第121話 クマとの邂逅。そして
「今日はここで泊まろうぜ」
馬車を走らせたテリオが声をかける。見れば空も赤みを帯びてきていた。暗くなる前に町を見つけられたのは僥倖だった。2メートル程の高さの外壁に囲まれた、これまででも大きめの部類に入る町だ。安心感は段違いね。で、そんな町で宿を探してきたオレたちなんだけどさ。
「…なんだろねー。さっきからムカつく視線を感じるのよ。気分悪いわー」
そう、ホルンと一緒に周ったんだが町のあちこちで胡乱な視線を何度か浴びたんだよね。
「…あー、トランさんたちは知らなかったんですね。この町は少し東に進むとアクアリア聖教国がありましてね、アクアリア聖堂教会の中枢なんですよ。で、必然的に【
「あー、なるほどね。
…
…あ!じゃあさっき宿を断られたのも…」
「ふぅ、やっぱりそうですか。
町から少し離れた先にテントを張るのに最適な場所がありますので、そこまで行きましょう」
そう言う困った顔したノベルさんとは対象的に、
「差別とかクソだな」
「くだらねえ思想を持ち込みやがって」
「死ねばいいんですよ」
と憤るテリオ、ナバル、ナナイの3人。
アレ?ナナイさんちょっと怖いよ?
ともかくオレ達は外壁の恩恵にあづかれないらしい。この辺の魔物で脅威なのもいないけどね。
「じゃあナバルとテリオで買い出し頼むよ。オレ達は泊まる準備しとくから。場所は…オレの魔力でも
「…そいつが良さそうだな」
「ま、適当に見繕っとくさ」
不愉快全開のナバルに、気を紛らわそうと明るく応えるテリオ。
そんなこんなで町の外れの広場に馬車を停め、ねぐら用の準備と調理器具を広げる。
「さて、今日の晩飯は何にしようかな。ナナイとホルンはリクエストある?」
「肌寒くなってきたからシチューなんてどぉかな?」
「シチュー!ホルンもシチューがいいニャ!」
「じゃそれで」
今回の
そんなパワフルな竜馬を調理しながらチラ見するとホルンがリンゴもどきの【リンガ】をあげてた。モドキも何も名前が違うだけなんだけどね。
「こっちは煮えたら終わりだな」
フランスパンモドキに切り込みを入れて、薄くスライスしたフォレストバイソンのローストビーフをレタスと一緒に挟む
食材なんかの補充分は今ナバルたちが買い足してるから、あとは…と考えてると視線を感じた。
ここはキャンプ地のようなものでオレたち以外のパーティーも夜営の準備をしている。だからナイスボディのオレに見とれはのも仕方ないわけで(大いなる勘違い)。
ふと見上げるとひょろい魔術師ルックのメガネボーイが唖然としてこちらを見ている。気になったのは彼が持ってる木製の杖だ。あの形はまさか…。
「『エックスサーチ』」
魔力の受信部は…指から受けたトリガーが内部の基部に接触して発動するタイプの魔術具。そう、それは【ライフル】の形をしているのだ。この少年まさか…。
少年は驚いた顔をしてこちらを見ている。オレは鍋をかき回しているだけで…腹へってんのか?
「へぇーい少年。一杯どうだい?クマの特製シチューは。サービスするぜ」
「…料理して、しかも喋ってるだと!」
…うん。この少年、ノリが良さそうだな。
「変わった杖を持ってるな。傭兵には見えねぇし、旅の冒険者かい?」
「あ、ああ。そうなんだ。そう言うクマさんもかい?」
「まぁな。これでも依頼に引っ張りだこでね。少年、君はこれから聖教国かな」
「いや、あそこには行きたくねぇな。なんか慌ただしいから近づかない方がいいんじゃないかな」
はぐらかすように答える少年。その反応は何か知ってるのバレバレなんだけどね。
「それは物騒だな。でもオレは獣人だから近寄らねぇよ。教皇は平等を訴えてるけど未だに
「ああ、それ聞いたなぁ。それで次の教皇がその【
「ちょっと待った!【次の教皇】?え?は?元々のジイサンどうしたのよ!」
「こっち来る途中で聞いたんだけど、人の良さそうな元々の教皇が意識不明で危ないからって次を立てたらしいよ。
こっち来る途中もデルなんとか公爵が襲われてたし」
デルなんとか?…デルマイユ公!!おいおい!それってオルレンの町であったギルドの協力者なんじゃ。
「その話、詳しく教えくれ」
少年の肩に手を掴み訪ねたのは買い出しから帰ったナバルだった。オレと同じ予感がしたのだろう真剣な目差しだ。テリオも珍しくマジ顔だ。
「我々も聞かせてもらえないか」
そう言ったのは黒装束の謎の軍団。怖えね何モンだよ。と思ったらそのなかにいる大男。確か…。
「カース、アンタもこっちに来てたのか」
「久しいな、ナバル・グラディス」
魔の森で出会った大男だ。コイツまた強くなったな。纏う魔力の圧が強くなってやがる。
「ナバル君、それにフォクロス辺境伯の方たちね。すれ違いにならなくて良かったわ」
そうまとめたのは金髪メイドの美少女だった。あれ?この子
「…シチュー少し焦げちゃった」
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