帰宅 綾乃
「あと少しで祈りの丘だというのに!」
目的地はすぐ上に見えているのだが、間に立ちはだかるのは断崖絶壁。
「ここまでなのか?」
「大丈夫ですのー」
小さな魔法使い、フェリシアが杖を振うと、パーティーは祈りの丘にワープした。
「何もないじゃないか。本当にここか?」
丘に着いた勇者は呟いた。ここに魔王の居城があるはずだ。
「太陽系の惑星が一直線に揃わないと姿を現さないんですのー」
「それはいつだ?」
「八十年後ですのー」
「なにぃ、それじゃダメじゃないか!」
「心配無用ですの!」
フェリシアが杖をふるうと、夜空の星が、扇状に線を描いて回り始めた。
凄い風が吹き荒れ、みんなのスカートが捲くれ上がり、モリガンのふくよかな胸が零れ落ちて揺れる。
「一気に八十万年飛ばしますのー!」
「飛ばしすぎー」
うーん、と印刷を見返し溜め息を付く。
「そんなに悪いかな……」
と言いつつも、改めて見ると確かにそうかもしれない。
実際、少年には女友達もいない。だから欲望に走ってしまうのだろうか。
部屋で少し休んだ後に入浴の準備をして部屋を出ると、ちょうど綾乃が入浴を終えて部屋に戻る所だった。
バスタオル一枚の格好だ。
結えた髪から水滴が、ほんのりと湯気が立ち上る体に落ちる。
さすがに母親に見つかれば注意されるが、綾乃はこういう事には無頓着だ。
少年も姉の裸に興味を持った事はないので何事もないようにすれ違う。
だが今日は立ち止まって振り返り、
「そうか、分かったぞ。姉ちゃんは男ばっかりでむさい僕の人生に、少しでも潤いを持たせるために産まれて来たんだね」
「しまいにゃ殴るよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます