ONE

作者 如月ふあ

愛を型抜きしようとすると、割れてしまいます

  • ★★★ Excellent!!!

 SFかつミリタリー風の味付けになっていますが、中身は間違いなく心理劇です。

 主要な登場人物全てが、大きくえぐれている心の欠片を埋めようとして近しい人に対してぎごちなくアクションを起こすんですが、それがイスカの嘴のごとく噛み合いません。自傷、自虐、他傷、征服……外見からはそれがとても愛情であるとは認識出来ないような感情の発露、行為であっても。それは、間違いなく愛情が出処なんです。

 かつて夏祭りの夜店でよく見られた、型抜きという遊戯をご存知でしょうか? 薄い板状の砂糖菓子に何かの形が描かれていて、その部分だけをきれいに切り離せれば景品がもらえるというやつです。
 本小説はそれによく似ています。誰もが、こういう愛が欲しいと型抜きを削り始めるんですが、結局割ってしまうんですよ。削り出すプロセスが丁寧であるかどうかは、必ずしも成否に関係しません。型抜きというのはそういうものなんです。
 割れたら終わりだと思ってしまえば、本小説の一部しか理解出来ません。削り出すという行為そのものではなく、取り出そうとした愛情の本質を見極められるか。それが、この小説の醍醐味だろうと思っています。

 著者が長い間かけて磨き込んできた主要人物群。主人公のカツミだけでなく、ジェイ、ロイ、フィーア、シド、ルシファー……。著者がそれぞれの人格に象徴させたものが読み取れれば、きっとあなたの嘆息を誘うことでしょう。ああ愛というのは、どのように割れ砕けてもそれでも愛なのだなと。

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★★★ Excellent!!!

大作、名作という表現では全く足りない、とても奥深く素晴らしい作品です。
過酷な境遇を背負い、自己を肯定できない主人公カツミが、ジェイというパートナーの支えによって自己を肯定し、他者を肯定し、過去を克… 続きを読む

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