幼き踊り子

 ここの踊り子は妖精だという。両親は早くに亡くなり、人間の夫婦に育てられた。その育ての親も亡くなって、ここに引き取られたそうだ。

 面倒をみてもらう代わりに、踊り子として働いている。今ではかなりの人気らしい。

 舞台の奥のカーテンの間から白く小さな手が現れる。暗い部屋の中でその手は空中に浮いているかのようだ。

 その手は空間を撫でるようになめらかに動き、風に弄ばれる羽のようにふわふわと舞った。

 やがてその手に導かれるように少女が姿を現わす。

 白く、細い体は体重を感じさせないような軽い動きで舞い降りるように現れた。

 ガラス細工のように煌びやかな長い髪に、金で細工されたサークレットが映える。切れ長の目の中の大きな瞳はやや赤く、耳が細く長い。妖精である事は見て取れた。

 彼女の纏う舞台衣装はレースのように透き通り、幼い体の造形をはっきりと……、と突然シーツを持った髭面の男が舞台に乱入し、抱きつくように踊り子をシーツで包む。

 踊りを中断させられた少女は驚いた顔で何が起こったのか分からないように目をパチクリさせた。

 客席からは一斉にブーイング。

「うるせー! お前らこんな子供に何させてんだ!」


「やだなぁ、衣装にまでケチつけるんですかぁ?」

「バカヤロウ。透けたらマズいだろうが透けたら。十三歳くらいの設定だぞ」

「九条さん好きじゃないんですか? そういうの」

「いや好きだ。違うそうじゃねぇ。倫理規定を知らんのかお前は」

「どさくさに紛れて抱きついてましたよね」

「うるせー、娘を守る親の心境だっ!」

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