あとがき

1 第1部『聖エルザクルセイダーズ 集結!』

※ 「あとがき」では、まず文庫版『聖エルザクルセイダーズ』シリーズ4巻のあらすじを紹介します。

 この作品の大きな特徴である、複数キャラによる語りと交錯するストーリーが絡み合って展開する特異なとたたみかけるスピード感は、残念ながら本編でしか味わうことができないものです。それを、作者という単一の視点から、作品の意図と構造が最大限に見て取れるようにまとめる試みにトライしました。

『聖エルザAnniversary』という最新作が芽吹いた豊かな土壌がここにあります。具体的に『Anniversary』内で言及されている場面やエピソードも、かなりの数にのぼります。最新作をより興味深く楽しんでいただく助けになれば幸いです。

 また、長い年月が経ち、本編の記憶が薄れつつあるという方は、もちろんこの機会に貴重な記憶を蘇らせていただきたいと思いますし、30年前から現在に連続する「聖エルザ」という時空間を少しでもリアルに感じ取っていただければと思います。

      ――作者・松枝



〈プロローグ「さようなら、パリ」―― Farewell in Paris〉

 真冬のヨーロッパで商社マンの父と母を突然失ってしまった織倉美保(ミホ)。悲しみを抱えたまま、母の母校・聖エルザ学園を受験するために一人帰国する。母が残した手紙には「そこにはあなたをあたたかく迎えてくれる人たちがいる」とあった。


   ※   ※   ※   ※   ※


 聖エルザに無事入学したミホは、最初に接触してきた同級生の滝沢礼子とサークル棟で落ち合う約束をする。だが、そこで目撃したのは、滝沢が何者かにどれかの部室に強引に連れ込まれるショッキングな場面だった。気絶したミホを発見したのは、自分と同じ五角形のペンダントを持つ三人の少女だった。


 白雪和子(姫)は代々聖エルザの学園長を受け継いできた白雪家の跡取り娘。乙島恵利(オトシマエ)は「いつか聖エルザのお役に立つために」と母親に鍛え上げられた下町の佃煮屋の娘。小栗まなみ(チクリン)は前年の編入試験でやって来た長崎の料亭のオシャベリ娘。彼らはなんと、学園にふりかかる大きな厄災に備えるために集結した仲間だという。


 同じペンダントを持つ滝沢を探す手がかりを求めて、姫とオトシマエは彼女の家とされる高尾山中の一軒家へ。しかしそこは荒れ果てた廃屋で、怪しげな男たちが出入りしており、姫やオトシマエの存在まで挙げて五角形のペンダントを奪う物騒な相談をしていた。姫が滝沢の連れ込まれた部屋が美術部室であることを推理し、男たちの包囲網をなんとか突破した二人は、姫が奪った〝敵〟のバイクで聖エルザへと急行する。


 偶然にも同じく美術部室を探り当てたミホは、チクリンと二人、部室のカギを求めて真夜中に美術教師レオポルド教授の教官室に忍び込む。しかし、教授に発見されてヌードモデルになるように強要されてしまう。窮地を救ったのは、昼間ミホをつけ回した怪しい長髪長身のカメラマニアの男子生徒だった!


 美術部室にたどり着いたミホとチクリンは縛られた滝沢を発見するが、ふたたび現れたカメラ男から「滝沢のペンダントは実はボクのものなんだ」と告げられる。彼は宇奈月京平(コックリさん)と名乗り、聖エルザの卒業生である姉からそれを譲り受け、代わりに聖エルザに編入してきたのだという。滝沢は三人の隙をみて深夜の学園構内へと逃げる。そこに姫とオトシマエも駆けつけて追跡するが、滝沢は驚くべき大胆な方法で逃亡に成功する。


 聖エルザを狙う〝敵〟の動きは、伝統と格式を誇る女子校だった学園がこの春から強引に共学化されたことにすでに大きく表れていた。教頭の森崎やミス・ランドルフなど手先の教師たちを使って生徒たちの締めつけをはかり、屈強な怪しい学ラン集団まで送り込んできていた。


 翌日、〝敵〟の指示を受けたらしい教頭がオトシマエに、新規則を盾に空手部を解散して部室を明け渡せと迫る。オトシマエは敵の手先の中でも最強と目される水谷薫という巨漢と対決することで廃部をまぬがれようと決意する。


 その危機を姫に知らせに秘密のアジト『開かずの部屋』に走ったミホは、そこで「M・Oへ」と始まる脅迫状まがいの手紙を発見しておびえる。姫とコックリにそのことを告げるが、オトシマエと水谷の決闘が始まってしまう。多くの生徒たちが見守る中、激しい真剣勝負はなんとかオトシマエの勝利に終わり、空手部も10人の部員を確保して存続が決定する。


 だが、オトシマエは礼拝堂まで来て倒れ、『開かずの部屋』で医師のタマゴだというコックリに介抱されて外道拳の〝夢殺〟という技をかけられたことが判明。あの勝負は、意外にも水谷が見かけの勝ちをオトシマエに譲ったものだった。姫は脅迫状が実は同じM・Oの頭文字のチクリンあてだったと推理し、ミホとエルザハイツのチクリンの部屋に出向いて暗号を解くが、〝敵〟の手先のミス・ランドルフに無断侵入で捕まってしまう。


 そこを助けてくれたのは、空手部のメンバーになったばかりのキャティや三バカたちだった。彼らも協力して行方不明のチクリンを捜索に取りかかる。現場に残された謎の手がかり(それは意外にも滝沢の仕業だった)から、姫はチクリンが連れ込まれた建物を特定していく。


 ニセ手紙でおびき出されたチクリンは〝敵〟に誘拐されていた。後から潜入して捕まった滝沢と共闘して抵抗するが、最強の手先・水谷が現れ絶体絶命のピンチに。しかし、こんども水谷が教頭らを裏切り、二人を助ける。滝沢はペンダントを奪い、救助に駆けつけた姫たちの前から水谷とともに姿を消す。


 滝沢は水谷に、チクリンを助けたのは「バランスが崩れてしまってはこまるから」だと言い、自分が〝敵〟と姫たちの両方を憎む理由である過去の忌まわしいいきさつを告白。水谷はそれを聞いて教頭に渡そうとしていた退学届を破り捨て、「おれには戦う理由がなかった」とオトシマエに勝ちを譲ったわけを説明する。ではなぜ自分を助けるのかと尋ねる滝沢に、「激しい、孤独な憎悪を持つ人間に味方する。それが、おれが探し求めていた運命というやつかもしれん」と水谷は言い、ここにミステリアスで強力なペアが誕生する。


『開かずの間』にもどった姫、ミホ、チクリンは、回復したオトシマエとコックリに合流。〝敵〟の姿はようやく見えてきた程度だが、戦闘部隊と期待する空手部のメンバーも集まり協力関係が確認された。五人はあらためて「聖エルザクルセイダーズ」と名乗りを上げ、固い団結と学園を守る誓いを新たにする。


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〈インターリュード「一期一会」―― Words of Wisdom〉

 学園近くの屋敷に住む姫は、ミホを広大な和風庭園の一画にある茶室に招く。「一期一会」という言葉をミホに教え、人との巡り会いも、戦いも、高校生活も、人生で一度きりの出会いだと説き、未知の敵と大きな謎に挑んでいく覚悟をうながす。

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