入学編④

「決闘?」



えらく素っ頓狂な事を言われた。


『決闘』だって?俺はタイムスリップでもしたのか?




「嫌なのか?だとしてもお前は受けるしかないけどな」



嫌に決まってんだろ……


ただ、断る選択肢は無いわけだしな。



「分かったよ、決闘でも何だって受けてやる」


俺は首を縦に振った。

その瞬間――何となく、このクラス全体がざわついたのを感じた。


「おいおいマジで受けたぞコイツ!」


「馬鹿じゃねーの!?」


子分っぽい二人がそう笑う。


……受けたら受けたでコレだよ。勘弁してくれ。



「今日の放課後、残っとけ――決闘は今日行う……お前ら、任せたぞ」



昼休みの最中。


俺は、決闘を売られたのだった。




――――――――――――




「……決闘ってマジ?」


「あの子も何か、ちょっと可哀そうになってきたかも」



俺の席から二人が去った後、教室は再度湧き始める。


そしてその話題は当たり前の様に俺になっているようだ。



……まあ、そりゃそうか。



「……」



にも関わらず、横の彼女は大人しい。


まあ……取り合えず嵐は去ったかな……


なんて思いながら、俺は頬杖をつこうとした、そんな時だった。



「 ―――― 『i◆u□o◇u』!!」



「――がっ!?」



思わず耳を塞ぐ。


耳鳴りなんてもんじゃない轟音が、俺の鼓膜を震わせた。



「はあ、はあ……」



周りを見ても、クラスメイト達は何事も無かった様に会話を続けている。



……訳が分からねえ。



俺、疲れてるのかな?





―――――――――――――――





あれから誰に絡まれる事なく、時間は過ぎていく。


昼休憩・五限・六限。



時間はあっという間だ。因みにこの学校は基本六限で終わり。


授業時間は短く、内容は濃く。それがモットーなんだろう。


実際濃すぎて一生徒が現在進行形で苦労してるんだが。




「ふう」



一息つく。


さて、授業も終わったし後は帰宅するだけ。



なんて。



「――待たせたな」



『コレ』を片付けてからだな。


忘れてくれるわけもなく、強面が俺の元に現れる。忘れてくれたら良かったのに。


『いっけねー忘れてた!すまんやっぱいいや!』みたいな感じ。絶対ないわな。




「……俺、早く帰りたいんだけど」



実際怠いんだよ。


帰ったら色々とやる事あるんだよ。大事な用事が。


ひたすらダラダラするとかな。



「心配するな、すぐに終わらせてやる」


「……へえ、そっか。なら早く終わらせろ」



俺がそう返すと、眉間に皺を寄せる強面。


ただでさえ怖いのにやめてくれ。



「てめえ、覚悟しとけよ――っ!来い!」





―――――――――――



迷路のような学園内。


俺は強面に連れられて、その中を歩いていく。


本当、バカでかいなここ……




「なあ、まだか?」


「……うるせえ。もう着く」




教室が並ぶ校舎から出て、太陽の光を浴びる。


そしてそのまま歩いて――



「学校にこんな場所あるか?フツー……」



そこは、確かに『決闘場』と言える場所だった。


馬鹿でかい体育館の風貌で、中は真っ白の大広場。


観客席もあり、何故か常にもう人だかりが存在している。




「お前の為にわざわざ借りたんだぜ?感謝しろよ」


「それはどうも」


「チッ……その余裕の顔が崩れるのが楽しみなもんだ」




俺と強面が睨み合う。


どっちかと言えば、睨んでいるのはあっちの方だけなんだが。



「――はいはーい!そこまでそこまで!」



そんな俺と彼の間を裂くように、一人の女の子が割って入る。


眼鏡を掛けた、オレンジ髪の元気そうな彼女。



「申請した亮君ね?後は……君が言ってた転校生の子?」


「ん?ああ」


「……決闘の事については、お互い了承済なのね?」


「何も詳しい事は聞いてないが……取り合えず受けてみた」


「ええ!?」



驚いた顔をする彼女。


まあそりゃそうか……でもどうせ受けるんだし。


それを聞いて、いや無理だとは言えない



「まあ、何とかなるから」


「そ、そう……一応簡単に説明しとく?」


「頼む」



頷くと、手短に彼女は説明してくれた。


星丘魔法学園では、当たり前ではあるが魔法を用いた生徒間の戦闘は禁止だ。

しかし……この決闘場で正式に決闘許可を貰えれば、幾らでも戦って良いとなっている。


それが『決闘』。名前だけだとかなり誤解を生むが、それはただの生徒間の魔法戦闘練習だ。

負けた方が勝った方に何か命令出来るとかそんなのは無い。生徒間で好きにやるのは自由ではあるが。


決闘場では、トンデモ技術で決闘中負った傷も終わればすぐ治るらしい。

実際に身体に傷を負っているわけではないからだと言うが……俺の頭には理解不能である。


グループ間での戦闘練習なども魔法学園では重要であり、その為に5対5とかの組合わせも出来るそうだ。


お互いのグループが決闘条件を確認し、了承すれば決闘を始められる。ここは本来の決闘と同じか。急に1対3とか吹っ掛けられたら酷いにも程があるからな。


「……まあ、そんな所。えーっとそれで、今回の決闘は……碧優生君対、君達の三人だね」


「……」


「あ、あの、了承貰わないと決闘出来ないんだけど……」


本当、酷いと思うよ俺は。

眼鏡の彼女の後ろにいる二人がニヤニヤと俺の方を見て笑う。


正直かなりムカついている。


俺が断れないのを分かってるからだろうが、かなり頭に来るよな。


「ああ、『了承』だ。異論なし」


「……わ、分かったわ」


……うん、三人?


って事は、あと一人――




「……テメエが、『碧優生』か」




綺麗な赤髪を背中まで伸ばした、ロングヘア―の女。


端正な顔立ちではあるものの、睨んだだけで相手が怯みそうな程、目付きが鋭い。


そして何よりも――あらゆる者を寄せ付けない、『威圧感』があった。




「『神楽煉かぐられん』だ。アタシが――テメエを見定めてやる」

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