その愛の色は、多分クリムゾン

鮮やかに描かれた情景。
複雑に入り組む人間心理。

ここまで細やかで丁寧な情景描写と心理描写は見たことが無かった。
また、情景に含まれる気候や植物の変化が、作中の人物の心理や状態を表しており、メタファーに理解のある者は、一層深い場所での感動を覚えることになる。

多くのキャラクターがストーリー上を駆け抜けながら、それぞれがそれぞれの信念を全うするために生きている。間違いなく、この作品の中には彼らの人生があった。
主人公・カツミは様々な人と出会い、助けられ、貶められ、信じ、騙され、死の淵のギリギリでそれでも生きていく。
削られ続けた生命は、いつしか輝きだし、『本当』に辿り着く。

ここに描かれた苦悩や葛藤は、物語ならではのものでありながら、しかし我々現代社会に生きる人々のそれと何ら変わりなく、それゆえ主人公の成長が何よりのカタルシスになっている。

タグに偽りなし。これは心理劇であり、成長譚だった。


タグと言えば、JUNEという女性向けな趣向のある作品であることを表すタグもある。私は最初気付かずに読み始めたわけだが、「ああ? え? おおお!?」と赤面してしまった。しかし、上述した通り、繊細で綿密な描写とメタファーの描き方が私の書き手としてのセンサーに触れ、どうあれ勉強のためには読むべき作品だという結論に達した。成長のための新たな扉を開けるべきだと感じた。(セクシャル方面での新たな扉を開けたわけではない)
実際、男の私が読んで、不快に感じるような描写は無かった。男性でも安心して見て頂けるだろうと思う。

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