転入試験①

今は正月を過ぎ、冬休みはもうすぐ終わりを告げる時期。



思えばかなり、引っ越すのにかなり悪い時期じゃない?


まあ次俺がトラブルに巻き込まれたら、だからな……しょうがないか。


「悪いな、手伝ってもらって」


今は、妹と共に俺の荷物を出してもらっている。



必要なものだけ持ってきたつもりだったが、意外と多くなってしまった。


服や本、その他色々。


「ふふ、別にいいよ。今日は暇だったし……あ、このアルバム懐かしー!」


笑ってそういう優理。どうやら全然嫌じゃなさそう。むしろ楽しそうで何より。




「――あ、突然なんだけど……明後日にちょっとした転入試験みたいなのがあるんだよね……」


「は?」


言いづらそうな優理の表情から、何が飛び出すかと思えば……試験て。


しかも明後日だと?


「突然すぎるわ!何だよそれ」



「お、落ち着いてお兄ちゃん。試験て言っても確か、学力試験と魔法技能試験があるぐらいだから……」


……全く落ち着けない。


というかその二つだったらもう普通の試験だと思うんだけど。




「学力試験はまあいい。魔法技能試験に関しては――俺、多分0点だぞ」



誇るつもりはないが、俺は学力は普通程度はあるはずだ。


魔法分野は一応得意分野である。


悲しい事に、その知識はこういった試験でしか輝く事が無くなってしまったんだが。



「あはは、大丈夫だよ。確かお兄ちゃんの試験結果はどれだけ酷くても入学は出来るから。お母さんが理事長にそう話をつけたって言ってた」


「大丈夫なのか……それ?」


「大丈夫じゃない?」



そう笑いながら言う優理。

お前はさらっととんでもない事を言っているんだぜ?妹よ……



……まあでも予想通りだ。魔法が使えないってのに魔法学園に入学できるなんて事はまずあり得ない。『何か』の力が動いているのは当たり前だ。



ただ、完全に私権乱用な事にはもう黙っておこう。



「入学はいいよ入学は。その翌日に退学とか笑えねーぞ」


「うーん……お兄ちゃんなら何とかなるって!」


俺の事を買いかぶりすぎだ、妹よ。



「……はあ。まあ、しゃあないか」



出来る限り、足掻いてみよう。


その試験とやらに不安を抱きながら、俺は作業を続けるのだった。





――――――――


――――――


――――





俺がここ、魔法都市に引っ越してから二日が経った。


そう、つまり今日が『星丘魔法学園』の転入試験の日である。


一応昨日まではずっと、試験勉強をしていた。いくら0点でも入学できるとはいえ、流石にそれは不味い気がしたからな。


実技は0点と仮定して、筆記試験は80点取れば平均40点……ギリセーフ?



いや、アウトかもしれないが――まあでも、実技が壊滅的な以上筆記で頑張るしかないのだ。



「お兄ちゃん起きてる?」



俺がベッドで寝転んでいると、優理が俺を起こしてくれる。


妹はいつもは寮暮らしなのだが、冬休みという事もあり今はここで寝泊りしている様で。

勉強中、俺はほぼ引き籠って居た為、ご飯を買ってきてくれたりしてくれていた。


相野市に居た時はずっと一人だったせいか、中々新鮮だ。

自分の身の世話をしてくれる人がいるって、こんな楽なんだな。

お兄ちゃん駄目になっちゃいそう。



「……ああ。二度寝していい?」


俺のこの超快眠枕が、もう一眠りしろって言ってるんだが。



「駄目に決まってるでしょ!ほら、起きて起きて!試験遅れちゃう」


俺がボケると、妹が俺の手を引っ張りベッドから出そうとする。



「分かった、分かったって」



眠け眼を擦りながら、俺は寝床から出る。


うーん、まだまだこの部屋には慣れないな……

いや――こんなブルジョワな部屋、慣れたら慣れたで不味い気がする。



――と。




優理によれば、ここから学校へは三十分程で着くとのこと。


場所は少し離れているのだが……ここは立地も良いらしく、直ぐそこに鉄道の駅があるおかげらしい。


駅近でこの豪華な部屋。額は考えない事にした。



「よっし、行くか」


「うん!」


今の俺は制服も何も無い為私服だが……優理は立派な制服を着ている。


隣にいる俺が恥ずかしくなるな。もっとちゃんとした服を持っていれば良かったか。



―――――――――



「……でっか」


学校の最寄駅から、『星丘魔法学園』は見えていた。


俺の通っていた学校と比にならないほどのデカさ。


大きさだけじゃない、その風貌は立派で、何やら様々な施設もある。


学校のレベルじゃないぞ、あれ。どれだけの金が動いてるのやら……



……え?俺ここに通う事になるの?マジ?



「ふふ、大きいよねほんと。ほら行くよ!お兄ちゃん!」


「お、おう――」


俺とは対照的に余裕な態度の優理。頼もしいぞ、情けなくもなるが……


妹に連れられ、落ち着く間もないままに魔法学園へ向かうのだった。

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