魔法都市へ③

優理に連れられ、どんどん都会の中に入っていく。



「すげー人だな……」



溢れる人並み。そしてそれは、若い学生?ばかりだった。


小さい小学生のような子供から、大人びた大学生まで多種多様。揃いも揃って洒落た恰好しやがって……優理もこれに染められたんだな。


田舎住みだった俺からすれば、ハイカラすぎるぞここは。



……それにしても――ここのほとんどどの人が魔法使い、もしくはその卵か。


いやあすげえわ、魔法都市。



「そういえばお兄ちゃん、前の学校は?」



優理が、そんな事を急に俺に聞く。


「……ああ、今冬休みだろ?学校で手続きだけしてこっちに来た」


「え、クラスメイトにお別れとかしてないの?」


「ん?ああ」


不思議そうに言う優理。


確かにまあ、普通は別れの挨拶とかするんだろうが……しても両方悲しくなるだけだ。


それなら、何も言わず別れた方が良い気がした、ちょっとした休み明けのサプライズって事で。


「いいの?そんな急に……」


「はは、良いんだよ。いつの間にか、風のように俺は去っていったって事で」


「えー、何それ!まあお兄ちゃんがいいならいいんだけど」


でもまああっちは本当に楽しくて、良い奴らばっかりだった。春休みか、それぐらいに帰って会いに行こう。



《「私絶対、いつか魔法都市に行って――魔法を勉強するんだ!」》



前の学校でのある友人の台詞を思い出す。


あいつは、元気にしてるだろうか。


はは……俺が先行ったって聞いたら飛んで来るかもな。



「――お兄ちゃん!聞いてる?ほら……あれ見て!」



少し考え込んでいた所を優理に覚まされる。


指差す方向を見れば、都会特有の大きなスクリーンに――っておい、あれって。


「ふふ、お兄ちゃん知らないの?SNSとかで今のトレンドなんだよ!」


嬉しそうに言う優理の後ろの大きなスクリーンには、先俺が打ち返した隕石の映像が映し出されていた。


コイツも都会慣れしおって……


「――相野市に落とされた隕石は、あろうことか跳ね返るように宇宙へと帰っていき、なんとその跳ね返る瞬間には、地面に人影のような姿が――」


映像と共にそんな事を話すスクリーン。


紛れもなく、先日の俺だ。……よくあんなとこ撮れたな。




「うわあ……」



何か恥ずかしくなって、俺は映像から目をそらす。



「ははは、お兄ちゃん目逸らしたー」


「オレハナイモシラナイヨ、行くぞほら」


「はいはいー」



優理の手を引っ張り、さっさと歩く。


はは、まさか俺だとバレる事は無いだろって。




―――――――――――――――



「ふう、もうそろそろかなー?」


あれから三十分程歩き、周りは住宅地だらけとなっている。先程とは打って変わり……人も少なく落ち着いている。


「……もしかして、俺の住む場所的なやつか?」



俺はそう妹に言う。


まあ住宅地が近いってなら、案内される場所は自ずと俺の住む場所だろう。



「ふふ、流石に分かるよね、期待してて!――あ、ほらあそこだよ!」


そう言うと、遥か頭上を指で差す。



「……は?おい、冗談だろ?」



俺の前にあるのは、高級マンション。


住宅地の中で一際目立つそれが俺の住処になる……のか?


しかもこの言い方だと頂上階だぞ、どうすんだこれ。


「なんかね、お母さんが要らなくなったからとか言ってた気がする。良かったねお兄ちゃん!」


……やっぱり母さんか。


これは息子の為を思っての事か、それとも適当に空いてた所だっただけ?


どちらでもいいが、これは……田舎のボロマンションからこれって。



「はっはっは、そっかそっか」


「……お兄ちゃん?」


俺はもう、笑って受け入れる事にした。





――――――――――――――



妹に連れられるままに、厳重なロックを抜け、エレベーターを昇り……


何でこの子こんなに高級マンション手馴れてるの?お兄ちゃん怖いよ?



「着いたー!」



そう元気よく叫ぶ優理。


俺は対照的に、げっそりしていた。



「……落ち着かねえ」


前住んでいた場所と、何もかも違いすぎる。


如何にも金持ちが座るような純白のソファーや、磨かれた床。


洒落ている家具、一人には広すぎる空間。




「すごーい!見て見てお兄ちゃん、『学園区域』を一望できるよ!」


そう俺に手招きし、窓へと誘う優理。


「……こりゃ、すげえな」


これまた大きい窓ガラスからは、外の風景が綺麗に見渡せる。


夜とか凄いんじゃないの?これ。


また写真撮っちゃうぞ?


「よいしょっと。さてお兄ちゃん、家も着いた事だし……そろそろこれからの事について話してもいいかな?」


……俺は全く落ち着いてないんですが。


仕方ねえ。


俺がここ、『魔法都市』に住むって事は……色々と、そう、『色々』とあるんだろう……



「……はあ、よし。いいぞ」



見えない未来への不安に溜息をついて、荷物を下ろし……俺は慣れない椅子へと座った。

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