故郷がえり

作者 黄間友蚊

15

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★★★ Excellent!!!

 日頃は故郷を思いだしもしなかった「僕」が、無自覚に……故郷へ帰る選択肢になる要因は、自分の一部である思い出を確認したかった。

 だから、思い出と異なる現状を確認したくない「僕」もいる。
 
 「ダム」という急激な変化を及ぼす存在は、過ぎ去っているべきはずの時間を現実のものにする。「僕」の思い出を「思い出」という形にして現実から引き離す存在。

 環境を変化させる不可逆な活動と、いつでも即座に戻れる思い出を整理する過程で感じる葛藤を感じました。

 ……うまくまとまらなくて申し訳ないです。

 情景描写の美しさと相まって辛い現実(外形的にも内面的にも)と向き合わなければならない人の生の一部を描いた作品に思いました。

 

★★★ Excellent!!!

恥ずかしながら、自分は「本泳ぐ海、白のエイブラハム」を読んだ者ではありません。
というわけで、その視点を持たない者としてのレビューを致します。

「僕」から見た景色が、くっきりと見え、そしてとても綺麗でした。
それは、景色が単に綺麗なだけではなく、ダムの話に揺れる僕の気持ちをうつしだしているから綺麗なのです。

映画で見たい、と思いました。
映画なら、「僕」の独白と気持ちと、あの景色が混ざり合った、素晴らしい画が撮れるでしょう。
そして、先生の独白も、それに解けるように混ざってくれるでしょう。

ここまで映像が見える作品は珍しい。
非常に文章力の高い作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

ダム建設によって、故郷が無くなる。
夏の描写と共に、近年忘れかけていた文明の闇を思い出させてもらいました。

八ツ場ダムの建設に伴い、そこでの歴史ある温泉の営業が終わっしまったことが自分の中で印象深いです。
ダムの近くに心霊スポットがあったり、遺跡があったのにダム建設で沈んでしまったり……人々の生活が豊かになるのと引き換えに、“想い”が取り残されてしまうのが悲しいです。

ダムそのものではなく“ダム”という言葉には、“溜める”とか“流す”などのニュアンスもあるような気がします。
作品ではそれにも触れるのかな? と勝手に想像してしまいました。
続きが楽しみな作品です。