『音無奏の声』編

隣席の彼女

『キーンコーン……』



これで一体何回目だろうか?

……いいや、多分まだ十回目だ。大した数じゃない。


この星丘魔法学園の授業にも慣れてきた、慣れてきたと信じたい所。

二日目の昼休憩、周りは学食やら弁当やらで騒々しい。



……あの決闘の後からは、誰も俺に絡んでこなくなった。

『裏口入学、卑怯者』……そんな事を言う者もいない。



が。



結局俺が避けられている真実は変わっていない。

軽蔑から、恐怖に変わっただけだ。



「……」



そういえば、この隣席の少女は変わりない。

ヘッドホンを着けて、ずっと同じ顔で居るように思う。

本当に不思議で、何を考えているか分からない。


教壇に置いてある座席表でチラッと名前を見たから分かるんだが……名前を音無奏。


名前からして、ヘッドホン着けてそうだもんな……



「なあ、聞こえてるか?」



俺は、隣席にそう声をかける。


いくら遮音性が高くたって、意外と人の声は聞こえるはずだ。



「……っ」



……ほんの少し、反応した。


唇を噛んで――俺から背くように、顔を俺でない方に向ける。


うーん。



「ごめんな」


嫌だったかな。


一言謝って、俺は彼女から目線を戻す。



―――――――――


―――――――




「……さて、と」



適当に買ったパンを食べ終わり、俺は鞄を探る。



「あったあった」



ミュージックプレイヤーとイヤホン。


前の学校でこんなモノ持ってきたら一発アウトだったが……『ここ』は別だ。


こちとら早すぎる授業スピードで脳みそパンクしそうなんだ――って事で。



「寝よ」



イヤホンを耳に突っ込んで、俺は机に寄り掛かる。

お気に入りの音楽を流しながら、意識を落としていった。



……ん?



そういや、音無もヘッドホン着けてるって事は音楽か何かを聴いてるって事だよな。


それを知れば……きっと、良い話のネタになる。話してくれるとは別として。自分が興味のある事なら食い付いてくる可能性はあるはずだ。



……これ、完全に盗聴なんだけど。



まあでも、悪用しようとしているわけではない。仲良くなりたいだけだから。セーフだよな?



……よし、やろう。

今のところ、友達になれそうなクラスメイトはこの隣席の彼女しかいないからな。


「ふう」



深呼吸。


俺は、イヤホンジャックを抜いて、それを音無に向ける。

まるでそれはアンテナの様に。


彼女が聞いている音を――そっくりそのまま俺の耳へ。



「……『同調』」



俺は、小さく能力のトリガーを引いた――

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