この世の楽園

 自然の木々が生い茂り、野性の動物が暮らす森。

 その森に降り注いだ雨は小川となり、山を下り、自然石で作られた用水路に流れ込み、大理石と水晶で作られた大きな部屋に送られる。

 その水のほとんどは中央に据えられた池に注がれ、残りは動物を象った像の口から流れ落ち、部屋を訪れる女性のキラキラと光を放つ髪と透き通るような肌を清めた。

 この神殿に作られた清めの場は連日多くの女性が訪れ、その身を清める。


 大地母神を信仰する神殿のため、清めの場に入る事を許されるのは女性だけである。

 しかし種族間の隔たりを持たないため、ここでは人間と妖精が互いに身を清め合い、同じ水に身を浸す。

 明るい談笑とせせらぎが音楽のように奏でられるこの空間は、世の男達が決して知る事のないこの世の楽園だ。


 その楽園を見守る大地母神が描かれた大理石の壁は、なんの予兆もなく突然砕け散った。

 轟音と共に大理石の破片が飛び散り、悲鳴がこだまする中、壁に開いた穴から黒い影が飛び込んで来た。

 影は部屋の中央に据えられた池に真っすぐに突き刺さり水柱を上げる。

 部屋の壁に開いた巨大な穴から大きな影が姿を現す。自然の精気に満ち溢れた部屋の雰囲気とは正反対の、重厚で、黒く、大きな甲冑だ。

 全身を隙間なく覆い、生物を感じさせない鎧は、ずっしりと、ゆっくりと破片を踏み潰しながら部屋の中央へ歩み寄る。

 女達は何が起こったのか分からず、この鎧の標的にならないよう壁に身を寄せ口を閉じた。

 鎧が池の前に立った瞬間、「ざばぁっ」と黒い影が飛び出す。

 物凄い勢いで池に叩きつけらた慣性からようやく解放されて起き上がった黒い影、リックスの赤い目に映った光景は、分厚く重い鉈のような鉄の固まりを振り上げている鎧だった。

 とっさに持っている剣で頭上を守る。

 がんと重い音と共に剣が押し下げられ、その両刃はリックスの肩に食い込み、その足元の大理石は衝撃に耐えられずに亀裂を走らせ、べっこりと窪んだ。

 鎧の反対側の腕が下から音を立てて飛んでくる。

 リックスは下方向に荷重がかかった状態で、その突き上げをまともに受けた。

 ずしん! と後ろに飛ばされる事なく胸部に全衝撃力を受ける。

 口から噴出した夥しい量の血は、清めの水を朱に染めた。

 女性達は、足元に流れてくる水の色に恐慌し少しでも高い位置に登ろうとする。


 鎧はリックスの首を刎ねるように鉈を振るう。

 リックスは途切れそうになる意識の中で、飛んでくる鉈と首の間に大剣を差し入れた。

 激しい衝撃音と共にリックスの体が回転して飛び、部屋の壁を破壊して外に飛び出す。


 致命傷を与えた事を確信したのか鎧はそれ以上追う事はせず、女達には一瞥もくれずに出て行った。


「つーかどうしても裸出したいんだな」

「湯気で見えないって事にしといてください」

「この世界は湯を浴びる習慣ないだろ。基本水浴びだぞ」

「あ、そっか」

「まあ読者サービスは重要だけどな」

「戦闘と銭湯をかけてるんですよ」

「知るか」

「でもこの華奢で魔法力主体の妖精が、逆に重厚な鎧を纏うってのどうですか」

「まあ、それは悪くない。しかしこの獣魔いきなり大変な目に会うんだな」

「人間より丈夫ですからね。でも爪っていう武器あるのに剣持たせてよかったでしょうか」

「キャラの個性が活きなくなってくるが、別に好みでいいと思うぞ。剣を手に入れるエピソード次第だな。この獣魔の登場シーンは考えてるのか?」

「あ、はい。順番バラバラですけどいいんですかね」

「当然だろ、最初にプロットを決めて、イメージしやすい所から作っていいんだ。後で繋ぎ合わせて、全体をブラッシュアップするんだよ」

「登場シーンはこんな感じにしようと思ってます」

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