魔導商店

 仮のタイトルは『魔導商店』。

 剣と魔法、モンスターがいる世界だが、主人公は8才くらいで初級魔法しか使えない。

 外の世界は戦争やらモンスターやらと危険がいっぱいだが、主人公は子供。

 戦闘や冒険に憧れるも、戦いに使える魔法はない。

 そして村には大魔導師と呼ばれる男がいた。

 しかし男は村でもホラ吹きと言われている鼻つまみ者。だが究極の魔法をマスターしているという男の話を主人公達は真に受けてしまう。

 その男に弟子入りしようとするが、それなら授業料を持ってこいとあしらわれ、自分達でお金を稼ぐ方法を模索する。

 自分達にできる魔法は光を出したたり、火をおこしたり、水を出すくらい。

 せいぜい見世物にできるくらい。なら見世物にしよう。魔法で芸を見せてそれでお金を稼ぐんだ、と大道芸人になる。

 しかしこの世界で魔法は普遍的なもの。工夫を凝らす必要がある。

 主人公達は知恵を絞ってささやかな魔法を駆使しながら、なぜ自分たちは魔法を学びたいのか、という課題に向き合う事になる。

「そうして芸をしながら街を渡り歩いていく、少年たちの成長物語ってわけだ」

「はあ……、ゲームになるんですか? それ」

「極端な話、物語を見せるだけならアドベンチャーゲームでも何でもいいんだがな。戦闘が前提なんだったな」

「そうです。RPGである事は決まっているんですよ。戦闘のあるゲームで宣伝展開できる事が前提なんですよ。これ、戦わないじゃないですか」

「販元……、販売する会社が別なんだな。今売れ筋だからだろ。何でもいいから戦闘するRPG作れってわけか」

「夕方までに通常画面と戦闘画面の仕様を出せと言われました」

「まあ、どんな作業者を集めないといけないかが見えないと始められないからな。早い話が3Dなのか2Dなのかだ」

「どっちの方がいいんですか?」

「できるかどうかに関しては、どっちのデザイナーも社内にいるんだからできるだろ。後はどっちの方が適切かだ。お前さんもゲームが好きでこの会社に入ったんだろ? どんなゲームを遊びたい?」

「わたしはやっぱり3Dですね。その方がカワイイです」

「だが一枚絵の方が、ディティールの高い絵にできるぞ。キャラクターの表情をよく見せられるしな」

「じゃあ。2Dの方がいいんですか?」

「3Dはキャラクターの動きをよく見せられる。カメラの向きを変える事で同じ場面でもカットを切り替えてメリハリを付けられる。マップの仕掛けも多彩にできる」

「どっちのがいいんですかぁ~」

「どっちがいいってのは無いんだよ。どっちにしたいのかだ。どういうゲームにしたいのかはお前さんが決めるんだ」

「でもまだどんなゲームに出来るのかも分からないし……」

「まあ、そうだな。じゃあどんなゲームにしたいかから考えるか。このゲームに戦闘があるとすると、どんな戦いになると思う?」

「子供達が、芸で稼いだお金を狙って襲ってくる暴漢を倒すって感じですかね」

「全然子供向けじゃないなそれ。だいたい8才の子供が暴漢に勝てるのかよ」

「そこはほら、魔法使いですから」

「魔法はみんな使えるだろ」

「じゃあ、主人公が天才って事にして」

「何の為に旅をしてるんだ?」

「それは、魔法を学ぶために……、あれ?」

「目的が見えなくなるだろ。そもそも主人公は何の為に、何に向かって進んでいるのかがハッキリしてないと、プレイヤーは始まってから何をしたらいいのか分からないだろ」

「そうですね……」

「一時期は敢えて目的を与えず『何でもできるゲームです』というウリが流行った時代もあるけどな。今のユーザーにはウケない」

 今はダンジョンを探検させるのにも自動マッピングがないと通らない。

 昔はマッピングする楽しみというものもあったものだ。そうやって隠し部屋がある事を自分で発見した。それを見つけた時のうれしさはひとしおだったものだ。

 だが今はマップが画面に出るので、不自然な空間があれば一目瞭然だ。

「数年後には、タイトル画面でスタートボタンを押せば一気にエンディングまで進むゲームが主流になるさ」

「それただの映画じゃないですか」

「そうだな。でもほとんどそんな感じのゲームが売られているのも確かだ」

「それで、結局戦闘はどうするんですぅ?」

 話が逸れた、と髭の男は仕切り直す。

「要は戦闘イコール殺し合いって定義もないって事だ。必要なのは目的だ。主人公達が何に向かって進むのかだ」

 ここでの一番小さな目的は、授業料にする為のお金を得る事。


 普通のゲームでは敵を探して、戦闘が始まり。攻撃して体力を奪ってゼロにしたら倒してお金がもらえる。

 反対に攻撃されて自分の体力がゼロになるとゲームオーバー。お金が減るなどのペナルティがある。


 お金を得る目的は共通している。これを大道芸人の設定に当てはめて改変すると、


 観客を探して、見つけたら芸を見せる。技を披露して観客の満足度を上げ、一定量を超えたらウケて終了。お金が貰える。

 反対に野次が飛んできて気力を奪われ、ゼロになるとゲームオーバー。金返せコールで逆にお金を取られる。


「という風に転換できる」

「はあ、よく分かんないですけど」

「見た目が変わるだけで、戦闘のシステムは全く同じものが使えるんだ。他のゲームの戦闘システムの仕様書があるだろ。それのパラメータだけ書き換えて提出しろ。敵の体力を満足度とかな。どうせ今日出すのは暫定版だ」

「どれがいいのか分かんないですよぅ」

「じゃあ、オレが今回やったゲームの仕様書をやる。3Dだし、このゲームならちょうどいいだろ。魔法がメインならパーティクルのシステムがそのまま使える」

「パ……、パーティ!? クルクル?」

「点の集まり……まあ、よくキラキラ光ってるヤツだ。魔法なんかによく使う。3Dの技術ってわけじゃないが、3Dの方が活かせるからな」

「わたしは今、目が点になってます」

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