第109話 修練、交差する思惑
書けるときに書かないと止まりっぱなしになってまう(汗)
………………………
「…っよし!こんなものかな」
異世界に来た少年、
「この世界のゴーレムが俺の趣味にピッタリとか、もう運命だろ!プラモ最強かよ!」
・ゴーレム
魔力で造られた人口兵器。基本となる『核』となる素材を元に肉付けされた存在。
一般的には魔力と形となる術式を組み込んだ水晶を核とし土や岩石で全体の身体を作る。故に細かい動きをするゴーレムは、それだけ緻密な術式なため、高位の技術と高いセンスが求められる。
だが、拳次郎はその核そのものに細工を仕掛けた。細かい動きが出来る人形を核とし、身体はそれに沿うように錬成する。故に複雑な術式を用いずとも機敏な動きができるという事だった。
結果として『堅牢だが鈍重』な筈のゴーレムが『堅牢で機敏』な騎士甲冑へと姿を変えたのだ。それだけでも世界に誇れる偉業なのにテーブルの前には『フロントガラスの無いジープ』の模型がある。これをチートと言わずしてなんと言おう。
「…って言ってもあれだな。単純な術式って言っても、その都度、自分で書かなきゃならないのはめんどいな。それでいてムズイ。ゲームのプログラミングとかってのも、こんなに大変なのかな…あ!これじゃ右手が動かねぇ…」
教わる際にメモしたノートと、聖都アクアを出る前に買った魔術理論の本を睨みつつ、人形から展開された光る図面、『起動術式』を書き込む作業を続けた。そして…テントの外では火を囲み魔術師とメイドすがたの
「随分と凄惨な儀式を行っていたのですね。それでいて伝承とかけ離れ過ぎている」
「そ、そうなのですか?!」
「ええ、と言っても術者に命の危険はありますが。
本来は数名の術師による光と闇の属性の交差です。そのときに流れる魔力の渦に飲まれて亡くなることはありますが、精霊を融合させたキメラモドキなど前代未聞です。
…そうか、光属性と魔力と憎悪、それで無理やり扉を開けた…でもそんな事をすれば、呼ばれた彼らも無事では済まない」
メイドのラウラ言葉にますます顔色を青くする魔術師。「わ、私は…なんて事を…」とこぼすのを他所にメイドは少年が篭っているテントを見つめる。
(不動なる者…でしたか。絶対的な呪詛すら跳ね返す能力者。
どんな経験をすれば身につくのかしら)
この場に小グマがいれば「やめてあげて!」と涙ながらに止める事だろう。少年に聞けば号泣して泣き崩れるだろう。そんな危機的状況に気づくこともなく少年は術式に熱を上げていた。
…
……
………
『…というわけで『実験』は成功、あとは騎士団が何とかするでしょう。私たちはしばらく雲隠れしますが宜しいですね?』
「ええ、よくやってくれました。久しぶりの休暇だと思って羽を伸ばしてください」
『そうさせて頂きましょう。時にダート、あの副団長殿は我々の認識以上の怪物ですよ。敵に回すようなら私を巻き込まないでくださいね』
「フフフッ…安心してください。私とて自分が大事です。その様なことはしませんよ。ジギールにも伝えてください」
『ええ、ではまた』
プツッ…と接続が切れたことを確認するとダートはカップを一口つける。彼は今、聖都アクアのカフェテラスにいた。落ち着いた町並みを眺める彼のいる場所は閑散としていた。
懐に忍ばせている受信機から伸びる耳の装置を外すと、その中でふいに呟く。
「だ、そうですよ。大した活躍ではないですか」
ダートの後ろ、背中合わせに座る客は「フンッ」と言うや我感せずと一口すすった。
「お前の部下に恐れられるようなことはしていないはずだがな」
答えた男は私服姿の副団長デルフィス本人だった。今の2人を他の者が見ても休暇を楽しむ一般客にしか見えないだろう。
「『客』は相当の暴れ馬だとか。相変わらず反骨精神にあふれているのですか?」
「いや、最近は大人しく鍛錬に出ているな。何せ向こうには『魔法』が無いらしい。物珍しさから浮かれているのだろう。たまに色街に連れて行けとやかましいのが無ければコチラも文句はないのだがな」
心底疲れた顔をしボヤく副団長。苦笑いのダートは「
2人の気を抜いた会話の姿をハイドラが見たとしたら昇天しただろう。まるで『古い友人』と話しているような2人の姿は景色に溶け込んでいた。
「まぁ、10年を超える作戦だ、それもあと少し。くだらぬ事で頓挫させるわけにはいかぬ。
元々は『同僚』の頼みでもあるのだからな」
「そうですね…私これでも感謝してるんですよ?」
「それで…『あの方々』はなんと」
「姫はご満悦ですよ。何せ
「そうか。どのみち、あと一息か」
「ええ、あと一息です」
緩やかにその牙は研がれていく。恐ろしき策謀も美しき町並みに溶けていった。
………………………
隠してきたつもりですが流石にバレたかなぁ。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
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