レビューの星を求めて

作者 鶴見トイ

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★★★ Excellent!!!

――

仕事:ネットオークションで古本を転売
えっ、何それ、うさんくさい。

第一印象、これでした。すごい失礼。すみません。
そのくせ読んでみたのは、ハッキリ言って、下心。
ネットでの導線の引き方を知りたいと思うのは、
ネットで何かしらの活動をしていれば当然のことで。

主人公、戸郷は新卒就職した会社をわずか4ヶ月で辞めた。
会社での手痛い体験はトラウマとなり、社会に出られない。
引きこもり生活で貯金も底を尽きかけたときに閃いたのが、
大手ネット通販サイトでの「転売」で儲けることだった。

一章、二章ではネットショップの回し方が簡潔に紹介される。
「ふぅん、そうなのか」と思いつつ(ノウハウ本として面白い)
サクサクと読み進め、三章に至って小西洋菓子店が登場すると、
俄然お仕事小説としてのパワーが増して、目が離せなくなった。

小西洋菓子店は商店街に軒を連ね、地域に愛されてきた店で、
頑固な祖父と頑固な孫娘が昔ながらのやり方で営んでいる。
急速に変化する時代に戸惑い、現状を受け止め切れない祖父。
一方、20代の孫娘はネットからの導線を模索して悩んでいる。

ネットショッピングやSNSにどれほど馴染みがあるかによって
本作への共感の度合いや評価の高下は変わるかもしれないが、
「ニート生活から始めるネットショップ」は準備段階であり、
本質は「小さな老舗店が21世紀を生き抜くには」にあると思う。

そして老舗店の頑固爺とネットショップの現代っ子が語り合い、
互いの仕事のプライドに触れ合ったとき、戸郷は変わり始める。
東京の商店街とネットの片隅で奮闘する元ニートの姿は力強い。
「うさんくさい」の第一印象が覆る、爽やかな読後感だった。

改めて言わせてください。
「うさんくさい」とか思って、大変失礼いたしました。

★★★ Excellent!!!

――

我々は誰かが評価したものしか評価できないという性向がある。俺も美術品なんかは完全にそうで、「まあ教科書に書いてるんだから凄いんでしょ」「誰かがいいって言ってるからいいんでしょ」ってなもんである。勘違いして欲しくないのは、別にそれはまったくの虚無で口だけで良いって言ってるんじゃあなくて、良いとは思うんですね。良さにお墨付きをもらうと安心するというか。分かりますよね? こんな言わんでも。
逆に、自分的には結構好き、というものでも、他人がくさしてるとなんか「アレ? これを好きというのはおかしなことなのでは……」という気持ちになったりする。でしょう。

だもんだから実は我々は自分の自由意志・独立した崇高な精神で生き・暮らしているように錯覚してるけども、そんなのは勘違いもいいとこで、他人の評価に右往左往してるというのが実質的なところだということになる。悲しい。そうか?

タイトルの「レビューの星を求めて」というのはまさにそこの話である。
みなさんの頭に過ぎった「レビューの星」とは似てるようでちょっと違う。違うけど本質はよく似ている、ような気もする。

時間と金銭は有限なので、できうることなら損はしたくない。カネをドブにすてるのがオレの生き甲斐だっ! という人は別として。

なんかカクヨムで一個お話を読みましょう、という時のことを考えてもらうと、これはカネはかからないが時間はかかる。たとえ時間つぶしだとしても、好みに合わないやつは読みたくないじゃあないですか。だから信用できる(ここでは自分の好みに合うという意味)読み手のレビューを辿ったり、まあ単純に星がいっぱいついてるのを読んだりする。で、オレオってだけ書いてあって「?」ってなることもそりゃああるが、経験上そういうのは面白い率が高い。だからこの、他人の評価に従うという生き方は効率的で捨てたもんじゃあないことがわかる。

で面白いのは…続きを読む