熱き拳

 薄暗い円形の部屋に明かりが灯され、中央の円卓が浮かび上がった。

 大理石で出来た立派な円卓に一行とこの国の王とその側近が着く。一緒に入室した近衛兵を退室させると、シグマが口を開いた。

「マカダミアン王、接見の場を設けて頂き、感謝致します」

「前置きはいい。それでお前達の話だが……」

 王を名乗るには若すぎる男は渋い顔で言い淀む。

 圧政を強いた前王を力で打ち倒し、民を解放した英雄は民の強い希望で新王国の主となった。

 祭り上げられるように王となったこの男は、政治や敬意を払われる事が苦手らしい。

 戦好きでまだ若いこの王ならば、自分達の話にも耳を傾けてくれるのではないかと近づいたのだが。

「信じられんな……」

「お疑いはごもっともです。ですが私達も未曾有の危機ならばと、こうして無礼を承知で進言しているのです」

「だろうな。処刑される覚悟無しで出来る事ではない。接見の作法も知らないような連中が、謀略を巡らせられるとも思えんしな」

 と言って、指先にグラスを乗せ器用に回しているリックスを見る。

 グラスには果汁で風味を付けた雪解け水が入っている。どちらもこの国では高級品だ。零しても割っても処刑されるかもしれないほどの品だ。

 シグマとホーリーは冷や汗をかいた。


「しかし我が娘、ヒートナックルを救ってくれた事は感謝している。それで……」

「ちょっと待て」

 と低い声が王の言葉を遮る。む、と眉根を寄せた王は声の主を睨みつける。

 いつのまにか円卓に紛れ込んでいた髭面の男は王の視線を気にせずに続ける。

「今何て言った?」

 王は顔をしかめながらも答える。

「我が娘、ヒートナックルを救ってくれた事は」

「娘って事は姫さんなんだよな?」

「そうだがそれがどうした? なんだこの無礼な男は、お前達の仲間か?」

 シグマとホーリーは冷や汗をかきながら目を閉じて声を揃える。

「いえ、知りません」


「マカダミアン王ってのもかなり変だが、ヒートナックル姫ってのはないだろ」

「衛兵!」

 王が声を上げるとドカドカと近衛兵が部屋に入り、後ろから髭面の男の首に剣をあてがう。

「この無礼者の首をはねよ!」

 剣が一閃し、

「髭面の男の首が宙を舞った……」

「待てって言ってるだろ」

「なんですか。九条さんが世の中の姫や王子の名前には面白い物もあるって教えてくれたんじゃないですか」

「そうだが、なんで英語なんだよ。『熱い拳』だぞ」

「その国の言葉ですよ。たまたまそう聞こえるだけです」

「なんでマカダミアンからヒートナックルが産まれるんだ」

「産んだのはお妃さんです」

「んな事はいいんだよ。名前ってのは結構重要なんだぞ。架空の物でもモデルにする国を決めて、その風習に従って決めると違和感がないんだ」

「そうなんですか、パーティの名前も結構適当ですよ」

「主要メンバーぐらいは好きな物を付けていいさ。お前さんはまずキャラを好きにならなきゃ。それでも恥ずかしい間違いをしたらいけないけどな」

「まあ、仮って事で。後でちゃんと決めますよ」

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