決着


 「アタシの正真正銘、最後の攻撃だ……受けれるもんなら受けてみな!」


 「……ああ」

 


彼は、その炎に逃げようともしない。


 煉を見据えて、立ち向かう。



「行くぜ、オラァ!!」


「――来いよ」



 彼に、迫りくる炎の刃。


煉の最後の攻撃は、空気を燃やしながら彼に向かう。


やがてその炎の刃が、彼の元に――



「らああああ!!」


「――っ」



『バリン』!、と。


 ――、ガラスの割れる音。

 それが、容赦なくこの決闘場に響き渡っていった。



「……くっ……アタシの、『焔』が――」




 全ての火が消えた、煉の姿。


そして未だ無傷の優生。


 まだ魔法は扱える――が、『焔』という彼女の切札を破られた今、『敗北』は決定した様なものだ。


 

「……んじゃ」


項垂れる彼女を背に、優生は黙って出口へと向かう。

元々勝敗なんてどうでも良かった彼は、立会人の宣言を待つ事などしない。



『終わった』。察した優生は、それだけ言って立ち去ろうとする。




「はあ、はあ……ま、待て、よ――立会人!!アタシの負けだ!宣言しろ!!」


「ひ、ひえっ!?わ、分かりました!!しょ、勝者――『碧優生』!!」



彼が出ていく前に――煉が叫び、立会人が慌ててそう宣言する。


彼女のプライドが、黙って出ていく彼を放さなかったのだ。

キッチリ勝敗は着ける……それが煉の決まりだった。



「……ったく、別にお前の勝ちでもよかったってのに」



出口の扉の前、彼は止まる。


「ざけんじゃねえ!アタシの攻撃を受けて、『無傷』でいたテメエが何を――」


「――残念ながら、それは違うぞ」



煉の最大の攻撃――『焔』を受けてなお、傷一つ付いていなかった。

プライドが折れた、その瞬間。



「――ああ!?さっきの雑魚共の攻撃も加えてってのが足りなかったのか!?」



彼女にしてみれば、これ以上の無い侮辱。

卑怯者の雑魚が集まった多勢と、自分が同じ様なものと捉えられているのだから。


しかし――『敗者』に、言葉を発する力なんてない事も分かっていた。


喧嘩においては、『勝者』が絶対――彼がそう思ったのなら、それを否定する事など出来ない。



「……はあ。出来るならこのままカッコつけて、帰りたかったんだがな」


「何を――」



彼女の方に振り返る優生。


そして――その、左腕を上げた。



「お前以外の三十人じゃ、こんな事には……絶対にならなかったさ」



彼女が見れば――確かに『焔』を受けた服の左腕の袖が、『斬れて』いた。


バッサリと、彼の新品の制服が。



「今まで右腕で防いだのを左腕に切り替えたのは――お前の最後の攻撃が不味いと思ったからだよ」


案の定それで破けちまったけどな……と笑って言う彼。


「な、何だよ、ソレ――」


彼女は優生に向けた顔を、地面へと向ける。

今の表情を、人に見せたくなかったから。


「お前の『焔』は、今まで右腕で受けてきたアイツらの、お前の……全ての攻撃よりも強かったって訳だ」


「……うっせーよ」


「はは、要らないお世話だったか?」



扉を開ける彼。


黙ってその背を見送る煉。



「じゃあな」



バタン、と扉が閉まる。


たった今――碧優生VS星丘生徒三十一名……その異例の決闘が、碧優生の勝利で終わったのだった。

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