死闘の果てに

「いやあ、まいったまいった。やっと終わったぞ」

「九条さん。随分お久しぶりですね」

「結局……、何ヶ月だ? 予定より、かなり延びたな」

「お疲れ様でした」

「それで、どうだ? 例の小説は。もう送ったのか?」

「落ちました。でもゲームの企画として採用してくれる事になりましたよ」

「そりゃ、よかったな」


「次は、僕の人生をモチーフにした小説を書こうと思います」

「人生ってお前そんな歳じゃないだろ」

「そうなんです。人生経験薄いからこそ、一番よく分かってる自分をモデルにしようと思うんです」

「そうか、それならいいんじゃないか」

「九条さんも出していいですか?」

「ん、ああ。いいけど、若くてイケメンにしてくれよ」

「任しといてください。テーマは何がいいかなぁ」

「人生がモチーフなんだから、半分ドキュメンタリーだろ。なら深く考えるな。むしろ読者に考えてもらえ、お前の人生のテーマって何なのか」


「そうかー、早く聞きたいですね。文体はどんなのがいいですかね、一人称? 三人称?」

「読みやすいのは一人称だけどな。だが主人公の頭が悪い設定だと状況描写が難しいぞ。主人公の認識で世界が描かれるわけだからな」

「なるほど、なら今回は一人称で大丈夫ですね」

「三人称でも二人だけの台詞の掛け合いを主体にするとかでそれなりに読みやすく……って、おい、聞いといた方がいいぞ」

「あ、はい。大丈夫ですよ。思いついた事を早速メモしとかないと」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る