら、またぴょんと飛び跳ね、そしてシウに抱きついた。

「だいすき!!」

 そう言うと、土間に駆け下りて、振り返った。

「みせてくるね!!」

 そう言うや、走り出してしまった。ちゃんと靴を履いていったのでいいが、土間に降りた時は素足だったので慌ててしまった。

 魔法を使ってないし、気にしすぎなのは分かっているが、普段の行いが大事なので後で言っておこう。

 それにしてもあんなに喜んでもらえるとは思わなかった。

 良いことをしたなーと、自画自賛していたシウだが。


 アウレアは、里の皆に首を傾げながら曖昧な笑みで褒められるという目に遭ったようだった。






**********

宣伝のためのあとがきが付きますので、うげげな方は飛ばしてね!



宣伝だす。

このお話の始まりとなる、

『魔法使いで引きこもり?』が

発売されました!!


KADOKAWAさんより、2018/02/28 出版!

・魔法使いで引きこもり? ~モフモフ以外とも心を通わせよう物語~

・ISBN-13: 978-4047350113

・イラスト 戸部 淑 先生

となります。


番外編『フェレスの大冒険』も付いています。

どうぞ、よろしくお願いします。


しつこいよね。ごめんね! _(._.)_



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