第四十四話「効率化」

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 西の洞窟ボス“スケルトンウィザード”

 討伐報酬


 スケルトンウィザードの骨粉 ×8

 スケルトンウィザードの骨 ×2

 スケルトンウィザードの思念 ×1

 スケルトンウィザードの杖芯 ×1


 西の洞窟ボス“スケルトンウィザード”

 ソロ討伐報酬


 なし

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「お、杖芯出たな。これは繭に渡しとかねえと。ソロ討伐報酬は相変わらずなし、か」


 ここは、スケルトンウィザードのボス戦フィールド。目的はソロ討伐報酬だ。


 あの後、ユズはソロ討伐報酬がなしなのはおかしいと言った。

 確かに、ないのならソロ討伐報酬の欄はいらない。なのに書いてあるのは、魂系のアイテムがドロップする可能性があるからだそうだ。


 一理ある。むしろ、その可能性は高い。

 そして、もしそうならぜひスケルトンウィザードの魂を手に入れたい。


「トパーズ、無理してないか?」

「慣れてきたそうです」

「慣れるもんなのか……」


 倒し方はほとんど変わらない。違うのは効率を考えているってとこだけ。

 そう、今やっているのは、スケルトンウィザードの高速周回だ。


「よし、もっかい行くぞ」

「はーい」


 ボス戦フィールドから転移してイワンの町中央の噴水へ。そこからすぐにボス前広場へともう一度転移。


 アウィンはNPCじゃないのか。と言われる前にすぐさまボス戦へ突入!

 ここが一番の効率化ポイントだな。


『ワレ、眠リヲ妨ゲル者、許サヌ。早々ニ立チ去ルガ良イ。立チ去ラヌノデアレバ……』


 スケルトンウィザードには一度も負けていないので最初のセリフはいつも初見の時と同じだ。

 そして、ここで大事なのはタイミング。


『排除スル!』

「走れ!」


 俺とトパーズは右側へと、アウィンとラピス(1/8)は左側へと走る。

 これで、開幕撃ってくる魔法が二つになるのだ。


 アウィンの方はもちろん、避けるのに問題は無い。俺の場合は、トパーズがいることからお察しの通り。


「えっほ、おぇ……。これは慣れるもんじゃないな。何度やっても辛い。てか、気持ち悪い」


 トパーズに押されて初めの位置近くまで戻り、顔を上げた時には全員の配置が完了。

 三時にトパーズ、六時に俺、九時にラピス(1/8)、そして十二時にアウィンだ。これは、変わらない。

 しかし、その位置は微妙に修正されている。具体的に言えば、俺とラピス、アウィンがトパーズのいる三時に近付いたのだ。

 全員が壁にピッタリくっつく必要はない。俺達の形作る四角形の中心に来てくれさえすればいいんだからな。

 もう一つ狙いはあるが、その前に。


「《スラッシュ》!」


 意外と役立つ《鞭》スキル技、スラッシュ。射程を二倍に伸ばせば何とか成金骸骨に当たるようになった。

 これで、テレポート発動。次は攻撃が当たるはずだ。


 しかし、どうやら《スラッシュ》の射程はどれだけMPを注ぎ込もうとも、二倍以上に伸ばすことができないようだ。よく分からん。

 やっぱこれ、使わねえな。


 骸骨出現と同時にアウィンがトパーズの元へ。

 トドメは初見の時と同じ方法を使う。これは、ラピスとトパーズ、二人がやると言ってきたのだ。俺は強要してないぞ。

 ラピスには条件を出されたがな。自分の一部をずっと持っておけ、だとさ。そこはかとなく、ヤンデレ臭が漂うのは気のせいだろうか。


 そんな訳で、今、俺の頭にはラピス(1/8)が一体。トパーズには六体くっついている。

 俺を犠牲にした作戦を組むと、ラピスまで巻き込んでしまうことになった訳だ。これでは、下手に《即死回避》が使えない。ラピス、恐ろしい子。


 さて、出現した成金骸骨が次に行う行動は魔法攻撃のはず。

 トパーズとアウィンは避けられる。問題は俺とラピス。


『ヵカヵカ』

「《土球》!」


 魔法を撃たれるタイミングで《土球》を放つ! 狙いは九時方向にいるラピス(1/8)!


