楽園23 夏雲からの誘い、ひと夏の花

「わぁ、雲が掴めそうだわ」

白い帽子が風で飛ばないようにカトレアは押さえた。

「本当だわ。まるで、風に乗ってどこまでも行けそう」

はるみが両手を挙げて、前と後ろと全身に風を浴びる。拓斗と博樹、翔、麗子は二人の後ろでシートに腰を降ろし、海から吹き込んでくる風を浴び、倒れる草花を見て、大自然の息吹を生命の営みに感動する。

「陽光を浴びて、海風に身体と心を現れる。まるで、天然のリフレッシュルームだ」

博樹は、ジュースを飲みながら、そんな美しい光景を見て、洒落たことを言う。

「あら、そんなリフレッシュルーム、家にも欲しいわ」

麗子も持ってきたワインをゆっくりと呑んだ。

彼女もかつて、フィンランドのサウナや台湾の温泉、地中海の青の洞窟など、世界各地の癒やしスポットに足を運び心身をリフレッシュさせたりしたことがある。ちなみに、一番美しかったのは、メキシコのグランセノーテだ。まるで、ゲームや映画の世界に入りこんだかのようだった。

LEDライトのような人工の照明ではなく太陽の光と水が折り重なり造られた大自然の青の世界だ。しかも、岩石がたくさん光るその洞窟は、財宝が隠されているかのような不思議な感じがする。

「セノーテは、マヤ文明の人々は泉の世界は、雨の神チャクがいると考え、供物を供えていたそうだよ」

拓斗が、グランセノーテを話した麗子に、かつて、漫画やアニメで見たシーンを思い出し話した。

麗子は、

「うそ、神聖な場所だったの」

博樹も隣で、驚く。

「まじか、おれ、家族と北海道の小樽の青の洞窟のダイビングしたことがあるぞ。神聖な雰囲気はしたが、麗子さんのメキシコの青の洞窟はそんな歴史があったのか…」

「うん、ちなみに、財宝や食べ物だけではなく、麗子さんたちみたいな美女を生贄に捧げていたそうだよ。映画や漫画でも見たことがある。ただ、残酷な儀式に思えるかもしれないが、それは、当時、その世界に生きる人々が、子孫や国の繁栄と平和を願っての習慣だった」

拓斗は、かつて、教育漫画で読んだガイドキャラの紳士が、作者の思いを代弁しているをそのまま、彼になりきり言った。

「また、僕も麗子さんや博樹みたく、青の世界を生きてみたいや」

「なあ、この島だったら、案外同じようなスポットあるんじゃないのか?」

翔が、これまでの島での生活や経験から、まだ、全部を知ったわけではないので、もしかしたら、どこかに秘密が隠されているかもしれないと言う。

拓斗、麗子、博樹も翔、ナイスアイディアとグッサインを送る。カトレアとはるみは、四人に“何をもりあがっているのと?”ひょっこりと覗き込んで尋ねる。

癒やしスポットを話していると聞いたはるみは、空から流れてくる雲を見て、オーストリア時代に友人たちと楽しんだ青く潮風が気持ち良かったボンダイビーチを思い出していた。

「休日は、みんなで泳いだり、サーフィンをしたわ」

「はるちゃん、昔から海で泳ぐの好きだったよね」

「はるみさん、魚捕まえるの上手だったもんな」

拓斗は、簡単な癒やしスポットと言えば、外国ではないが、

「僕、青の洞窟になるのかな?実は、僕も行ったことがあるんだ」

「拓斗も、北海道か沖縄か?」

照れくさいそうに笑うと、拓斗は言った。

「大阪の」

すると、翔とカトレアが、まさかと気が付いた。

「拓斗、天王寺にあるスパワールドのか?」

「正解!!」

ニヤリと笑って言う拓斗。

博樹と麗子は大爆笑する。

世界の大温泉と言われる大阪では有名な温泉施設だ。ちなみに、プールのスライダーは有名だ。

拓斗は、あることを思い出していた。

(スパワールドか、マヤさん、元気にしているかな)

マヤ…?















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