第89話 探せ 7
***
(これは、これは……)
アレクシは今、瀬口と共に新宿に来ていた。恵一の事故に関して長谷川に聞き取りをするためだ。
本来ならば、長谷川自身に神奈川の山手警察署まで来てもらうところだが、仕事から手が離せないらしい。高いオフィスビルの中にある彼の会社を訪ねると、立派な応接室へと通された。
アレクシ自身、日本の警察署と言う場所は好きでは無い。
瀬口もアレクシを連れて警察関係者に会いたく無いようなので、この場所は二人にとって丁度良かったのだが……
(どんな聖人君子かと思って会いに来てみれば、白は白だが、真っ黒だな)
事故に関する長谷川の話には嘘は無かった。
萌は彼が何かをしたのではないかと疑っている風だったが、その点では彼は白だ。
「石橋さんが急に金縛りになった様に硬直し、運転することが不可能になった。そのため、助手席からどうにか運転を補助しようとしたが、どう言うわけかアクセルが踏まれ、その後、またまたどういうわけか、ハンドルが左に回転した…と言うことですか?」
(そんないかにも「疑ってます」って顔で聞き返さなくても……)
面白くて横目で瀬口をうかがうと、眉間に深いシワが寄せながら長谷川の話を聞き返している。
このまま瀬口を放っておいても時間の無駄なので、アレクシはこれでお
「わかりました。では僕らはこれで失礼します。お時間割いていただいてありがとうございました」
さっさと、革張りのふかふかしたソファーから腰を上げる。唖然とした顔で瀬口がこちらを見上げた。
頭の中で、「お前、今の話信じたのか」と言っている。
アレクシは黙って頷いた。
(うん。信じたよ。だって僕はわかるからね)
小さなため息の後、「失礼します」と言って瀬口が席を立つ。
アレクシには今の頷き一つで瀬口が従ってくれることもわかっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます