碧優生の入学編

魔法都市へ①

「さみい……」


季節は冬。まもなく冬休みが終わるであろう、一月の上旬だ。


俺は駅の切符売り場にて立ち尽くしている。

これから向かう場所への切符を手に入れる為に。




「魔法都市、魔法都市行きはどれだ……」



魔法都市。


それは魔法に関する人々が、物が、知識が集まり、活発に蠢いている大都市の事だ。


ここ日本では東京に存在している。


魔法による万全のセキュリティが施されており、その中には魔法協会、魔法研究機関、優理の居る魔法学園など――


全て魔法に関する場所であり、それらを一から十の区域に分けてある巨大な都市だ。



まあ要は、魔法使いの為の場所。


俺とは無縁の場所って訳だ。



「買っちまった……」



……なのに。


今俺は、そこへ向かう切符を手に入れてしまった。


引っ越し準備も親が手配済み、当然かのようにトントン拍子で進み――

後は行くだけという所まで来た。



「魔法都市、ね……」



小さい頃はえらく憧れたもんだ。


魔法界隈の大きな行事も魔法都市で行われる為――昔はたまに家族と足を運んでいた記憶がある。


そこの目に映る全てが、俺の興味を惹いていた。




しかしもう、長年そこには行っていない。


俺以外の家族全員は、それはもう大忙しだからな……


そして。


『憧れ』が消えた今、もう『不安』しかない。


勿論これには母さんの思惑があって――それが俺の為になるんだろうけどさ。




「はあ」



ため息一つ。


見慣れたこの駅の景色が、次見られるのはいつになるのだろうか……



「――まもなく列車が参ります――」




……まあ、なるようになるだろう。


俺は考えるのをやめ、空いた電車に乗り込んだ。




――――――――――


――――――――


――――――





「……まもなく魔法都市、魔法都市ゲート前――魔法都市ゲート前です――お降りの方は――」




およそ三時間ぐらいだろうか。


うつらうつらとしていると、そんなアナウンスが聞こえる。



「着いちまったか……」



帰りたい。帰らないけどさ。


家――もう無いし。


……さて、まずは待ってくれている妹と合流しようか。



――――――――



「久しぶりだな……」


故郷の駅とはスケールが何倍もある駅を降り、俺は風景を眺める。


何年ぶりだろうか?俺が、『魔法』を諦めた時からずっと――ここには来ていなかった気がする。



「いやあ、それにしても『ゲート』は相変わらずか」



魔法都市はよく狙われる。


まあそりゃそうだ、日本のそれはもうたかーい魔法技術がここに集まってるんだから。


故に、守りは固く……特にこのゲート前は。


『ゲート』。


それはこの魔法都市の最初の観光場所と言っても良い。


入り口、されど入り口。


例えば玄関は家の顔と呼ばれるように大事なモノである。


「まあだからって――ここまでするかとは思うけどな……」



……俺の目の前には、古代ギリシャを象ったような、馬鹿でかい門が存在しているのだ。

そしてその門の中には、十の色彩が虹色に並んでいる。

透き通った鏡のようなそれは非常に美しく、見惚れてしまうが――それだけではない。



目的の魔法都市内の区域によって入場口が『色』で分けられているのだ。




「写真とっとくか」



ぱしゃり。完全に田舎者だよこれ。しょうがないだろ!



さて……俺が妹と待ち合わせしてる場所は、あの水色のゲートに行けばいいんだっけか。

良い写真も撮れたところで、歩いていく。


歩いていけば行く程その巨大さは分かる――そして、色によって警備の度が違う様だ。

俺の向かう『水色』は、そこまで警備が濃くないらしい。




「身分証明出来るものは?」



入る前には、当然門番から質問を受ける。


恐らく俺の鞄も横の機械か何かでチェックされているんだろうな……魔法で。

本当に別の国かって感じだ。酔ってしまいそう。



「……碧、優生か。入って良いぞ」



取り合えず持ってきた身分証明書を全部出すとオーケーを貰えた。


……少し、門番の表情が驚いていた気がする。まあ珍しい苗字だからね。




「うーん、緊張するな」




実際目の前にすると、結構威圧感あるなこれ。


深呼吸深呼吸。……よし。


がさがさと書類をかき集め、バッグに入れ、心の準備を整えた所で……俺はゲートに足を踏み入れた。




―――――――――


――――――


――――



それは一瞬。だが、長い距離を移動したのは分かる。

まるでエレベーターの様に、違う階層に移動した様な感覚だ。


目の前には、全く異なる光景。

見覚えがあるようなないような場所。


……本当に不思議だよ、魔法ってのは。



「ふう」



一息。


正直、世界が違い過ぎて疲れる……


ああ――三時間前の相野町が恋しくなって来た……



『そろそろ着いた頃かな?ゲート前で待ってて』



俺の故郷を思い描いていた時だ。

ピコン、と優理からのメッセージが携帯に現れる。



……優理よ、お前はエスパーか?




「『了解』――っと」

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