そして夜明けの休憩室

「おい」

「きゃあっ! ごめんなさい! シナリオはありません! その、発注されてなくて! わたしにも何が何だか……、夢か」

「お前な。仮にも新卒の人間が、一応大御所に分類されるオレに仕事させといて、自分だけぐーすか寝るか?」

「ごめんなさい。でもわたし何もできないし、それなら起きてじっとしてるより、寝て体力を温存しといた方がいいかと思って」

「お前十分神経図太いと思うぞ。それでだ。一応お前さんのプロジェクトの事も調べてみたよ」

「へえ、分かるんですか?」

「現行のプロジェクトの情報は社内ホームページに上がってるからな。そこでだ。ほれ、これを持って行け」

「USBメモリですか? 何の?」

「昔アニメのプロジェクトが頓挫した事があってな。その時の脚本だ。頓挫したとは言えシナリオは完成してる。ギャラは支払い済みで所有権は会社の物だから使っても大丈夫だ。今では知ってる者も少ないだろ」

 これを持って行けば一応の体裁は整う。

 だが一応の提出物として出すな。いい加減な物を真面目な会議に出す奴はいない。出す以上、これは絶対面白いゲームになる。その姿勢だけは絶対に崩すなと念を押す。

「でも、自信もないのにあるフリなんてできませんよぅ。わたしウソつくのも下手で」

「それならオレを信用しろ。オレが絶対大丈夫と言ってるんだ。だから絶対大丈夫だ」

「えー、よく知らないのに信用なんてできませんよ」

「ぶっ殺しちゃうぞてめぇ! 誰の為に見繕ってきたと思ってんだ」

「分かりました。やってみます」

「んじゃ作戦を教えておくぞ」

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