転入試験②

「んじゃ、ちょっと待っててね――お兄ちゃんの担当先生呼んでくる!」



これまた馬鹿でかい校門の前に着くと、優理はそういって走っていく。


……恐らく、校舎に入場が認められない奴が入ると不味いんだろう。


実際――そこら一辺に監視カメラやセンサーの様なものがある。

うっかり魔が差し、ここに侵入しようものなら一発。


……確かにこれなら、テロリストでも何でも入って来るまでに終わりだな。


前の学校の様に、グラウンドに野良犬が入り込んで大騒ぎ、更には授業中断なんて事はない。……ある意味ちょっと寂しいけど。



「……はあ」



俺なんかが――こんな凄そうな学校に入学するのか。


本当にやっていけるのかよ……かなり心配になってきた。



──────────────


俺がぼーっと校舎を眺める事十分程。



「お兄ちゃんお待たせ!」



優理がにこやかな笑顔で俺に向かってくる。

その表情だけでも助けになる、が。


……横にいる教師さんは、そんな笑顔を見せてくれない様。

まあそりゃそうだよな……完全に『コネ』入学だ。


裏口入学って言葉は、今俺の為にある。




「……君が、碧優理の妹……優生君か」


少し低い声で、俺の目の前に来てそう言う。


肩まで伸びた黒髪、キッとした鋭い目。表情。


いかにも厳しそうな女性……そんな印象だ。



「……はい」


「君の転入試験を担当する松上まつじょうだ。よろしく」


「よろしくお願いします」


「早速だが、最初は筆記試験だ。……行こうか」


「はい」


坦々と話は進む。俺はそのまま、松上先生に着いていった。


……優理も何故か、こそこそと笑顔のまま着いてこようとする。



「……優理君は、何処かで待つか帰ってくれても良い。ありがとう」



流石に見逃されなかった。泣きそうな顔で優理は立ち止まる。


「うう……お兄ちゃん、頑張ってね~! 」


「はは、ああ」



最後に優理に元気を貰って、俺は松上先生に着いていった。




──────────────



「それでは、適当に席に着いてくれ」



着いたのは、教室……ではなく、長机が二つしかない場所。


まあ一人だけの試験なら、こっちの方がいいわな。



「……試験時間は二時間。良いな?」


「はい」


「それでは――始め!」




――――――――


――――――


――――




「……止め!」



二時間経過。思えば問題に必死で、あっというまだった。


疲れた……まあでも、思ったよりは難しくなかったな。

7、8割は取れているはず……少なくとも魔法科目は9割行ってるはずだ。



「お疲れ様。休憩三十分を挟んで、次は魔法の実技試験だ。……時間になればまた来る」



そう言って、松上先生は部屋から出ていく。


厳しい感じの先生だが、俺に対しては特にそれが出ている気がするな。


……まあ、こんな入学の仕方じゃそうなるか。



「ふう」



一息つく。二時間の筆記は流石に疲れたな……

後は実技試験のみ。


……ただ、実技試験と言っても俺は魔法なんて使えない。

あるのはこの『能力』だけ。


「さて、どうなることやら……」


他人事のように俺はそう呟いて、心地良い後ろによりかかる。


流石名門学園、椅子にとっても前の学校とはランクが違う……


やばい、寝ちゃいそう──



──────────


──────



「……起きろ、転入生」


「っ!ああ、すいません」



寝ちゃった。


ただでさえ厳しそうな松上先生の顔は一層険しくなってしまう。怖い。



「試験会場に向かう。いいな?」


「はい」


……まあ、おかげで疲れは大分取れた。


満を持して、俺は試験に臨むとしようか。

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