決闘④


 ガランと、数秒前までとは打って変わった決闘場。


 今ここで――の決闘者が対峙していた。



「――何だ、お前は残るのか?」


「……アタシを、あんな腰抜け共と一緒にするんじゃねえよ」



 三十一名。


 たった一人、決闘場に残ったのは――『神楽煉』だった。



「どうして――最初から、その力を使わなかった?」



 問う彼女。


 当然の疑問だった。



「何でって……使う必要も無かったからだ、あとそんな『テンション』でも無かったからな」



「――チッ、そうかよ」



「……で?お前もどうして『あの時』攻撃しなかった」



 優生もまた疑問があった。


 煉がなぜあの中で、攻撃を行わなかったのか。



「卑怯、だろうが……アタシはそういうのが大っ嫌いなんだよ」


「へえ」



 煉は元々――彼と一対一でやるつもりだった。


ただこの学園に転入してきた――『碧優』の息子であるという噂の彼の実力を、測りたかっただけだったのだ。


 しかし舎弟である二人に決闘の申請を頼んだ所、『こんなこと』になっていた。



(……まさか、アタシがこんな状況になるなんてな)


 煉は心の中で嘆く。


 彼の不可思議な『防御魔法』――それは、予想以上のモノだ。


『敗北』……喧嘩で負け知らずの彼女に、その二文字が薄っすらと浮かぶ。



「……その綺麗な顔、殴られるのが嫌ならさっさと逃げた方がいいぜ」


「ざけんじゃねえ!!」



 彼女に、『逃走』の選択肢は無い。


 誰もいない決闘場。


 観客席の口だけの者達も、いつの間にか全員消え失せていた。



「そうか」



 それだけ言って、彼は歩く。



「チッ、舐めやがって――『炎よ、我に火の加護を』――」



 唱える煉。


 彼女の『杖』は、他の者とは少し違う。


 まるで竹刀のような形状のそれは――彼女独自の『戦闘スタイル』に因るものだ。




「『炎装えんそう』!」



 詠唱完了。


 瞬間――炎が彼女を包み込む。


 まるでそれは、火の鎧。



「すげえな、そんな事もできるのか」



 目を丸くする優生。


 彼の表情は、純粋な驚きの感情。


 しかしまたそれが煉の気に触れていた。



「ああクソッ……調子狂うんだよ、テメエは!――『炎よ、我に剣を』――」




 詠唱開始と共に火の鎧から一部火が離れ、杖へと移動していく。


 火の玉が移り行くその光景は、こんな状況でなければ中々に幻想的だ。



「『炎剣えんけん』!!」




 詠唱完了。


 杖へと移動した火は、うっすらと『刃』を象っている。



 彼女の得意魔法――『炎装』からの『炎剣』は攻撃力に秀でた魔法だ。


 『炎装』の火の鎧も合わせて、攻防一体の魔法になっている。


 彼女はこの魔法で――幾多の喧嘩を切り抜けてきた。



「行くぞ――っ!!」



 煉が走る。


 迎え撃つ――訳でもなく、立ち尽くす優生。


 一瞬で彼女の間合いに入り――刃が首元へと迫る!



「――なっ!?」




 そう声を荒げたのは、彼女の方だった。


 寸での所……彼は服に包まれた右腕で刃を防いだのだ。


 まるでそれは当然かの様に、刃は『割れる』。



「はあ、はあ――クソッ、『炎よ、我に剣を――炎剣』!」



 刃が割れた動揺を切り替え、距離を取って再詠唱する煉。


 身体を包む火から、再度杖に刃が宿った。



「て、テメエ……何でアタシに追撃しねえんだ」


「……いやあ、綺麗な火だと思ってさ。見惚れてたんだよ」


「っ――ああ!?ふざけんな!!」



 彼女の問いに、呟く様に答える彼。


 不意を突かれた、そんな表情をする煉だったが――再度、怒りの表情へと変わる。



「……コレで、終わらせてやる――『この身を護る火の鎧よ――全て烈火れっかの刃と変わり――我が敵を討滅とうめつせよ』!」



 先程よりも長い詠唱と共に、彼女の全身から炎が燃え盛って――杖へと移動する。


 先程とは違う、が杖へ。



「『ほむら』!!」



 詠唱完了。


 その火の刃は、最初とは比較にならない。

 轟轟と燃え盛る炎、サイズも段違いだ。


 鎧を捨て、攻撃のみに特化した――煉の最後の切り札。



「アタシの正真正銘、最後の攻撃だ……受けれるもんなら受けてみな!」

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