入学編③

 ―――――――――――



「ふう、終わった……」



 三限、四限と無事に授業が終わる。

 頭が沸騰しそうだ……


 

「疲れたな……」



『色々』あったせいで、身神共に疲労が半端じゃない。


ただ、今、やはり一つ言えるのは……



友達が欲しい、ということ。




「飯食いに行こうぜ!」


「りっちゃん放課後カラオケ行かない?」


「はあ疲れたー」




クラスに、廊下に響くその声達。


前の学校では、気の合う奴らが結構居た。


だから友達も居たし、結構楽しく過ごせていたのだ。



それがどうだ?


裏口入学だの黒い噂が蔓延している。

何なんだよコネコネ太郎って。誰が言い出したんだ?


学校転入前からハードモード、いやベリーハードか。


これだと絶望的なんですが……




「……」



ずっとヘッドホンを着けながら、無言で居る少女。


一体、何聞いてるんだか。



ああでも……ある意味俺と同じで『一人』か……



「なあ、俺と友達になってくれないか?」




軽いつもりで、俺は彼女にそう声を掛ける。


聞こえているか聞こえていないか分からない格好だから、本当に軽く。



「……」



無反応。


どうやら、やはり聞こえていないらしい。

いや……聞こえてるかもしれないが、こんな『問題児』と喋れないか。


まして友達なんてな……




「はは、嫌か。ごめんな」



無言の彼女に、俺はそう言う。

悲しくなんてない。


はあ、昼飯は適当に教室外で食うか。なんか気まずいし。



「よっと」


鞄を持って、俺は教室の扉へと向かう。


そういえば、あいつら今は突っかかってこないな……


寂しくなったわけではないぞ?むしろこのまま一生来ないでほしいもんだーー



「――なあ、お前アイツに手貸したろ?」


「聞いてんのか?」



教室の扉に手を掛ける――その時。


左耳が捉える、俺の席の方からの声。……あいつらの声だった。



それは、俺は聞こえるべきでは無かったのかもしれない。



「……はあ」



ため息一つ。


俺は、踵を返した。



見えた光景は――まあ、俺の予想通り。


ヘッドホンの彼女を囲む男二人。


……しかし、ただ一つ俺の予想を反した事が――――



「――ぐあああ!」


「やめ――っ!」



全員が、耳を塞いで悲鳴を上げている事だ。


静まり返るクラス。

急がなければ。


俺は、その中を早足で向かう。




「やりやがったな、てめ──」



「なあ」



「!?」




彼女と男達の間に、割って入る。


突然だからか、かなり驚いた顔をしている男。

ヘッドホンの彼女の方はそこまでの様だが……



「この子と俺とは、何もねえよ」


「あ?」


「全くの他人だ。隣の席ってだけのな」



俺はそう続ける。


実際合っている、会話もしたことないんだぞ?



「だから──俺がどうこうで、この子に突っかかるのはやめろ」



不愉快だ。


全く、俺は誰かに軽く声を掛ける事も許されないのか?


とんだハードモードだな……



「ハハ、お前ヒーロー気取りかよ」


「俺達はもうソイツに『攻撃』されたんだ」


「お前は関係ねえ」



……まあ、確かにな。


実際さっき、明らかに彼女が『何か』をした。


はあ、仕方ないか……



「俺から頼む、さっきのは無かった事にしてくれ。元はと言えば俺が悪いんだ」



やむを得ない。


俺は男達に、頭を下げた。



「……どうする?亮」


「まさか、タダで許してもらえるとは思ってないよな」



……はあ。

やっぱこうなるか。


ため息を我慢して、心の中で思いっきり吐く。



「…で、俺は何をすりゃいいんだ?」



顔を上げて、強面に言う。


「亮、どうするよ」


「……やってやろうぜ、確か『れん』さんもコイツには──」



えらく勿体ぶるな、コイツ等……何か違う人物の名も聞こえたが。


「──なら決まりじゃねえか!」


「だな」



何やら楽しそうに話す二人。

俺が催促の目でそいつらを見た時。


やっと、一方の口が開かれた。




「──『決闘』だ、拒否権はねえぞ」

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