楽園39  海賊時代の忘れ物

まるで、映画のワンシーンのようだ。

森の中に巨大な帆船が三隻現れたのだ。なぜ、こうも次々と奇妙なことが起こるのか、不思議な楽園だと皆は思っていた。

「あの幽霊船たちは、どうやって、ここまで来たんだろか?」

「わからないわ。だけど、謎を解くなら、行くしかないわね」

六人は、船にゆっくりと近づき、船体の破れ目から中に入った。

すでに、廃船を修繕した彼らだが、目の前のは何十倍もでかい。

「大航海時代と呼ばれていた時代の帆船ね。昔、見た映画の船にそっくりだわ」

「私の実家から近いテーマパークのアトラクションみたいだわ」

「ああ、だが、この船はただの船じゃないよ。あれを見て」

翔が後ろにあったシンボルを指差す。

そこにある邪悪な…

「ジョリー・ロジャー《海賊旗》」

階段を上がり、甲板に出ると恐るべき光景が拡がる。

「うぅ」

「怖い」

麗子、はるみ、カトレアは目を覆った。

拓斗、博樹、翔は「嘘だろ」と言葉を濁す。

そこには、白骨化した死体が一面に広がり、阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた。

「ひでー」

「この船で何があったんだ?」

「大昔の船なら疫病か食糧不足、それともこの海賊船が他の二隻に襲いかかろうとして返り討ちにあったのかだな」

拓斗や博樹は辺りを見渡して言った。

だけど、麗子は他の二隻のマストに翻るものに気付いた。

「争ったわけではないわ。恐らく三隻とも同じだわ」

指差す先には、黒い生地と中心に描かれたドクロマークを…

「三隻とも海賊船なんて、この楽園は田端さんたちの戦った戦場になる前は海賊たちの巣窟だったのか…?」

「だとしたら、どうやって、この狭い沼に入り込んだだろう?」

「わからないわ。だけど、この場所には新しい謎があるみたいね」

六人は手分けして船を調べた。

すると奥に通じる通路があり、骸骨が横たわる甲板をゆっくりと足を進めた。田端さんの時に一度はびっくりしたが、しかし、人の遺体は何度見てもいいものではない。しかも、難破船にこれだけの人数なのだから、まるで、ホラー映画だ。

「なんか、ゲームや映画ならコイツらが復活して襲いかかってくるんだよな」

拓斗がぼそっと呟くと、怖がりのはるみが、

「もう、おっかないこと言わないでよ。拓斗のおバカ!!」

厳しく怒る。

「まったくだよ」

ちなみに、翔もホラー系は大の苦手だ。

“ごめん”と謝る拓斗、だが、慎重に進んでいたが六人で一歩進んだ時だった。

“バキッ”

「うわ」

「キャア」

「イヤ」

音とともに六人は落ちた。

埃が舞い散り、辺りに物が散乱する。

どうやら、船倉に落ちたようだ。

「いてて、みんな、怪我はないか」

「大丈夫よ」

「生きてるぜ」

「ここは?」

「船倉みたいね」

服に付いた埃を払い、辺りを見わすとたくさんの樽や箱が置いてあるが、どこか甘い匂いがした。

「なんだろう?」

麗子が床に零れた液体を指に付けて軽く舐めた。

「これは、ラム酒だわ」

「ラム酒?」

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