入学編②

「えーっと、こちらが優生君になります〜!」



丸井先生は、俺をそう紹介する。


俺は通販の商品か何かですか?


「……」


「……」


「……」




空気重すぎ。


真顔、何なら怒ってる表情のやつも居る。

最初から好感度マイナス振り切ってるじゃん……



流石に鈍感らしい俺でも分かる、俺は歓迎されていない。

どこまで話が行っているのかは分からないが──



「よろしくお願いします。趣味、特技は……特にありません。先生」



アタフタする先生の肩を叩き、さっさとこの壇上から抜け出させようとした。


いや、こんな場所居たくねえしな。視線が痛い痛い。

誰が俺の自己紹介なんて聞くかって顔してる。

ある意味考えてこなくて正解だったな。


つーか、逆にお前らから聞きたい。

『どうして俺の事そんな目で見るの?』ってな!



「……え、えー?あ、あの一番後ろの席、空いてるからそこで良い?」


「はーい」



軽く返事して、俺は席まで歩く。


はは、一番後ろでしかも窓際かよ。特等席だな。


……まさかこの待遇はこれのせいだったりしてね。そんなわけないか。



「よろしく」


「……」


とりあえず、隣席に挨拶する。俺は窓側だから一人だけ。


居たのは黒髪のショートの女の子。そして後髪とは対称的な、目を隠す長い前髪。


至って普通の女子に見えるが──その耳には、あるモノが着けられていた。


……『ヘッドホン』だ。


耳を完全に覆った、オーバーヘッドタイプのヘッドホン。

普通の女子では無くなった瞬間だった。



「何でもありかよ、ここは」



そう呟く。


校則を疑うね……





「それじゃ、朝のホームルームを始めますね!」




大丈夫かな、俺の学校生活……



――――――――

――――――

――――


「キーンコーン……」


や、やっと終わった……

俺は椅子の背もたれに体を預ける。


初めての授業。感想は、『ワケ分からん』……これに尽きた。


 何これ?俺の前の学校と授業スピードが違い過ぎるよ?

 幸い俺の筆記具捌きでノート取りは完璧なものの、内容に未だ頭が追い付いていない。


 俺自身前の学校で普通程度に過ごしていたが、これは……


 中々に覚悟を決めないといけないな。



「よお、転校生?」



 一時限目がやっと終わったと思えば、肩を『強く』叩かれる。


 ……ああ。どうやら休ませてくれないようだ。



「何か用か?」


「……あ?お前、よくそんな堂々としてられんな?」



 肩を叩いてきたのは、金髪をオールバックに纏めた強面君だ。

 はは、ここは髪色髪型自由な学校って一発で分かるな、コイツを見れば。


「てめえ、何ニヤついてやがんだ!」


 声を荒げる金髪オールバック。恐い恐い。どうやら、顔に出ていたらしい。



「すまんすまん。で、『何の用』だ?俺は休憩したいんだけど」



 用が無ければ次の授業の教科書でも見てようかな。

 俺は『優秀』な『転校生』で居たいからね。



 ……どうやら、用はないらしい。


「……ッ!てめえ――!」



 何も言ってこないので教科書を開くと、タダでさえ強面の顔が更に歪む。



「『裏口入学』の『コネ野郎』が――!」



 ……うん?


 え、俺、そんな人物になってんの?


 聞いてねえよ……



「は?」


「あ?」



 ヤバいな、このままでは殴られそうだ。


 顔が修羅だよお兄さん。

 俺なんか悪い事したか?



「「「キーンコーンカーン……」」」



 あ、チャイムだ。


 助かった……




「チッ……また後で、覚えてろよ」



 チャイムが鳴るや否や、席に戻る金髪のお兄さん。


 意外とそういう所は素直なのね。


 次の先生が怖いのだろう。



 ―――――――――――



 チャイムが鳴って、数分か。


 先生が来ない。


 付近の生徒達も、何やらざわついてきた。



「鳴ったよな?」


「……そういえば、まだ始まる時間じゃないよね」


「何なに?幻聴?」



 二限目に入るまでには、あと一分程ある。


 時計を見ればそれは明らかだ。


 さっきのチャイム音は――



「「「キーンコーン……」」」



 あ、鳴った。


 これは、本物かな。


「……」



 全く動じていない、ヘッドホンの彼女。


 ……まさか。


「ありがとな」



 誰に向けて言うわけでもなく、呟く。


 ……結局、全然休めずに二限目かよ……

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