Precognition

第73話 Precognition 1

日本で暮らしていて誰かにウインクを飛ばされることは、多分、そう無いと思う。

アメリカ留学していたときには少年から成人男子にまでパチパチされた恵一だったが、それももう数年前の話だ。

今ではすっかり免疫が落ちていた。


萌以外の人間と目線すら合わないことに既に慣れ始めた今、この全体的に白っぽい外国人の登場は、恵一にとって色んな意味で唐突だった。


「…『関係者』ってどういう意味?」

けんのある声で萌が尋ねる。


「わかるだろ?言い直すなら…そうだな。これから『関係者』になる予定?僕は役に立てるよ」


彼の言葉には「自分には恵一が視えているぞ」という含みがある。


(何者なんだ?一体…)


恵一が眉を寄せて青年を見上げると、灰色の瞳がこちらを向いた。


「ああ、ごめんね。モウシオクレました。僕はAlexis RUDELです。アレクシって呼んでね」


「何でここに?」


萌からまた、鋭い声が飛ぶ。

アレクシと名乗った青年は「僕が君の……」と言いかけてふと、言葉を切った。

何かに気づいたように、急に背後を振り返り、ツカツカとドアまで歩いて外に向かって叫ぶ。


Coucou〜おーい、セグチ!ここだよ!」

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