041 参入者へ3

 さて、ゴブリン達がどこに居るかは分からないんだよね。捜さなきゃ行けない。

 でも、僕は探索術を使えない。スキルパスは開いてるんだけど、どーしても技能が生えないんだよね。まぁ目覚めてからまだ3ヶ月だし、焦るもんじゃないけど。

 それ以外の、ええと、例えば狩人的な技能も僕には無いね。

 でもまぁやりようはある。

 まずは相手がゴブリンだということ。


 ゴブリン。

 いわゆる、魔物。小柄な人型をしていて、総じて知性は低い。変異体多数。

 鳴き声でコミュニケーションをしてるようだけど、その言葉はまだ解析されていない。普通に生殖も行うが、エーテル淀みやダンジョンからスポーン(発生)することもある。

 他にも修正についての話なんかもあるけど。重要なのは「魔物」って事。


 魔物は、かつて妖精だったり霊的な要素に傾いた生き物が「幻魔」によってゆがめられた存在だと言われている。復活歴の前の大戦期の遥か昔、大魔法期にはまた違った存在だったと聞いているけども。

 まぁそれは良いとして。

 幻魔は世界をゆがめ、神を殺し世界を変えた。様々な理を変えたんだ。魔物もその一端。ゴブリンだってそう。もうほとんど生物として根付き始めているけどね。

 つまり、幻魔の眷属であるゴブリンは、存在するだけで周囲を「歪める」んだ。一般では瘴気とも言う。

 僕には微量な瘴気は見えないけど、四大術を使えば……。


「エーテルクリアリング」


 僕を中心とした直径10mの半球。そこに薄く繊細にエーテルを広げる。まるで土地の標高を測るように均していって……


「ステイニング」


 半球の中が桃色になったのを確認し、エーテルが平らな部分だけ除いていく。魚の小骨を取るように慎重に進めると、ゴブリンの動いた後が奇怪な彫刻のように浮き出てきたよ。


 あはは、黒剣団の皆さんぎょっとした顔してるね。特に術の使えるお二人が。クリアリングもステイニングも僕のオリジナルじゃないけど、この組み合わせ方はマイナーかも?

 探索術ほど便利じゃないけど、今みたいな捜索だと役立つかもね。皆で一緒に見る事ができるし。


 さて、もう一工夫。


「タイムスライス」


 周囲にキュルキュルと張り詰めた皮をこするような音がすると、ピンク色のゴブリンが二体現れた。二体は僕に気づきもせずに畑にしゃがみ込むと、何も作物が無いところを一生懸命掘り出した。

 二体は劇でもしてるかのように空中に何かを放り込み、袋を背負うかのような動作をすると森の方へ歩いていこうとして、消えた。


「消えた?!」


 と叫んだのは僕じゃないよ、黒剣団のリーダーさん。ええと、ゴードンさんだった。

 ヅカヅカヅカ! っと怒ったようにやってきて


「アレは何だ!」


 と両手で胸ぐら掴んできたよ。え、ちょっと苦しい。


「ふつ、うの」


 喉が閉まりそうだったので、何故か知ってる護身術で腕をこじ開けて脱出。ぽんと飛んで距離を取った。

 後から他の黒剣団の人も来た。


「四大術ですよ。クリアリングとステイニング、タイムスライスというオリジナルの組み合わせです」

「邪法じゃないのか?」

「えーと」


 参ったな、びっくりするだろうなと思ってやったけど、まさかこんな風になるとは思ってなかったよ。

 ゴードンさんはまだ興奮してるみたいだったので、他の人に視線を向ける。


「あ、あのな、リーダー。俺はあんな組み合わせ方は初めて見たけどさ。あの術は普通の術だと思う。練習すれば俺もできる」

「……ほんとか? ロブ」

「う、うん」


 あの気弱そうな四大術者の人はロブさんね。覚えたよ。


「済まなかった」


 ゴードンさんはあっけなく僕に頭を下げた。


「お前には、色々と暗い噂がある。その中には邪法や魔物との取引を示唆する物もあった。お前は単に窓口で、大人数の犯罪組織が裏にいるという話もな」

「中々酷い話ですね」


 僕は喉をわざとらしくさすりながら言ってみた。色々言われてるだろうなとは思ったけど、そこまでだったかー。


「それで僕が見慣れない事をしてるから、つい、と」

「すまん」

「そもそもあなた方は不正がないか見守るのが仕事の筈。糾弾は組合の仕事では?」

「すまん」

「悪気が有ったわけじゃ無いんだ。ただちょっとリーダーは正義感が強くって……」

「ロブさん、悪気がなければ良いという物じゃないでしょう?」


 あぁもう。


「まぁいいですけど。採点は公平にお願いしますね? 後、今後もちょっと変わった事しますけど、後で解説しますから一々突っ込んでこないでくださいね?」

「分かった。気をつける」


『傑作だな! おい、サウル! お前の方が年上みたいじゃねぇかよ!』


 と、クールに見守ってたように見えるフラム様。裏では大受けだった模様。


 さて、森の奥に進んでいった事、とりあえず二体が動いてるのは間違いなさそうだ。じゃぁ、後は。ゴブリン達の進行方向に絞って術を掛ける。

 するとゴブリンのすねから下だけが現れて、スタスタ歩き始めた。全身見る必要も無いだろうしね。

 後ろがざわりとしてたけど、無視。もうめんどくさいから引き離そうかな。

 そう思ってたら、さすがに気配が消えたよ。うん。


 しばらく進むと、木の枝や下生えが雑に乱れている事が増えてきた。近い。

 音を立てないように気をつけて移動する。物陰を選びながらね。

 見つけてしまえばどうとでもなると思うけど、逃げられたら困る。


「ギギッ!!」「ギャギャッ!!」


 鳥のような、猿のような声の方を見て見ると、2m程の崖というか段差に、穴があった。そこにゴブリンが、四体いた。元気で、何か武器を持っている2体と、穴の付近でぼーっと動きの鈍い二体。

 鈍い方は、村での戦いを生き延びたのかな?

 まぁあれなら行けるかな。


 ただ、真っ正面から突っ込んでいけばさすがに怪我をしそうなので、ここでもう一工夫してみよう。

 実戦投入は初めてだけど、魂倉でシミュレートして泡倉でも練習してる。問題は無い、はず。

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