入学編⑤

 

『神楽煉』とやらが到着して数分か。

 俺に威勢良くしていた強面二人は、煉の傍にずっと居た。

 挑発でもしてくるかと思ったが――あの様子を見る限り、あの二人は煉の『舎弟』的な奴だろう。



「おっ、アレが噂の――」


「確か『碧優生』だっけ?どこかで見たことあるような名前……」


「一対三だろ?大丈夫かよ……しかもアレって、あの『炎剣』じゃ――」


 決闘場は大きな体育館のような場所で、上には観客席のような場所がある。

 そしてそこに――ワラワラと人が集まってきていた。


 正直ガヤが鬱陶しいが別に良い。


 どうせ――すぐに『終わる』からな。



「えーっと、それじゃ決闘の立会人を行わせて頂きま――」


「――さっさと始めな」



 赤髪の彼女――神楽煉がそう言うと、立会人の眼鏡少女は顔を白くする。


「は、はい!はじへ……始めさせて頂きます!」


 あ、噛んだ……



「指定の位置に着いて下さい……お互い、準備は良いですか?」


「ああ」


「……始めな」


 俺と煉、加えてお付きの二人が頷く。


「それでは両者――始め!!!」





―――――――――――


―――――――――


―――――――



「地よ、敵へ土塊を!『アースブラスト』!!」


煉の舎弟であろう強面が、恐らく五回目位の詠唱を完了させる。


無から現れる土の塊が俺の顔面に――



「ぐっ!」



構わず受ける。


衝撃で俺の身体は地面を転がり、やがて止まった。



「……何の、つもりだ?」



ボロボロになった俺を見て、そう言う煉。


見たまんまなんだけどな。 

俺は決闘が始まってから――三人に攻撃を全くしていない。


されるがまま、ってやつだ。

あー疲れた。もうこれで十分だろう。あの二人の気も済んだ事だろうし。



「お前らの勝ちだよ、決闘は……これでいいか?なあ立会人さん、降参だ降参」


「えっ!?は、はい!勝負あり!!えっと、只今の勝負、『碧優生』の降参により、勝者は――」


立会人の宣言を耳に流しながら、俺は決闘場の出口へと歩き出す。


早く帰りたい。


疲れたし、帰ってダラダラしないといけないしな。





――――「何だよ、アレ……」「やる気あんの?」「つまんねー」――――



嫌でも耳に入るガヤ。


鬱陶しいが、反応する程でもない。




「テメエ、ふざけてんのか?悔しくねえのか?」



「俺の目的は『決闘を受ける事』だけだ。勝ち負けはどうでもいいんだよ」


煉の声に振り向く。


あの時の約束。


それに、『決闘に勝利する』なんて言葉は全く無かった。



「……っ!」



驚く表情をする彼女。


少しだけ気味が良い。



「じゃあな――約束は守ってくれよ」


「おい、待て――」



返事を待たずに、踵を返す。


さっさと帰ろう。


――「おい、もう終わりかよ!」「何だアイツ」「転校生がどんなもんかと思ったら……」――



鬱陶しいガヤを聞くのも終わりになりそうだ。




「煉さん、追わなくて良いですか?」


「チッ、ああ――」


「ですよね!!あんなヤロー、関わるだけ無駄っすよ!」




出口間際、そんな会話が聞こえる。


どうやら、良い感じにあの舎弟共が進めてくれている様子だ――




「それにしても――アイツ、本当に『碧優あおいゆう』の息子なのか?」




扉に手を掛けようとしたその時だ。




観客席から――――その名前が、俺の耳に入った。

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