「俺とラピスに撃って来たか。一番面倒なやつだが、もう対策はしてあんだよ」


 ラピスを狙った《土球》にラピスはぴょんとぶつかりに行き、《粘着》で自分を固定する。結果、《土球》に連れられて大きく移動することができるのだ。

 もちろん、魔法も避けられる。四角形を狭めたのは、俺からラピスに向けて《土球》を撃った時、後ろへ飛んでいく距離を稼ぎたかったからでもあった。


「《火球》」


 そして、俺へと敵の火球が着弾する前に魔法が使えるようになっているから、それで撃ち落とせば終了だ。

 トパーズの突撃も発射。無事貫通。


 これが一連の流れとなっている。実はこれ、昨日ユズ達と話してから次の日になってんだよな。そろそろ頼むからソロ討伐報酬なしはやめてくれよ。


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 西の洞窟ボス“スケルトンウィザード”

 討伐報酬


 スケルトンウィザードの骨粉 ×7

 スケルトンウィザードの骨 ×3

 スケルトンウィザードの思念 ×1


 西の洞窟ボス“スケルトンウィザード”

 ソロ討伐報酬


 スケルトンウィザードの魂

 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 お?


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 スケルトンウィザードの魂 レアアイテム


 スケルトンウィザードの魂。

 使用すると《魔法複数展開(Ⅱ)》を

 取得する。

 譲渡、売却不可


 (一人のプレイヤーにつき

 一度のみ入手可能)

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 おおおおおお!


「来た! ついに来た!」

「お兄ちゃんが一人で叫んでます。同じことの繰り返しで壊れちゃいましたか!?」

「こんなんで壊れねえよ。狼に腹ちぎられた時の方がよっぽどキツいわ」

「じゃあ、そういう趣味ですか?」

「な訳あるか! どんな趣味だよ!?」


 いきなり奇声を上げることに快感を覚えるってことか? アブノーマルすぎんだろ。

 ま、そんなことはどうでもいい。早速使用だ!


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 プレイヤー名:テイク

 種族:ヒューマン

 ジョブ:テイマー(Lv.18)

 HP  1000/1000

 MP  2466/3170 (used 27)

 ATK  10(+5)

 VIT  10(+6)

 INT  10

 MIN 10

 DEX  10(+6)


 スキル

 《鞭》Lv.1

 《火魔法》Lv.1

 《水魔法》Lv.1

 《土魔法》Lv.1

 《風魔法》Lv.1

 《光魔法》Lv.1

 《闇魔法》Lv.1

 《HP自然回復》Lv.4

 《MP自然回復》Lv.1

 《即死回避》Lv.1

 《魔法複数展開(Ⅱ)》Lv.☆

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 《魔法複数展開(Ⅱ)》Lv.☆


 魔法を一度に二つまで使用できる。

 同時に二つの魔法を使用した場合、

 一定時間、攻撃魔法使用不可


 (このスキルのレベルは上がりません)

 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 おおう、なんかデメリットつーか、仕様が鬼畜だな。二つの魔法を同時使用したら一定時間魔法使えねえとか。

 成金骸骨も同時に二つの魔法を撃ったらインターバルがあったな。あれはこの一定時間魔法使用不可ってやつのせいだろう。

 あ、攻撃魔法使用不可か。ってことは便利魔法は使えるじゃん。なんだ、そう考えればそこまでヤバい訳でもないな。


「《火球》《水球》」


 お、出た出た。二つ目の魔法を出す時になんか違和感があったな。まだ一つ目が消えてないぞ、っていう警告か?

 確かに、一つずつしか撃ってないつもりだったのに攻撃魔法使用不可にいきなりなったら焦る。違和感があれば魔法を中止すればいい、と。

 なかなか良心設計だな。


「《土球》」


 ……うん、出ない。

 別系統の魔法ならできるかと思ったんだがそんな甘くはないらしい。


 《火種》は出すことができた。やっぱり便利魔法は使えるんだな。覚えとこう。


「《火球》《火球》《火球》《火球》《火球》」

「ラピスさん、トパーズさん、お兄ちゃんはもうダメみたいです。でも、見捨てないであげてください。一緒に介護頑張りましょう……!」

「……《火球》《火球》《火、お?」


 アウィンに何やら謂れのない決めつけをされたところでやっと魔法の再使用ができるようになった。

 約十秒ってとこだな。


「お兄ちゃん。大丈夫です。お兄ちゃんにはわたし達がずっとそばにいますから」

「六分だけな」

「だから、短いですっ!」


 懐かしいネタだな。アウィンをテイムした日のことか。


 とにかく、スケルトンウィザードの魂は手に入れた。

 次はユズ達と一緒に、北のボス“沼の主 異形の泥蛙マッドマスター”撃破だ!


 ……の前に、一回ログアウトして寝るかな。

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